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大学数学基礎解説
文献あり

極限が関数の局所的な性質であることをちゃんと考えてみる

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微分積分学の勉強をしていると,いわゆる$\epsilon$-$\delta$論法を用いた極限の定義が出てきます。
関数$ f (x) $$ x \to a $での極限が$ \alpha $であることを,「任意の$ \epsilon > 0 $に対して,ある$ \delta > 0 $が存在して,$ 0 < \lvert x - a \rvert < \delta $を満たすようなすべての$ x $に対して$ \lvert f (x) - \alpha \rvert < \epsilon $が成り立つ。」という条件で定義するおなじみのあれです。
(この記事では,関数$ f (x) $$ \mathbb{R} $の部分集合で定義された実数値関数を考え,その定義域を$ D (f) $で表すことにします。)

極限の定義で前提となっているのは,関数$ f (x) $が“$ x = a $の周りで定義されている”ということです。
これは,「ある$ \delta_1 > 0 $が存在して,$ A = (a - \delta_1, a + \delta_1) \setminus \{ a \} \subset D (f) $が成り立つ。」という条件で表すことができます。
そこで,改めて,$ (f, \delta_1) $という組を考え,関数の“$ x = a $の周りでの様子”を見ていこうと思います。

いま,別の関数$ g (x) $が,これまた$ x = a $の周りで定義されているとします。
つまり,ある$ \delta_2 > 0 $が存在して,$ B = (a - \delta_2, a + \delta_2) \setminus \{ a \} \subset D (g) $が成り立つとします。
このとき,もし,$ A \cap B $$ f (x) = g (x) $なら,関数の“$ x = a $の周りでの様子”という意味で,$ (f, \delta_1) $$ (g, \delta_2) $とは同一視してよいでしょう。

関数の極限とは,正確には,この同値類に対して与えられるものだと考えたいところです。
それを踏まえて,以下の定義を述べておきます:

関数の極限

$ (f, \delta_1) $を上述の通りとし,$ \alpha \in \mathbb{R} $とする。
任意の$ \epsilon > 0 $に対して,ある$ \delta_1 > \delta > 0 $が存在して,$ 0 < \lvert x - a \rvert < \delta $を満たすようなすべての$ x $に対して$ \lvert f (x) - \alpha \rvert < \epsilon $が成り立つとき,関数$ f (x) $$ x \to a $での極限は$ \alpha $であるという。
この条件が成り立つか否かは,同値な$ (f, \delta_1) $の取り方に依らない。

参考文献

[1]
黒田成俊, 微分積分, 共立講座21世紀の数学, 共立出版, 2002
投稿日:20221126

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