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陰関数の極値とマクローリン展開

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はじめに

今回取り上げる問題は、陰関数とその関数の極値が与えられた時に、その極値が極大であるか極小であるかを判定する問題です。マクローリン展開も使う面白い問題なっているので、ぜひ考えてみてください。ちなみに、東京大学の編入問題の改題です。

問題

関数$y(x)$$x=1$を含むある区間で定義された連続関数で
$$y^3+3xy^2+x^3y=1$$
を満たし、$x=1$で極値をとる。このときこの極値が極大であるか極小であるかを判定せよ。

考え方

極値をとる$x=1$の周りでマクローリン展開をして、周辺の挙動を調べればよい。周辺がすべて$y(1)$よりも大きい(小さい)値であれば、$x=1$では極小(極大)であることがわかる。また、極値では1階微分は0になってしまうので、2次の項まで展開する必要がある。

解答

$y(1)$を求める

与式に$x=1$を代入し、$y_0 = y(1)$とすれば、
$$ y_0^3+3y_0^2+y_0 - 1 = 0 \tag{1} $$
が従う。また、与式の両辺を微分すると
$$ 3y^2y'+3y^2+6xyy'+3x^2y+x^3yy'=0 \tag{2} $$
であるため、これに$y'(1)=0$および$y(1)=y_0$$x=1$を代入すれば、
$$ 3y_0^2+3y_0=0 \tag{3} $$
(3)より$y_0=0,-1$が従うが、これを(1)に代入すると、$y_0 = 0$は不適であることが従う。よって、$y_0=-1$となる

$y''(1)$を求める

次に2階微分を求めるために(2)の両辺をさらに微分して、$x=1,y'(1)=0,y(1)=-1$を代入すると、$y_2 = y''(1)$
$$ 3y_2-6y_2-6+y_2=0 $$
となり、$y_2=-3$が従う。

マクローリン展開

以上の結論から$y(x)$を2次の項まで展開すると
$$ \begin{eqnarray} y(x)&=&y(1)+y'(1)(x-1)+\frac{1}{2}y''(1)(x-1)^2 \\ &=& -1-\frac{3}{2}(x-1)^2 \end{eqnarray} $$
よって、$x=1$における$y(x)$は極小値であることがわかる。周辺の値は2項目によって必ず$-1$より小さい。

ここで周辺の値と述べたが具体的には、3次以下の項が無視できる程度の周辺であることに注意せよ。実際$(x-1)^2$(2次)の項より$(x-1)^3$(3次)の項の方が$x$$1$に近づけた時に、より早く$0$に収束する。

おわりに

いかがでしたでしょうか。この判定方法は、増減表を使わない斬新のやり方ですね。このような柔軟な思想は応用問題では特に重要なので、編入する方はぜひ様々な種類の問題に触れて、新しい考え方を学んでみるといいと思います。

投稿日:20201030

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投稿者

高専生に向けて大学編入の記事を作成しています。難易度は高めです。編入以外の高専生向けの記事についても書こうとおもってます。

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