ベータ関数は相反公式B(s,1−s)=πsinπsを満たしますが、この等式を級数の観点から考えます。両辺を二乗するとB(s,1−s)2=π2sin2πs=∑n∈Z1(n+s)2となります。実は一般に
B(x,1−y)B(y,1−x)=∑n∈Z1(n+x)(n+y)
が成立するので、これを級数変形で示していきます。
さて、級数変形で示すと言ったので、ベータ関数も級数で書く必要があります。この記事ではベータ関数を以下で定義します。
Re(x),Re(y)>0においてB(x,y):=∑0≤m,n(1−x)m(1−y)n(m+n+1)!
積分による定義との整合性を確認しましょう。∫01tx−1(1−t)y−1dt=∫01(1−(1−t))x−1(1−t)y−1dt=∑0≤m,n(x−1m)(y−1n)(−1)m+n∫01(1−t)mtndt=∑0≤m,n(1−x)m(1−y)nm!n!m!n!(m+n+1)!=B(x,y)以降∫には退場してもらいます。定義から明らかにB(x,y)=B(y,x)です。また、B(x,y)は以下の一重級数表示を持ちます。
B(x,y)=∑0≤n(1−x)nn!(n+y)
∑0≤n(1−x)n(m+n+1)!=∑0≤n1m+x((1−x)n(m+n)!−(1−x)n+1(m+n+1)!)=1m!(m+x)より従う.
同様にして,Re(x)>0のときB(x,1)=1x,∑0≤n(−x)nn!=0が成り立ちます。
xB(x,1+y)=yB(y,1+x)
−xB(x,1+y)=∑0≤m,n−x(1−x)m(−y)n(m+n+1)!=∑0≤m,n(−x)m+1(−y)n(m+n+1)!=∑0<m,0≤n(−x)m(−y)n(m+n)!=∑0<m,n(−x)m(−y)n(m+n)!なので, 対称性より示された.
したがって、nを正整数としてB(x,n+1)=nxB(x+1,n)=n⋯1x⋯(x+n−1)B(x+n,1)=n!(x)n+1となります。これはn=0のときも成り立ちます。
C(m,n;s):=(s)m(1−s)nm!n!
明らかにC(m,n;s)=C(n,m;1−s)です。
Re(s)<1のとき∑0≤nC(m,n;s)m+n+1=1m+s
∑0≤nC(m,n;s)m+n+1=(s)mm!∑0≤n(1−s)nn!(n+m+1)=(s)mm!B(1−s,m+1)=(s)mm!m!(s)m+1=1s+m
これで目標の命題が示せます。
B(x,1−y)B(y,1−x)=B(x,1−y)B(1−x,y)=∑0≤m(1−x)mm!(m+1−y)∑0≤n(x)nn!(n+y)=∑0≤m,nC(m,n;1−x)(m+1−y)(n+y)=∑0≤m,nC(m,n;1−x)m+n+1(1m+1−y+1n+y)=∑0≤m1(m+1−x)(m+1−y)+∑0≤n1(n+x)(n+y)=∑n∈Z1(n+x)(n+y)
x,yに12,14,34などを入れると面白い級数が計算できたりしますね。以上です。