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大学数学基礎解説
文献あり

Keisler-Shelahの定理の応用――あるいは、牛刀割鶏

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こちらは, Mathematical Logic Advent Calendar 2022 の12日目の記事である.

本記事は,参考文献1の第16章を参考にしている.

次の定理はKeisler-Shelahの定理と呼ばれる.

Keisler-Shelahの定理

Lを一階の言語とする.
MNL構造とする.このとき次は同値である:

  • MN (すなわち,MNは初等同値である),
  • ある無限集合IとあるI上の非単項超フィルターUについて超冪MUNUは同型.

この記事では,Keisler-Shelahの定理という牛刀を使って,次の2羽の鶏を割く (2つの定理を証明する).

K,Lを体とする.m,nを自然数とする.このとき次は同値.

  1. 2つの行列環Mm(K)Mn(L)は初等同値である,
  2. m=nかつKL
Robinsonのjoint consistency theorem

L1L2を一階の言語とする.
T1T2をそれぞれ無矛盾なL1L2の理論とする.
L=L1L2とおく.
また,完全なL理論TT1T2があるとする.
このとき,T1T2は無矛盾である.

はじめの節で行列環に関する定理,次の節でRobinsonの定理の証明を行う.

行列環に関する定理の証明

K,Lを体とする.m,nを自然数とする.このとき次は同値.

  1. 2つの行列環Mm(K)Mn(L)は初等同値である,
  2. m=nかつKL

はじめに初等同値を同型にしたバージョンが正しいことを補題として示しておく.

K,Lを体とする.m,nを自然数とする.このとき次は同値.

  1. 2つの行列環Mm(K)Mn(L)は環として同型である,
  2. m=nかつKL
略証

(2)ならば(1)は明らかである.
(1)ならば(2)を示そう.
Kmは(同型を除いて)一意的なMm(K)単純加群であった.また,同型EndMm(K)KmKが存在した.

よってMm(K)Mn(L)からそれぞれ一意的な単純加群を取り出し,それにEndMm(K)()を取る操作を行ったものを考えると,KLを得る.

あとは次元の一意性を使えば,m=nも得ることができる.

次は簡単にわかるものである.

Rを環,nを自然数,Uをある集合I上の超フィルターとする.このときMn(R)UMn(RU)が成り立つ.

略証

Mn(R)Uの元[aij]U:1i,jnMn(RU)の元[aij:1i,jn]Uに送る写像を考えるとwell-definedかつ同型である.

これで最初に紹介した定理を示せる.

主張の再掲:

K,Lを体とする.m,nを自然数とする.このとき次は同値.

  1. 2つの行列環Mm(K)Mn(L)は初等同値である,
  2. m=nかつKL

同値変形を行っていく.

Mm(K)Mn(L)(U)(Mm(K)UMn(L)U) (by Keisler-Shelah)(U)(Mm(KU)Mn(LU)) (by 補題5)(U)(m=nKULU) (by 補題4)m=nKL (by Keisler-Shelah)
これで示せた.

Robinsonのjoint consistency theoremの証明

L1L2を一階の言語とする.
T1T2をそれぞれ無矛盾なL1L2の理論とする.
L=L1L2とおく.
また,完全なL理論TT1T2があるとする.
このとき,T1T2は無矛盾である.

T1のモデルM1T2のモデルM2をとる.
M1,M2それぞれのLへの制限をN1,N2と書く.
すると,N1N2はともにTのモデルである.
ところが,Tは完全だったので初等同値N1N2を得る.
よってKeisler-Shelahの定理より,ある超フィルターUを取れて,,N1UN2Uを得る.
f:N1UN2Uを同型写像とする,.

集合としてMiU=NiU (for i=1,2)なことに注意しておく.

N2UL構造であるが,これをL1Lの記号を適切に解釈したものをPとすれば,f:M1UPL1構造として同型となる (M1Uに入っている解釈を「押し出せ」ばよい).
このときPT1である.

L2Lの記号を適切に解釈することにより,Pをさらに延長してL構造Qにして,QT2も満たすようになる (M2Uによる記号の解釈を持ってくればよい).

こうしてT1T2のモデルであるL構造Qが得られた.

以上,牛刀割鶏でした.

牛刀 (Keisler--Shelahの定理)の証明はまたいつかどこかで行いたいです。

参考文献

[1]
Isaac Goldbring, Ultrafilters Throughout Mathematics , Graduate Studies in Mathematics, Amer Mathematical Society, 2022
投稿日:20221231
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