2

積分公式

90
0

dx1+x2n=πnsinπ2nの証明

関数f(z)=11+z2nについて

今回考える関数は、f(z)=11+z2nここでnnNとする。

z2n=1の解について

一般の形xp+q=0の解は次のような形で与えられる。xp+q=0の解は、 x=e1p{(2n1)πi+logq} (n=1,2,...,p)

xp+q=0xp=eπi+logqx=e1p{πi+logq}この時、|x|=|eπip||elogqp|=|elogqp|となる。ここで、代数学の基本定理よりからp次の代数方程式には、p個の解があるので偏角のみ変化させた場合も絶対値は変化しないことを利用して、次の様に解を仮定する。
x=e1p{(2n1)πi+logq} (n=1,2,3,...,p)この式が、解であるとはxp+q=0を満たすxのはずなので
xp=ep(1p{(2n1)πi+logq})=e(2n1)πi+logqが成り立つ。ここで、2n1は奇数であるから、xp=elogq=qxp+q=0が成立する。よって、今回求めるべき解は
x=e1p{(2n1)πi+logq} (n=1,2,...,p)

従って、今回求めるべきであるz2n+1=0は公式1から
z=eπkinπi2n(k=1,2,...,2n) である。

Cdz1+z2nの値

ここから、複素関数を用いて議論していく。まず、積分経路Cを次の様に取る。

積分経路 積分経路

コーシーの積分定理

区分的にC1級の有限個の単純閉曲線によって囲まれた(有界)平面領域Gの境界Gは(Gに関して)正の向きに向きづけられているとする。この時平面領域G¯上で正則なC1級関数fに対して次が成り立つ。
Gf(z)dz=0

複素線積分の定義 *1 とグリーンの定理 *2 を続けて用いると、Gf(z)dz=Gudxvdy+iGvdx+udy=G(vx+uy)dxdy+iG(uxvy)dxdyここで、コーシー・リーマンの関係式 *3 より0になる。

ここで、C1は実軸上にあり、Rは十分大きいとする。C2は半時計回りに0θπと取る。そうすると次のようになる。
Cf(z)dz=C1dz1+z2n+C2dz1+z2n積分経路C1は実軸上にあるのでさらに書き換えると、Cf(z)dz=RRdz1+z2n+C2dz1+z2nの様になる。

ここで、経路内の極はn個でありその値は、eπkinπi2n(k=1,2,...,n)となっている。

従って、留数定理を用いて値を求める。

留数定理

有限個の区分的にC1級の単純平曲線によって囲まれた領域Gの閉包G=GGの上で、有限この内点a1,a2,,aNを除いて正則な関数fについて次が成り立つ。

Gf(z)dz=2πin=1NResanf

参考文献[2]のp.305を参照されたい。

z=z0で極を持つ関数f(z)が正則でかつf(z)=p(z)q(z)で表せるとき、留数は
Res[f(z),z0]=p(z0)q(z0)で表せる。

z=z0においてf(z)=p(z)q(z)が極を持つと仮定する。この時、p(z0)=0であることからp(z)z=z0付近でテイラー展開すると、q(z)=q(z0)+q(z0)(zz0)+12q(z0)(zz0)2+...=(zz0){q(z0)+12q(z0)(zz0)+...}となる。
次に関数f(z)z=z0で一位の極を持つとき
Res[f(z),z0]=limzz0(zz0)f(z) が成り立つのでこれを用いて
Res[f(z),z0]=Res[p(z)q(z),z0]=limzz0(zz0)p(z)q(z)=limzz0p(z)q(z0)+12q(z0)(zz0)+...=p(z0)q(z0)

この公式1を用いて留数を求める。p(z)=1,q(z)=1+z2nとして考えると、留数は
Res[11+z2n,eπiknπi2n]=k=1n12n1eπiknπi2nとなる。ここで、|eπknπ2n|=1より
k=1n12n1eπiknπi2n=k=1n12neπiknπi2n=12neπi2nk=1neπiknと書ける。ここで、k=1neπiknは、初項eπikn公比eπiknの等比数列の和なので、k=1neπikn=eπin(1eπi)1eπin=2eπin1eπinこれより求める値は、12neπi2n(2eπin1eπin)=1n(eπi2n1eπin)分母,分子にeπi2nと、留数定理から2πiをかけてeπi2neπi2n2i=sin(π2n)の関係より 
πn(1eπi2neπi2n2i)=πnsin(π2n)以上より、Cdz1+z2n=πnsin(π2n)ここから、各積分経路ごとに値を見ていく。

積分0πiReiθ1+R2ne2niθdθの評価

まず全体でRとして考える。その時、経路C1は、C1dz1+z2n=limRRRdz1+z2n=dz1+z2nの様になる。次に、経路C2は、z=Reiθと変数変換を行うと
C2dz1+z2n=0πiReiθ1+R2ne2niθdθと書ける。従って、次の様に絶対値をとって評価する。
|0πiReiθ1+R2ne2niθdθ|<0π|iReiθR2ne2niθ|dθ=limRπR2n1=0となるので、dz1+z2n=πnsin(π2n)に収束すること分かる。

1z2n+a2ndz=πna2n1sinπ2nの証明

次に考える関数はf(z)=1z2n+a2nnN,|a|>0,aCとする。

z2n+a2n=0の解

公式1を用いると、z=e12n{(2k1)πi+2nloga}=eπi2n(2k1)+loga (k=1,2,...,2n)これを用いて、Cdzz2n+a2nを求める。

Cdxz2n+a2nの値

積分経路Cを図1の通りに取るとすると
Cdxz2n+a2nに対しx=e12n{(2k1)πi+2nloga}=eπi2n(2k1)+loga (k=1,2,...,n)が極である。

次に、Rは十分大きいとして考える。

そうすると、Cdzz2n+a2nは留数定理により求まる。この時留数は、Res[1z2n+a2n,eπi2n(2k1)+logq]=12nk=1n1e(πi2n(2k1)+logq)(2n1)=12nk=1n1(1)a2neπi2n(2k1)loga=12na2n1eπi2nk=1neπink=1na2n1(eπi2neπin1)である。ここで留数定理より値が求まるので、2πi{1na2n1(eπi2neπin1)}=πna2n1(2ieπi2neπi2n)=πa2n1nsin(π2n)の様になって結果

Cdzz2n+a2n=πa2n1nsin(π2n)...(1)

積分limR0πiReiθR2ne2niθ+a2ndθの評価

次に、積分経路はC=C1+C2であり、経路C1に関しては実軸上を動いているから

Cdzz2n+a2n=RRdxx2n+a2n+C2dzz2n+a2n...(2)

の様に書ける。この時、(R)として考えると、limRCdzz2n+a2n=dxx2n+a2n+limRC2dzz2n+a2n経路C2に関してz=Reiθの様に変数変換すると微小量は、dz=iReiθdθとなって、積分区間が0πであるので、limRC2dzz2n+a2nは次の様に変化する。
limRC2dzz2n+a2n=limR0πiReiθR2ne2niθ+a2ndθlimR0πiReiθR2ne2niθ+a2ndθの絶対値をとって評価すると、limR|0πiReiθR2ne2niθ+a2ndθ|<limR|0πiReiθR2ne2niθdθ|limR0π|iReiθ||R2ne2niθ|dθ=limRπR2n1=0よって、limRC2dzz2n+a2n=0従って、(1),(2)から
dxx2n+a2n=πa2n1nsin(π2n)に収束する。

xpx2n+a2ndx=apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)の証明

z=e12n{(2k1)πi+2nloga}=eπi2n(2k1)+loga (k=1,2,...,2n)

この結果を参考に今から議論をする。ここでpを次の2つの場合に分けて考えることができる。
x2nx2n+a2ndx (p=2n)xpx2n+a2ndx (p<2n) p=2nの時は下に示すように+に発散していくことがわかる。

x2nx2n+a2ndx=1a2nx2n+a2ndx=dxa2nx2n+a2ndx=

次に、p<2nの場合を取り扱うが、ここでも一点(p=2n1)で問題が発生するがその問題は後に任せるとして、p<2nの時の値を求めていく。

Czpz2n+a2ndzの値

まず、Cf(z)dz=Czpz2n+a2ndzに対し図1のような積分経路Cを取る。

この時Rの極限を考える。 そうすると、limRCzpz2n+a2ndz=limRRRxpx2n+a2ndx+limRC2zpz2n+a2ndzの様に書ける。次に、留数定理より以下の様に書ける。
Czpz2n+a2ndz=2πikRes[zpz2n+a2n,zk]ここで、積分経路C内におけるf(z)の極は、z=eπi2n(2k1)+loga (k=1,2,...,n)であるから、次のように書き換えられる。
Czpz2n+a2ndz=2πi{apeπi2n(p+1)2na2n1k=1nepknπi+πink}=2πi{apeπi2n(p+1)2na2n1k=1neknπ(p+1)}シグマの中身を初項e1nπ(p+1)公比e1nπ(p+1)として計算すると、2πi{apeπi2n(p+1)2na2n1k=1neknπ(p+1)}=2πi{apeπi2n(p+1)2na2n1(eπin(p+1)(1eπi(p+1))1eπin(p+1))}=2πi{ap2na2n1(eπi2n(p+1)(1eπi(p+1))1eπin(p+1))}=2πi{ap2na2n1((1eπi(p+1))eπi2n(p+1)eπi2n(p+1))}=2πi{ap2na2n1((1(1)(p+1))eπi2n(p+1)eπi2n(p+1))}ここで、(1)n=cos(πn)の関係を用いて式を変形すると、
2πi{apeπin(p+1)2na2n1((1(1)(p+1))eπi2n(p+1)eπin(p+1))}=apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)となる。従って
Czpz2n+a2ndz=apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)が成立する。次に、積分経路C2を評価する。

積分0πRpepiθR2ne2niθ+a2niReiθdθの評価

C2zpz2n+a2ndzに対し、z=Reiθと変数変換すると、C2zpz2n+a2ndz=0πRpepiθR2ne2niθ+a2niReiθdθの様になる。これから、この積分を評価していく。
|0πRpepiθR2ne2niθ+a2niReiθdθ|を評価する。ここで、t=eiθと変数変換すると |0πRpepiθR2ne2niθ+a2niReiθdθ|=|11RptpR2nt2n+a2nRdt|<|11R2n1t2n1R2nt2n+a2ndt|=11R2n1t2n1R2nt2n+a2ndt=[R2n22nlog(R2nt2n+a2n)]11=0このことから、 C2zpz2n+a2ndz=0であるので、結果
xpx2n+a2ndx=apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)となる。ここで、この式は、p=2n100の不定形になってしまう

xpx2n+a2ndxにおけるp=2n1の問題

この問題を次の様にとらえてみる。
limp2n1xpx2n+a2ndx=limp2n1apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)そして、左辺を次の様に変形する。
limp2n1xpx2n+a2ndx=limp2n10xpx2n+a2ndx+limp2n10xpx2n+a2ndxさらにx=1tと変数変換すると、 limp2n1xpx2n+a2ndx=limp2n101tp+11t2n+a2ndt+limp2n101tp+11t2n+a2ndt=limp2n101tp+11t2n+a2ndt+limp2n101tp+11t2n+a2ndt=limp2n10=0となって、0に収束する。次に右辺も
limp2n1apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)=0に収束することを示す。

まず、...αlimp2n1apπ{1+cos(pπ)}=limp2n12na2n1sin(p+12nπ)=0である。次に、2n2<p<2nの条件下では
...βddp2na2n1sin(p+12nπ)=ddpsin(πp2n+π2n)=π2ncos(πp2n+π2n)0となる。さらに、...γlimp2n1ddpapπ(1+cos(pπ))ddp2na2n1sin(p+12nπ)=limp2n1apπ2sin(pπ)a2n1πcos(πp2n+π2n)=0ここでα,β,γは、ロピタルの定理 *4 の要件を満たしているので、今回示したかった極限の結果と一致する。従って、
limp2n1xpx2n+a2ndx=limp2n1apπ(1+cos(pπ))2na2n1sin(p+12nπ)=0となる。

参考文献

[1]杉浦光夫 著『基礎数学2 解析入門I』 東京大学出版会

[2]杉浦光夫 著『基礎数学3 解析入門II』 東京大学出版会

[3]柴 雅和 著『複素関数論』 朝倉書店

[4]涌井貞美 著『道具としての複素関数』 日本実業出版社

[5]岡本和夫 著『新版数学シリーズ 新版微分積分』 実教出版

参照

      $$\int_{\partial G}f(x,y)dx+g(x,y)dy=\int\int_{G}\biggl(\frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y}\biggr)dxdy$$証明は、参考文献[2]のp.168を参照されたい。
    
投稿日:202318
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