2

2次形式と素数改訂版

202
0

動機

素数pを表現する整数係数正定値2次形式a2+nb2=p
整数解のabを求める公式を作りたい。
a2+b2a2+2b2の場合の公式を求めました。

準備

文字の約束
pを奇素数とします。
Fpを位数pの有限体とします。
Fp×を位数pの有限体の乗法群とします。
Fp2を位数p2の有限体とします。
Fp2×を位数p2の有限体の乗法群とします。
zFp2の元
x,yFpの元

トレースTr(z)とノルムN(z)の定義

トレースTr(z)とノルムN(z)およびFp線形写像t(z)を下記のように定義します。

Tr(z):=z+zp
N(z):=zp+1
t(z):=Tr(z)2

乗法群Fp2×の部分群GG

GFp2×の部分群で、
|G|を位数としたとき、|G|p+1を割りきるとします。
Fp2×は巡回群のため、Gは位数のみで決まります。

G=Fp×GGを定義します。

Gの性質

G|G|p1の最大公倍数に依存し、
次を満たします。
|G|G={1,1}
|G|G={1}

指標θ(x)

θ^:Fp×C×は非自明群準同型と定義します。

θを下記で定義します。
θ:FpC
x=0      θ(x):=0   
xFp×     θ(x):=θ^(x)   

更に次の性質を満たすと仮定します。
xG      θ(x)=1

関数α(z)

関数α(z)を下記で定義します。

α:Fp2×C
α(z):=gGG/Gθ(t(gz))

α(z)は、t(z)Fp線形性及び、θ(x)の仮定より、
G/Gの代表元によらず定まる。

準備では次の定理1を証明します。

|s|を複素数sの絶対値としたとき。
p=zFp×GFp2×/Fp×G|α(z)|2

関数α(z)

関数α(z)を下記で定義します。
α:Fp2×C
α(z):=gGθ(t(gz))

θ(x)の準同型性とt(z)Fp線形性より
xFp×なら
α(xz)=gGθ(t(gxz))=θ(x)α(z)

θ(x)の準同型性より、
θ(x)p1=1のため、
θ(x)1の冪根
sを複素数sの複素共役としたとき、
θ(x)1=θ(x)
|θ(x)|2=1となり。
|α(xz)|2=|θ(x)α(z)|2=|α(z)|2

θ(x)の仮定と補題2より
xGなら
α(xz)=gGθ(t(gxz))=α(z)
α(z)=|G|α(z)

α(z)の定義より
gG
α(gz)=α(z)

1

補題5より
α(z)zGFp2×/Gの代表元によらない。
また
補題3より
|α(z)|2zFp×Fp2×/Fp×の代表元によらない。
そのため、
|α(z)|2zFp×GFp2×/Fp×Gの代表元によらない。
Fp×Gの元の個数は、|Fp×||G||G|
zGFp2×/G|α(z)|2=|Fp×||G|zFp×GFp2×/(Fp×G)|α(z)|2=|Fp×||G|zFp×GFp2×/(Fp×G)|α(z)|2

2

zGFp2×/G|α(z)|2=zGFp2×/Gg,gG(θ(t(gz))θ(t(gz))=zFp2×gGθ(t(z))θ(t(gz)) 

zを基底(1,M)で表示すると、
ただしMFpで平方非剰余な元
z=x+yM
t(z)=x
以下θ(x)の定義より、
x=0の場合はθ(x)=0のため、
x0 とします。

(続き)
=xFp×yFpgGθ(x)θ(t(g(x+yM)))=xFp×yFpgGθ(t(g(1+yxM)))

yx倍しても和の順番が変わるのみ、
すると和がxに依存しないため。
(続き)
=|Fp×|yFpgGθ(t(g(1+yM)))

g=g1+g2Mと基底で分けると。
t(g(1+yM))=t(g)+gyMgpyM2=t(g)+(g1+g2Mg1+g2M)yM2=t(g)+yg2M=g1+yg2M

g2=0ならgG
g20 ならg1+yg2M=yyを変換しても、和の順番が変わるのみ

(続き)
=|Fp×|yFpgGθ(g)+|Fp×|yFpgGGθ(y)
1項はθ(g)G1のため|Fp×||Fp||G|

2項はθ(x)が非自明のため、0

(続き)
=|Fp×||Fp||G|

3

証明 (1) と証明 (2)を合わせて、
zGFp2×/G|α(z)|2=|Fp×||G|zFp×GFp2×/(Fp×G)|α(z)|2zGFp2×/G|α(z)|2=|Fp×||Fp||G|p=|Fp|=zFp×GFp2×/(Fp×G)|α(z)|2

以上で定理1は証明された。

計算方法

H:=p21|G|Hを定義する。
τFp2×の生成元
τHf=τHpfを満たす最小の正整数f
|G|p1の最小公倍数をlとしたとき、
L=p21l

Fp2×/(Fp×G){τn|0nL1}
α(τn)=0kf1θ(τHk+n+τp(Hk+n)2)
τk+τpkはリュカ数列の性質を満たす。

具体例

p=a2+b2

p4で割って1余る素数
G:={gFp2×|gp+1=1}
θ(x):=(xp)
(xp)はルジャンドル記号
FpG=G={±1}

p4で割って1余る素数のため、
θ(±1)=1
Fp×Gの元は生成元τを用いて、
τ2nとあらせる。
τ2p14+1=τp+12p1乗すると1なので、平方非剰余なFpの元をM用いて、τp+12=M

Fp2×/(Fp×G){1,τ}{1,τ2n+1}{1,M}

α(z)はルジャンドル記号の整数性より整数

p=α(1)2+α(M)2

p=z2+2y2

p8で割って3余る素数

G:={gFp2×|gp+14=1}
θ(x):=(xp)
(xp)はルジャンドル記号
FpG=G={1}
θ(1)=1

Fp×Gの元は生成元τを用いて、
τ4nとあらせる。
p=8q+3とすると。
τp214=τ4(4q2+3q)+2
τp218={τ4(2q2+3q2)+1    q0mod2τ4(2q2+3q12)+3    q1mod2

τ3p218={τ4(6q2+9q2)+3    q0mod2τ4(6q2+9q+12)+1    q1mod2

Fp2×/(Fp×G){1,τ,τ2,τ3}{1,τp214,τp218,τ3p218}
Gp=G,t(gpzp)=t(gz)より
α(zp)=α(z)
(τp214)p=τp214p=τp2143=τp214
(τap218)p=τ3ap218
α(τp214)=α((τp214)p)=α(τp214)=α(τp214)
α(τp214)=0
θ(1)=1を用いた。
α(τp218)=α((τp218)p)=α(τ3p218)

α(z)はルジャンドル記号の整数性より整数
p=α(1)2+α(τp214)2+α(τp218)2+α(τ3p218)2=α(1)2+2α(τp218)2

p=a2+2b2
p8で割って1余る素数
G:={gFp2×|gp+1=1}
TFpでの、1の原始4乗根の1つとする。
xp14にはTを用いて、
xp14=Tvとなる、vが存在する。
θ(x)=(1)vθ(x)を定義する。

FpG=G={±1}
p14は偶数のため、
θ(±1)=1

Fp2×/(Fp×G){1,M}
θ(M)=1となるようにMを選べる。
Mが平方非剰余でθ(M)=1なら
M3も平方非剰余でθ(M3)=1
MMMFp×G剰余類で同じ剰余類に入る。

α(z)はガウス整数

g=g1+g2M,gG,g1=t(g)ならば,gp+1=g12Mg22=1を変形すると、
(1g1)2M(1g2)2g12=1
(g1=0なら両辺の平方剰余、非剰余が異なるためg10)
j(g)=1g1+M(1g2g1)G
j(j(g))=gpよりj(g)は全単射
t(j(g))=1g1
t(g)1=t(j(g))

α(1)=gGθ(t(g))=gGθ(t(g)1)=gGθ(t(j(g)))=gGθ(t(g))=α(1)
α(1)は整数
α(1)も整数

g=g1+g2M,gG,

gp+1=g12Mg22=1
1+Mg22=g12

t(gM)=Mg2

任意のxFp×に対して、
1+Mx2は平方剰余か平方非剰余
(1が平方剰余、Mが平方非剰余なので、1+Mx2=0にはならいない。)

1+Mx2が平方剰余ならMx=t(gM)を満たすgG個あり。
1+Mx2=y2ならg=±y+xM
1+Mx2が平方非剰余なら1+Mx2=y2Mより
1+M1x2M2=y2x2となり、
1x=t(gM)gG個ある。
1+Mx2=y2Mならg=±yx+1xMM

xFp×
次で関数χ(x)を定義する。
χ(x)={1   1+Mx20   1+Mx2

1xMxに関して対合で不動点はない。

1=χ(x)+χ(1xM)   x0
α(M)=xFp×χ(x)2θ(Mx)=xFp×χ(x)2iθ(x)

α(M)=xFp×χ(1xM)2θ(1x)=xFp×χ(1xM)2θ(x)
(1.α(M)+α(M))=xFp×(χ(x)+χ(1xM))2θ(x)=2xFp×θ(x)=0
最後はθ(x)の非自明性より

これにより、α(M)11の整数倍
|α(M)|2=2d2
p=|α(1)|2+|α(M)|2=α(1)2+2d2
となる。

研究ノート

研究ノート1
p4で割って1余る素数かつNで割って1余る素数
p1Nは偶数とする。

G:={gFp2×|gp+1=1}
FpG=G={±1}

TNFpでの、1の原始N乗根の1つとする。
θ(x)xp1NTNを用いて、
xp1N=TNvとなる、vが存在する。
ζNCでの1の原始N乗根
θ(x)=ζNvθ(x)を定義する。

θ(1)=1
p1Nは偶数ゆえに、
θ(1)=1

3と同じ推論により、

α(1)=α(1)
α(1)は実数である。

θ(M)α(M)+α(M)=0

θ(M)=1なら
α(M)は純虚数である。
θ(M)1なら
α(M)1θ(M)の実数倍である。

研究ノート2
p4で割って3余り、Nで割って1余る素数
p1Nは偶数とする。
G:={gFp2×|gp+1=1}
FpG=G={±1}

θ(x)は研究ノート1と同じとします。

Fp×Gの元は、τ2nと表せる。
Fp2×/(Fp×G){1,τ}

Fp2の基底として(1,1)が取れます。
Gの定義式は、
g=g1+g21   gGなら
gp+1=1=g12+g22
x21が平方非剰余なら、
x=t(g)となる、gG2個ある。
g=x±g21

x21が平方剰余なら、
x0かつ
x21=y2なので、
1x21=y2x2
1x=t(g)となる、gG2個ある。
g=1x±yx1

x=±1なら、
x=t(g)となる、gG1個ある。
x=g

1xxに関して対合で不動点は±1
χ(x)={1   x210   x2112   x21=0

1=χ(x)+χ(1x)   x0
α(1)=xFp×χ(x)2θ(x)

α(1)=xFp×χ(1x)2θ(1x)=xFp×χ(1x)2θ(x)
α(1)+α(1)=xFp×(χ(x)+χ(1x))2θ(x)=2xFp×θ(x)=0
最後はθ(x)の非自明性より

α(1)は純虚数

p=4q+3
M=τp+1Mで定義する。
Mは平方非剰余
1=τp212=Mp12=Mp32M=M2qM

(gτ)p+1=τp+1=Mを満たす。
gτ=h1+h21としたとき、

h12+h22=Mかつh10
これを変形すると。
h12M=h22
M2h12M=Mh22h12=(h2Mqh1)2
このため、

j(gτ)=Mh1+h2Mqh11
j(j(gτ))=(gτ)p
のため、j(gτ)は全単射

α(τ)=gGθ(t(gτ))=gGθ(t(j(gτ)))=gGθ(Mt(gτ))=θ(M)gGθ(t(gτ))=θ(M)α(τ)
Mp1N=τp21N
なのでθ(M)=ζNl
lNと互いに素な整数である。

α(τ)1+θ(M)の実数倍
p=|α(1)|2+|α(τ)|2

投稿日:202321
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

kzaukzau
kzaukzau
24
4082

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 動機
  2. 準備
  3. 計算方法
  4. 具体例
  5. 研究ノート