リース-ソリンの補間定理 (Riesz-Thorin interpolation theorem) を紹介し,その応用を述べる.
Riesz-Thorin の補間定理
定義
まず, この記事における記号を定義しておこう. 基本的に,我々は測度空間,上の可測関数を考察する. ただし,単に関数と言えば全て複素数値とする.
可測関数とに対して とし, となることも許す.に対して, Hölder 共役な指数をとかく.である. 上の測度有限な単関数全体の集合をとかく.
すなわち,とする. 符号関数をに対して で定める.
動機
この小節では, Riesz-Thorin の補間定理を学ぶ上での動機付けを与える.
ならばだから,を満たすは存在する. (1) の場合.より,この2数は Hölder 共役である. 従って Hölder の不等式より
よってを得る. 特に,ならばなのでである.
次に, 任意のに対して, ,と分解すると より, だからである. (2)の場合. に注意.だから が成り立つ.
よってを得る. また,(1)と同様の分割によりも成り立つ.
上の有界線形写像と上の有界線形写像が上で一致すれば,はの線形写像と見なせる. に対して,だからはの線形写像でもある.
そのときが上で有界であるかを問うことは自然なことだろう.上の有界性を保証するのが補間定理である.
主張
可測関数に対し, がの truncation であるとは, 実数,を用いて と書けることとする.は上の可測関数全体のなす集合の線形部分空間とする.
さらに, ならばはの全ての truncation を含み,かつであるとする. は上で定義され,上の可測関数に値を取る線形写像とする.
Riesz-Thorin の補間定理
とする. ただし,ならばは有限と仮定する.に対し,と置く. 線形写像が をみたすとき
が成り立つ.
証明
証明のため, いくつかの補題を準備する.
, は -有限とする.は上の可測関数で, 任意のに対しであり,と置くととする.
そのときかつが成り立つ.
第1段 は有界な可測関数で, ある,が存在しての外側で, かつとする.
そのとき, が成り立つ. 実際,そのとき単関数列で,かつなるものが存在する., () よりに注意.よりとして良い.,よりルベーグの収束定理が使えてとなる.
従って
が成り立つ. 第2段 Hölder の不等式より
よって逆の不等式を示す.
(1) とする. は -有限だから,ある可測集合列で, ,,なるものが存在する.
単関数列で, (各点収束) ,なるものを取る.と置くとで(各点収束) , が成り立つ.
と置くと
よりは第1段の仮定を満たす (は単関数だから有界であることに注意)
.
およびより
従って
Fatou の補題より
以上によりの場合が示された. (2) とする.
任意にを取って固定する.と置く.として矛盾を導こう. 今,よりかつなるものが存在する.
そこで と置くと,, だから
これは明らかに矛盾.
よってだからかつである.は任意よりが分かった.
三線定理
とする.は上で有界かつ連続で, の内部で正則とする. さらに
ならば, 任意のに対して
が成り立つ.
の場合を示す.かつの場合を示せば十分である. 実際,ならば,十分小さいに対して定理を適用することで,はいくらでも小さくできる. の場合も同じである.
さらにを考えることにより,の場合を考えれば十分である
(に注意) .
よって,ならばを示せば良い.と置く. である. また,よりに関して一様に
が成り立つ. よって,あるが存在し任意のに対して
が成り立つ.
長方形の境界上ではである.は上で連続, の内部で正則だから, 絶対最大値の原理より
が成り立つ.
以上より任意のに対しが分かった.
後はとして求める結果を得る.
Riesz-Thorin の補間定理の証明
- の場合.
このときである.
よってに対しなので定理1より
(2) の場合.としても一般性を失わない. まず,の場合に
を示そう.の線形性より, の場合を示せば十分. さらに,補題3により, ,と, に対し
を示せば良い. まず とし,に対して
とする.
与えられたに対し, である.
また, である.
と定める. , である. ただし,つまりのときはと定める. これによって,以降議論を多少修正する場合があるが, 簡単なのでいちいち述べない. さらに
と定める. は上で有界かつ連続で, の内部で正則である.
三線定理を適用するため, ,を示そう. は互いに素だから,任意のは高々一つのに属す. ならば
よって. 同様にならば
よりである. さらに Hölder の不等式によって
全く同様に となる. 以上により,任意のに対してが分かった.
特に,と置くとを得る.
よって, 任意のに対してが示された.
これが, 一般のに対しても成り立つことを示そう.
任意にを取る. そのとき,で (各点収束) ,なるものが存在する. に対し, と定める. , はの
truncation だから, ,は単関数だからである.より,ルベーグの収束定理が使えてを得る., ,に注意すると よって, である.
ルベーグの収束定理により,だから よって,適当な部分列を取ればかつとできる.
従って 以上により, Fatou の補題から を得る. これで定理が証明された.
余談
Riesz-Thorin の補間定理は, ときに Riesz-Thorin の凸性定理 (convexity theorem) とよばれる. その理由を説明しよう. 任意のに対して
が成り立つとき,は型であるとよぼう. また,この不等式を満たすの下限をのノルムとよび,と書くことにする. 座標平面に,4点,,,を頂点とする閉正方形を書く.上の二点, を取り,線形作用素は型かつ型とする. そのとき,二点,を結ぶ線分上の任意の点を取ると,は型である.
1
が型であるような, の組を全て取り,点をプロットすれば, 凸集合をなす. さらに,と置くと
よりは凸関数である.
応用
, とする. Hölder の不等式より
また, 畳み込みに関するYoungの不等式から, , に対して
が成り立つ. このことから,より一般的に次の定理が成り立つ.
を一つ固定しておく. 作用素を, に対して
で定義すれば, Riesz-Thorin の補間定理から明らか.
フーリエ変換を, に対して
で定める. 明らかに が成り立つ. また, フーリエ変換は上の作用素に拡張可能で, Plancherel の定理 が成り立つ. このことから,, に対して fourier 変換が定義出来て,次が成り立つ.
証明は Riesz-Thorin の補間定理から明らか.