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大学数学基礎解説
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Riesz-Thorin の補間定理

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リース-ソリンの補間定理 (Riesz-Thorin interpolation theorem) を紹介し,その応用を述べる.

Riesz-Thorin の補間定理

定義

まず, この記事における記号を定義しておこう. 基本的に,我々は測度空間(X,M,μ)(Y,N,ν)上の可測関数を考察する. ただし,単に関数と言えば全て複素数値とする.

可測関数fp[1,]に対して fp={(X|f|p)1/p(p<)\esssup{|f(x)|xX}(p=) とし, fp=となることも許す.p[1,]に対して, Hölder 共役な指数をpとかく.1/p+1/p=1である. X上の測度有限な単関数全体の集合をΣXとかく.

すなわち,ΣX={f:XCf=j=1majχEjと書いたときμ(Ej)<}とする. 符号関数sgnzCに対して sgn(z)={z|z|z00z=0 で定める.

動機

この小節では, Riesz-Thorin の補間定理を学ぶ上での動機付けを与える.

Lpノルムの対数凸性

1p<r<qに対し,LpLqLrLp+Lqである. また,1r=1tp+tq なるt(0,1)を取ると
frfp1tfqt.

p<r<qならば1/q<1/r<1/pだから,1/r=(1t)/p+t/qを満たすt(0,1)は存在する. (1) p<の場合.(p(1t)r)1+(qtr)1=1より,この2数は Hölder 共役である. 従って Hölder の不等式より
|f|r=|f|(1t)r|f|tr(|f|p)(1t)r/p(|f|q)tr/q=fp(1t)rfqtrよってfrfp1tfqtを得る. 特に,fLpLqならばfLrなのでLpLqLrである.

次に, 任意のfLrに対してf=g+h, g=fχ{|f|>1}h=fχ{|f|1}と分解すると |g|p|g|r|f|p<|h|q|h|r|f|p<よりgLp, hLqだからLrLp+Lqである. (2)q=の場合. 1r=1tpに注意.|f|rfrp|f|pだから fr=(|f|r)1/r(|f|p)1/rf1p/r=fpp/rf1p/r=fp1tft が成り立つ.

よってLpLqLrを得る. また,(1)と同様の分割によりLrLp+Lqも成り立つ.

Lp上の有界線形写像TLq上の有界線形写像TLpLq上で一致すれば,TLp+Lqの線形写像と見なせる. p<r<qに対して,LrLp+LqだからTLrの線形写像でもある.

そのときTLr上で有界であるかを問うことは自然なことだろう.Lr上の有界性を保証するのが補間定理である.

主張

可測関数fに対し, gfの truncation であるとは, 実数r1r2を用いて g(x)=f(x)χ{r1<|f(x)|r2}と書けることとする.D(X,M,μ)上の可測関数全体のなす集合の線形部分空間とする.

さらに, fDならばDfの全ての truncation を含み,かつΣXDであるとする. TD上で定義され,(Y,N,ν)上の可測関数に値を取る線形写像とする.

Riesz-Thorin の補間定理

1p0,p1,q0,p1とする. ただし,q0=q1=ならばνσ有限と仮定する.0t1に対し,1pt=1tp0+tp1,1qt=1tq0+tq1と置く. 線形写像TTfq0M0fp0,fDLp0(X)Tfq1M1fp1,fDLp1(X)をみたすとき
TfqtM01tM1tfpt,fDLpt(X)が成り立つ.

証明

証明のため, いくつかの補題を準備する.

1p, μσ -有限とする.fX上の可測関数で, 任意のgΣXに対しfgL1であり,Mp(f):=sup{|fg|gΣX,gp=1}と置くとMp(f)<とする.

そのときfLpかつfp=Mp(f)が成り立つ.

第1段 gは有界な可測関数で, あるEMμ(E)<が存在してEの外側で0, かつgp=1とする.

そのとき, |fg|Mp(f)が成り立つ. 実際,そのとき単関数列{gn}で,|gn||g|かつgnga.e.なるものが存在する.gn(x)=0, (xEc) よりgnΣXに注意.gnpgpよりgnp>0として良い.|gn|gχEΣXχEfL1よりルベーグの収束定理が使えてfg=limfgnとなる.

従って
|fg|=lim|fgn|=limgnp|fgngnp|limgnpMp(f)=Mp(f)が成り立つ. 第2段 Hölder の不等式より
Mp(f)fpgp=fp よって逆の不等式を示す.
(1) 1p<とする. μσ -有限だから,ある可測集合列{Xn}Mで, μ(Xn)<XnXn+1X=n=1Xnなるものが存在する.

単関数列{φn}で, φnf (各点収束) ,|φn||f|なるものを取る.fn=φnχXnと置くとfnΣXfnf(各点収束) , |fn||f|が成り立つ.
gn=fnp1p|fn|p1sgnf と置くと
gnpp=fnp(1p)p|fn|(p1)p=fnppfnpp=1よりgnは第1段の仮定を満たす (fnは単関数だから有界であることに注意)
.
|fngn|=fnp(1p)|fn|p=fnp(1p)fnpp=fnpおよび|f|=sgnffより
fnp=|fngn||fgn|=fgn 従って
Fatou の補題より
fplim inffnp=lim inffgnMp(f)以上により1p<の場合が示された. (2) p=とする.

任意にε>0を取って固定する.E={x|f(x)|M(f)+ε}と置く.μ(E)>0として矛盾を導こう. 今,μ(E)>0よりFEかつ0<μ(F)<なるものが存在する.

そこで g=μ(F)1χFsgn(f) と置くと,gΣX, g1=1だから
M(f)|fg|=μ(F)1F|f|M(f)+εこれは明らかに矛盾.

よってμ(E)=0だからfLかつfM(f)+εである.εは任意よりfM(f)が分かった.

三線定理

S={zC0Rez1}とする.Φ(z)S上で有界かつ連続で, Sの内部で正則とする. さらに
supyR|Φ(iy)|M0supyR|Φ(1+iy)|M1ならば, 任意のx[0,1]に対して
supyR|Φ(x+iy)|M01xM1xが成り立つ.

0<x<1の場合を示す.M00かつM10の場合を示せば十分である. 実際,M0=0ならば,十分小さいM0=ε>0に対して定理を適用することで,|Φ(z)|はいくらでも小さくできる. M1=0の場合も同じである.

さらにΦ(z)/M01zM1zを考えることにより,M0=M1=1の場合を考えれば十分である
(|Mx+iy|=|MxeiylogM|=Mxに注意) .

よって|Φ(iy)|1|Φ(1+iy)|1ならば|Φ(z)|1を示せば良い.Φn(z)=Φ(z)e(z21)/nと置く. |Φn(iy)|1|Φn(1+iy)|1 である. また,|Φn(z)|=|Φ(x+iy)|ey2/ne(x21)/n|Φ(x+iy)|ey2/nよりx[0,1]に関して一様に
lim|y|Φn(x+iy)=0 が成り立つ. よって,あるy0>0が存在し任意のx[0,1]に対して
sup|y|y0|Φn(x+iy)|1 が成り立つ.

長方形R={x+iy0x1,y0yy0}の境界上では|Φn(z)|1である.ΦnR上で連続, Rの内部で正則だから, 絶対最大値の原理より
supzR|Φn(z)|=supzR|Φn(z)|1が成り立つ.

以上より任意のzSに対しΦn(z)1が分かった.

後はnとして求める結果を得る.

Riesz-Thorin の補間定理の証明
  1. p0=p1の場合.

このときp0=p1=ptである.

よってfLptに対しTfLq0Lq1なので定理1より
TfqtTfq01tTfq1tM01tM1tfp01tfp1t=M01tM1tfpt (2) p0p1の場合.1p0<p1としても一般性を失わない. まず,fΣXの場合に
TfqtM01tM1tfpt を示そう.Tの線形性より, fpt=1の場合を示せば十分. さらに,補題3により, fΣXfpt=1gΣY, gqt=1に対し
|(Tf)g|M01tM1tを示せば良い. まず f=j=1majχEj=j|aj|eiθjχEj(aj0,Ejは互いに素),g=k=1nbkχFk=k|bk|eiφjχFk(bk0,Fkは互いに素)とし,zS:={zC0Rez1}に対して
α(z)=1zp0+zp1,β(z)=1zq0+zq1 とする.

与えられたt[0,1]に対しα(t)=1/pt, β(t)=1/qtである.

また0<α(t)<1, 0β(t)1である.
fz=j|aj|α(z)/α(t)eiθjχEj,gz=k|bk|(1β(z))/(1β(t))eiφkχFjと定める. ft=f, gt=gである. ただしβ(t)=1,つまりq0=q1=1のときはgz=gと定める. これによって,以降議論を多少修正する場合があるが, 簡単なのでいちいち述べない. さらに
Φ(z)=(Tfz)gz=j,k|aj|α(z)/α(t)|bk|(1β(z))/(1β(t))ei(θj+φk)(TχEj)χFkと定める. ΦS上で有界かつ連続で, Sの内部で正則である.

三線定理を適用するため, |Φ(iy)|M0|Φ(1+iy)|M1を示そう. Ejは互いに素だから,任意のxXは高々一つのEjに属す. xEjならば
|fiy(x)|=||aj|α(iy)/α(t)eiθjχEj(x)|=||aj|(1iy)/p0α(t)+iy/p1α(t)|=|aj|1/p0α(t)=|aj|pt/p0=|f(x)|pt/p0よって|fiy|=|f|pt/p0. 同様にxFkならば
|giy(x)|=||bk|(1(1iy)/q0iy/q1)/(1β(t))|=|bk|(1q01)/(1qt1)=|bk|qt/q0=|g(x)|qt/q0より|giy|=|g|qt/q0である. さらに Hölder の不等式によって
|Φ(iy)|Tfiyq0giyq0M0fiyp0giyq0=M0fptpt/p0gqtqt/q0=M0.全く同様に |f1+iy(x)|=||aj|iy/p0α(t)+(1+iy)/p1α(t)|=|aj|1/p1α(t)=|f(x)|pt/p1|g1+iy(x)|=||bk|(1(iy)/q0(1+iy)/q1)/(1β(t))|=|bk|(1q11)/(1qt1)=|g(x)|qt/q1 |Φ(1+iy)|Tf1+iyq1g1+iyq1M1f1+iyp1g1+iyq1=M1fptpt/p1gqtqt/q1=M1となる. 以上により,任意のz=x+iySに対して|Φ(z)|M01xM1xが分かった.

特に,z=tと置くと|(Tf)g|M01tM1tを得る.

よって, 任意のfΣXに対してTfqtM01tM1tfptが示された.

これが, 一般のfDLptに対しても成り立つことを示そう.

任意にfDLptを取る. そのとき,{fn}ΣXfnf (各点収束) ,|fn||f|なるものが存在する. E={x|f(x)|>1}に対し,g=fχE,gn=fnχEh=fg,hn=fngn と定める. g, hf
truncation だからg,hD, gnhnは単関数だからgn,hnDである.|fnf|pt2pt|f|ptより,ルベーグの収束定理が使えてfnfinLptを得る.1p0ptp1, |g(x)|>1|h(x)|1に注意すると |g|p0|g|pt|f|pt<|f|p1|h|pt|f|pt<よってg,gnLp0, h,hnLp1である.

ルベーグの収束定理によりgnginLp0hnhinLp1だから TgnTgq0M0gngp00a.e.ThnThq1M1hnhp10a.e.よって,適当な部分列n(k)を取ればTgn(k)(x)Tg(x)a.e.かつThn(k)(x)Th(x)a.e.とできる.

従って Tfn(k)(x)=Tgn(k)(x)+Thn(k)(x)Tg(x)+Th(x)=Tf(x)a.e.以上により, Fatou の補題から Tfqtlim infTfn(k)qtlim infM01tM1tfn(k)ptM01tM1tfptを得る. これで定理が証明された.

余談

Riesz-Thorin の補間定理は, ときに Riesz-Thorin の凸性定理 (convexity theorem) とよばれる. その理由を説明しよう. 任意のfLpに対して
TfqMfp が成り立つとき,T(p,q)型であるとよぼう. また,この不等式を満たすMの下限をT(p,q)ノルムとよび,T(p,q)と書くことにする. 座標平面に,4点(0,0),(1,0),(0,1),(1,1)を頂点とする閉正方形Qを書く.Q上の二点(1/p0,1/q0), (1/p1,1/q1)を取り,線形作用素T(p0,q0)型かつ(p1,q1)型とする. そのとき,二点(1/p0,1/q0)(1/p1,1/q1)を結ぶ線分上の任意の点(1/pt,1/qt)を取ると,T(pt,qt)型である.

1 1

T(p,q)型であるようなp, qの組を全て取り,点(1/p,1/q)をプロットすれば, 凸集合をなす. さらに,φ(t)=logT(pt,qt)と置くと
φ(t)(1t)φ(0)+tφ(1)よりφは凸関数である.

応用

fLp, gLpとする. Hölder の不等式より
fg1fpgp また, 畳み込みに関するYoungの不等式から, fLp, gL1に対して
fgpfpg1 が成り立つ. このことから,より一般的に次の定理が成り立つ.

Young の不等式

1p,q,r1p+1q=1r+1をみたすとする.fLp, fLqに対しfgLrかつ
fgrfpgq が成り立つ.

fLpを一つ固定しておく. 作用素Tfを, gに対して
(Tfg)(x)=fg(x) で定義すれば, Riesz-Thorin の補間定理から明らか.

フーリエ変換Fを, fL1(Rn)に対して
Ff(ξ)=Rnf(x)e2πixξdxで定める. 明らかに Fff1が成り立つ. また, フーリエ変換はL2上の作用素に拡張可能で, Plancherel の定理 Ff2=f2 が成り立つ. このことから,fLp, 1p2に対して fourier 変換が定義出来て,次が成り立つ.

Hausdorff-Young の不等式

fLp1p2に対してFfLpであり,次の不等式が成り立つ. Ffpfp

証明は Riesz-Thorin の補間定理から明らか.

参考文献

[1]
Gerald B. Folland, Real Analysis Modern, Wiley
投稿日:202323
更新日:20241126
OptHub AI Competition

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