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現代数学解説
文献あり

AndrewsによるHeineの変換公式の類似

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次はHeineの変換公式の拡張になっている.

Andrews(1966)

正整数hに対して
0n(a;qh)n(qh;qh)n(b;q)hn(c;q)hntn=(b;q)(at;qh)(c;q)(t;qh)0n(c/b;q)n(t;qh)n(q;q)n(at;qh)nbn
が成り立つ.

q二項定理 より,
0n(a;qh)n(qh;qh)n(b;q)hn(c;q)hntn=(b;q)(c;q)0n(a;qh)n(qh;qh)n(cqhn;q)(bqhn;q)tn=(b;q)(c;q)0n(a;qh)n(qh;qh)ntn0m(c/b;q)m(q;q)mbmqhmn=(b;q)(c;q)0m(c/b;q)m(q;q)mbm0n(a;qh)n(qh;qh)n(tqhm)n=(b;q)(c;q)0m(c/b;q)m(q;q)mbm(atqhm;qh)(tqhm;qh)=(b;q)(at;qh)(c;q)(t;qh)0m(c/b;q)m(t;qh)m(q;q)m(at;qh)mbm
となって示すべき等式が得られる.

これを特殊化することによって, 様々な系を得ることができる. それらはAndrewsの1966年の論文に書かれているものである.

0n(b;q)2n(q2;q2)nt2n=(bt;q)(t;q)0n(b;q)n(q,bt;q)ntn

定理1において, h=2,a=c=0としてtt2とすると,
0n(b;q)2n(q2;q2)nt2n=(b;q)n(t2;q2)0n(t2;q2)n(q;q)nbn=(b;q)(t,t;q)0n(t,t;q)n(q;q)nbn
ここで, Heineの変換公式 より,
0n(t,t;q)n(q;q)nbn=(t,bt;q)(b;q)0n(b;q)n(q,bt;q)ntn
であるからこれを代入して定理を得る.

0n(t;q2)n(q;q)nbn=(btq;q2)(bq;q2)0n(t;q2)n(q2,btq;q2)nbn

定理1において, h=2,a=c=0として,
(b;q)(t;q2)0n(t;q2)n(q;q)nbn=0n(b;q)2n(q2;q2)ntn=0n(b,bq;q2)n(q2;q2)ntn
ここで, Heineの変換公式 より,
0n(b,bq;q2)n(q2;q2)ntn=(b,btq;q2)(t;q2)0n(t;q2)n(q2,btq;q2)nbn
であるからこれを代入して定理を得る.

0n(a;q)n(b;q2)n(q;q)n(abt;q2)ntn=(at,bt;q2)(t,abt;q2)0n(a,b;q2)n(q2,bt;q2)n(tq)n

定理1において, h=2として, b,tを入れ替えた後aat,catとすると,
0n(a;q)n(b;q2)n(q;q)n(abt;q2)ntn=(at;q)(b;q2)(t;q)(abt;q2)0n(at;q2)n(t;q)2n(q2;q2)n(at;q)2nbn=(at;q)(b;q2)(t;q)(abt;q2)0n(t,tq;q2)n(q2,atq;q2)nbn
ここで, Heineの変換公式 より,
0n(t,tq;q2)n(q2,atq;q2)nbn=(tq,bt;q2)(atq,b;q2)0n(a,b;q2)n(q2,bt;q2)n(tq)n
であるから, これを代入して定理を得る.

Andrews(1966)

0n(a;q2)n(b;q)n(q2;q2)n(c;q)ntn=(b;q)(at;q2)(c;q)(t;q2)0n(c/b;q)2n(t;q2)n(q;q)2n(at;q2)nb2n+(b;q)(atq;q2)(c;q)(tq;q2)0n(c/b;q)2n+1(tq;q2)n(q;q)2n+1(atq;q2)nb2n+1

q二項定理 より,
0n(a;q2)n(b;q)n(q2;q2)n(c;q)ntn=(b;q)(c;q)0n(a;q2)n(cqn;q)(q2;q2)n(bqn;q)tn=(b;q)(c;q)0n(a;qn)(q2;q2)ntn0m(c/b;q)m(q;q)mbmqmn=(b;q)(c;q)0n(a;q2)n(q2;q2)ntn(0m(c/b;q)2m(q;q)2mb2mq2mn+0m(c/b;q)2m+1(q;q)2m+1b2m+1q(2m+1)n)=(b;q)(c;q)0n(a;q2)n(q2;q2)ntn(0m(c/b;q)2m(q;q)2mb2mq2mn+0m(c/b;q)2m+1(q;q)2m+1b2m+1q(2m+1)n)=(b;q)(c;q)(0m(c/b;q)2m(q;q)2mb2m0n(a;q2)n(q2;q2)ntnq2mn+0m(c/b;q)2m+1(q;q)2m+1b2m+10n(a;q2)n(q2;q2)ntnq(2m+1)n)=(b;q)(c;q)(0m(c/b;q)2m(q;q)2mb2m(atq2m;q2)(tq2m;q2)+0m(c/b;q)2m+1(q;q)2m+1b2m+1(atq2m+1;q2)(tq2m+1;q2))=(b;q)(at;q2)(c;q)(t;q2)0m(c/b;q)2m(t;q2)m(q;q)2m(at;q2)mb2m+(b;q)(atq;q2)(c;q)(tq;q2)0m(c/b;q)2m+1(tq;q2)m(q;q)2m+1(atq;q2)mb2m+1
となって示される.

このように, Heineの変換公式を示す際のq二項定理を用いた変形を用いるだけで様々な結果が導かれるのは面白いかもしれない.

参考文献

[1]
G. E. Andrews, q-Identities of Auluck, Carlitz, and Rogers, Duke Math. J., 1966, 575-582
[2]
G. E. Andrews, B. C. Berndt, Ramanujan's Lost Notebook Part II, Springer, 2009
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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