ここでは東大数理の修士課程の院試の2015B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2015B01
素数をとる。ここでの部分群を二つの行列
で生成される群とする。ただしであり、は単位行列を指す。以下の問いに答えなさい。
- の共役類の個数を求めなさい。
- の複素線型既約表現の次元としてあり得る値を全て挙げ、それを実現するような既約表現の同型類の個数を求めなさい。
以下の解答は致命的な間違いは含んでいないと考えていますが、行列の説明が下手なせいで日本語が非常にわかりづらくなっています。ですので参考にされる際はその点に注意して、いつも以上に慎重に慎重を期して議論を追っていただくと幸いです。
- まず成分が全ての乗根であるような行列のなす群をとし、の生成する群をとおく。このときである。
まず内にあるの共役類について考える。の元のによる共役は成分を成分に移動させたものになっている。を満たすようなが存在するようなは定数行列しか存在しない。よって内にあるの共役類の個数は、定数行列のみからなる共役類個と、それ以外の元からなる共役類個の合計個である。
次に内にある共役類について考える。まずの元はでない成分の位置がの元のいずれかと同じで、その成分が全ての巾であるような行列からなる。ここでによる共役はの成分を下の行のでない成分に移した行列を定め、の元による共役はの各成分にを満たすようなを掛けた行列を定めるから、の共役類は、でない元の配置とその成分全ての積によって定められる。よって共役類の個数はである。
以上からの共役類の個数は個である。 - まず次元表現、つまり指標の個数を求める。まずは全ての元の位数がであることから、を生成する二つの元の像の取り方は通りあることと、どのような取り方をしても指標をwel-definedに定めることが従う。よっての複素線型次元表現が存在し、これを満たす同型類は個ある。
次にそれ以外の表現を考える。まずの複素線型既約表現の同型類の個数はの共役類の個数に等しい。よっての次元の複素線型既約表現の同型類は(1)と上の議論から個ある。これらの表現の次元をとする。このとき
であることと有限群の複素線型既約表現の次元は有限群の位数を割り切ることから、全てのについてが従う。
以上をまとめると、である。