記事をご覧になってくださった皆様、はじめまして。Wathematicaの瀬川という者です。早稲田大学基幹理工学部数学科に在籍しており、今年1年間はWathematicaに入会して一般位相空間論を中心に数学の勉強をしてきました。本記事は、Wathematicaの2024年度Advent Calender(
https://wathematica-adv-2024.vercel.app/
) に寄稿するもので、一般位相空間論の話題から、コンパクト化に就いて気儘に書き綴ってみたいと思います。尚、本稿では-分離公理を常に仮定します。
コンパクト化
コンパクト空間の重要性は周知のことと思います。従って、位相空間はコンパクトであると嬉しいですよね。そこで、与えられた位相空間を色々いじくってコンパクトにする、コンパクト化と呼ばれる手法があります。
例えば、複素平面は非常に良い位相的性質を持ちますがコンパクトではないです。そこで、後述するように、無限遠点と呼ばれる点を形式的に付け加えていい感じの位相を入れた1点コンパクト化を考えるんですが、実はこれはコンパクトになることが知られています。これをRiemann球面と呼びます。(一般にの1点コンパクト化はに同相になります。立体射影を具体的に同相写像として構成すればよいです。)
コンパクト化
位相空間に対して、コンパクト空間がのコンパクト化であるとは、埋め込みが存在して、(となり、)が内稠密である事である。
今回はこのようなコンパクト化に就いていろいろ考えていきます。
1点コンパクト化の構成
先ずは1点コンパクト化に就いて議論しましょう。アイデアとしては、上で述べたように位相空間に無限遠点を形式的に一つ付け加えることに依り、新しく良い感じの位相を入れてコンパクト空間を構成するといった感じです。
Alexandorffの1点コンパクト化
を非コンパクト位相空間、をその開集合系とする。に含まれない元を取り、と置く。この時、上の開集合系を、で定めるとはコンパクト位相空間になる。
開集合系の3公理を満たしている事とがの部分空間になっている事は容易に確認出来るので、実際にコンパクト化であることを見ておきましょう。
がコンパクトであることを示す。をの任意の開被覆とする。で、の場合はの開集合で、の場合はコンパクトであるとする。はの被覆なので或るに対してとなる。従ってである。このに対してはコンパクトで、特に仮定よりとなるので、有限個のが存在してとなり、これは与えられた開被覆の有限部分被覆である。従ってはコンパクトである。
最後に稠密である事を示す。の任意の開近傍を取ったときにはコンパクトであるが、はコンパクトでないのでである。従ってとなるのでは内稠密。
こうして構成出来たが-分離公理を満たす為の必要十分条件を見ておきましょう。
位相空間の1点コンパクト化がコンパクト化である為の必要十分条件は、が局所コンパクト且つ-分離公理を満足するであることである。
(必要性)
が-分離公理を満たすとする。この時、任意のに対してとなる開集合が存在する。この時はの位相の入れ方よりコンパクトであり、の近傍なのでは局所コンパクトである。
(十分性)
が局所コンパクト且つ-分離公理を満たすとする。相異なる2点を任意に取る。
の場合、となる開集合が存在するが、の位相の入れ方からこれはに於ける開集合でもある。
の場合、の局所コンパクト性から、に於けるの開近傍及びのコンパクト集合が存在し、となる。この時はの開近傍であり、を満たす。これらはに於ける開集合である。
従ってはの-コンパクト化である。
Stone–Čechコンパクト化の構成
完全正則空間の特徴づけ
まずは完全正則空間のコンパクト化を用いた特徴づけを与えましょう。非常に面白い命題です。
完全正則空間
位相空間が完全正則(completely regular)である或いは-分離公理を満たすとは、任意の及びを含まない閉集合に対して、且つを満たす連続函数が存在することである。
パッと見で分かるようにUrysohnに似ていますね。というかで成り立つんだったらとかでも成り立つんじゃね?っていう気持ちで当時研究を進めてみたらだけどじゃない空間が登場してきたのでこういう分離公理を考えたんだと思います。(反例にはTychonoff's corkskrewと呼ばれるものがあります。1とかを見てください。)後述するように初期のTychonoffは位相空間の立方体への埋め込みを研究していたようで、(の直積空間のこと。)そこからかの有名なTychonoffの定理も出てきたようです。
さて、完全正則空間は以下に述べるように実はコンパクト化と非常に密接な関係があります。唐突ですがそのために必要な補題を一つ述べておきます。
埋蔵補題
位相空間の族の直積空間をとする。この時、-空間からへの連続写像が存在し、任意のとを含まない閉集合に対してを満たすとき、は埋蔵である。但し、である。
証明は2を参照して下さい。この補題は結構便利です!
完全正則空間の特徴付け
位相空間が完全正則である為の必要十分条件は、がコンパクト化を持つ事である。
(必要性)
をの位相濃度とせよ。即ち、である。この時、はの或る部分空間に同相であることを示そう。
今、を満たす開基が存在する。の開基の要素の組であって、を満たすものの全体をとする。各に対して条件を満たす連続写像をとする。
とを含まない閉集合をそれぞれ任意に取る。この時或るが存在して、となる。今、が完全正則であることより、を満たす連続写像が存在する。はの開近傍なので、或るが存在してとなる。この時なので且つを満たす。従ってを満たすので、補題1から埋蔵写像が存在する。又なので埋蔵写像を構成できる。以上より、埋蔵が構成出来た。
さて、Tychonoffの定理よりはコンパクトであり、-分離公理を満たす空間の直積空間も積位相で-分離公理を満足するので、埋蔵写像に依る像の閉包はコンパクト空間になる。これが所望のコンパクト化である。
(十分性)
が且つコンパクトならば正規であり、特に完全正則である。又、に対してはの閉集合である。今はの部分空間と見做せるので完全正則である。従ってUrysohnの補題より完全正則であることが分かる。
従って、前節に述べたことから次が成り立ちます。
が局所コンパクトHausdorffならば、の1点コンパクト化はなので定理1より従う。
後、定理3の副産物としては、-分離公理は部分空間に必ずしも受け継がれるわけではないことが簡単に分かります。例えばSorgenfrey平面は完全正則なのでに埋蔵出来ます。しかし、正規空間に対してその部分空間であるは正規空間ではないです。(が正規であることはコンパクト且つであるからですね。)これもTychonoffの板と同じくだがでない空間の例です。
Stone–Čechコンパクト化
では実際に完全正則空間のStone–Čechコンパクト化を構成します。のStone–Čechコンパクト化は、めちゃくちゃ大きくて、上の有界連続函数を全体に連続的に有界性を保って拡張できるという性質で特徴づけることができます。(このような性質をジェネトポの文脈だと拡張的であると言ったりします。)ここで、必要な補題を一つ述べておきます。
位相空間とその稠密な部分集合に対して、以下の4条件は同値。
(1)の任意の交わらないゼロ集合に対して
(2)任意のコンパクト-空間に対して、任意のは或るへ拡張される
(3)任意のは或るへ拡張される
(4)は内に於いて拡張性を持つ
これも証明は2を参照してください。Tietzeの拡張定理の証明から出てきます。
Stone–Čechコンパクト化の存在
完全正則空間に対し、のコンパクト化であって、が内で拡張性を持つものが存在する。
としておく。の完全正則性から、任意のとを含まない閉集合に対し、となるが存在する。従って補題2より対角写像は埋蔵である。と置くと、はコンパクト-空間の閉部分集合なので、の-コンパクト化である。
が拡張的であることを示す。を任意に取ると、或るが存在してである。この時であるからと置くと、とを同一視した上でが成り立つ。従ってはへ拡張されるので、補題5よりは内拡張性を持つ。
Stone–Čechコンパクト化
をのStone–Čechコンパクト化(Stone–Čech compactification)と呼ぶ。
Stone–Čechコンパクト化がコンパクト化のうち、包含関係で最大元であることを示しましょう。
を完全正則空間とする。のコンパクト化と任意のに対してを満たす連続写像が一意に存在する。が全射ならばも全射であるようにとれる。
埋蔵を考えてであるとして良い。はコンパクトなのでStone–Čechコンパクト化の定義より、はに拡張される。(補題2を用いた。)又、は-分離公理を満たすので、このような拡張は一意的である。
後半の主張を示そう。が全射ならばであり、はコンパクト空間の連続像なのでコンパクト。従っては-空間に於ける閉集合である。は内稠密なので、従ってとなるのでも全射。
定理7を恒等写像に用いればStone-Čechコンパクト化の一意性が分かります。
完全正則空間が2つのStone-Čechコンパクト化を持ったとする。この時同相写像であってを満たすものが存在する。
以上の議論を踏まえると、完全正則空間のコンパクト化の全体をとする時、に対してとなる連続写像が存在する時、と定義するとは順序を定め、を且つであると定義すれば、商集合にも自然に順序が入り、その最大元がになります。若しが局所コンパクトなのであればが最小元になります。(となる元がどういった挙動をするのか全く知らないので、詳しい方がいれば教えていただきたいです。後は、個人的にはとなる空間のクラスが決定されているのかも気になります。例えばTychonoffの板とか長い直線は1点コンパクト化とStone--Čechコンパクト化が一致します。)
Stone-Čechコンパクト化がこんな感じで良い普遍性を満たしている理由としては、圏論的な意味合いがあります。をコンパクト-空間の圏とする時、忘却函手の左随伴がStone-Čechコンパクト化になります。これの余単位が、各位相空間からへの埋め込みになります。(左随伴が存在することを示すには一般随伴函手定理というものを使います。適当な圏論の教科書を見てください。)
Stone-Čechコンパクト化の具体例などは1とか2を参照して下さい。濃度がとかになったりして、物凄く大きくなってて凄いです。
ちょっと休憩
ここらへんで皆さん疲れてきたと思うのでちょっと宣伝させてください。Wathematicaの2024年度のAdvent Calenderなんですが見てもらえば分かるように1年生もたくさん記事を書いてくれていて、しかもみんなクオリティが高いです。(自分の記事なんて彼らのものとは比べられないくらい拙い出来です、、、)
その中でもとりわけオススメの記事が、12月6日の生ポテト君(@rowpotato)の記事です。彼もジェネトポの記事を書いていて、所謂BNSの距離化可能定理に就いて証明しています。(リンクはこちら→
https://note.com/namapotato_3157/n/nf3215d2302b2
)彼とは普段よく一緒にゼミをするのですが、一般位相空間論をはじめとして数学に対する造詣が恐ろしく深く、後輩と思えないくらいの実力者です。(いつもありがとうね。)自分が紹介するのは恐れ多いのですが、併せて読むととても面白いと思うので、皆さんも位相空間と戯れながらクリスマスを迎えましょう!!
Wallman型コンパクト化の構成
さて、ここまではStone-Čechコンパクト化を有界連続函数に依る特徴づけからの直積に埋め込むことで構成しましたが、実はフィルターを用いた別の構成法があります。取り敢えずフィルターの定義から見ていきましょう。
フィルター
を空でない集合とする。部分集合族がフィルター(より正確には、真のフィルター)であるとは、以下の3条件を満たすこととする。
(1)
(2)
(3)
例えば位相空間に於いて近傍系はフィルターを成します。(コンパクト性はフィルターを用いて特徴づけることができたり、フィルターは位相空間論では非常に有用な概念なんですがここでは深くは触れません。)後はBoole代数とかでイデアルの双対概念になっていたりします。(一般に半順序集合上で定義できる概念です。)
極大フィルター
フィルターが極大フィルターであるとは、なるフィルターが存在しないことである。
極大フィルターは確かに存在します。これはZorn(Tukey)の補題より明らかにわかります。(或るフィルターより細かいフィルターの全体が帰納的順序集合になる事を示す。)
正規基底
位相空間の部分集合族が正規基底であるとは、以下の条件を満たすことである。
(1)
(2)はの閉基を成す。
(3)
(4)任意のと任意のに対して、或るが存在して且つを満たす。
(5)がを満たすならば、或るが存在して且つ且つを満たす。
以下、は完全正則であるとし、をその正規基底、上のフィルターであって極大なもの全体の集合をと記すことにします。このが今回我々が扱いたいWallman型コンパクト化というものです。じゃあ位相はどうやって入れるんだ?っていうのが問題になるんですが、次のようにします。
を開集合とするとき、と置き、の生成する位相をに入れます。この時がのコンパクト化になっていることを確かめましょう。
各に対してとする。は上の極大フィルターになるのでである。このとき写像がコンパクト化を与えることを示す。
に対して、ならばだからであり、ならば正規基底の定義からに対してそれと交わらないが存在するのでである。従ってが成り立つ。従ってはの部分空間と見做すことができて、特には内稠密であることが分かった。
次にが-分離公理を満たすことを確認する。相異なる2点を取る。この時、或るに対してである。が正規基底であることより、が存在して且つとなる。この時且つとなり、であるから-分離公理を満足する。
最後にのコンパクト性を示す。その為に、の有限交叉的な閉集合族を任意に取る。この時、と置くと、これは有限交叉性を持つ。実際、なるを取り、を任意に取ると、或いはとなるので、の極大性からであるので、となり有限交差的である。従って、を含む極大フィルターが取れて、この時となる任意のに対してであるから即ちなのでは有限交叉性を持つ。従ってはコンパクトである。
以上より、はの-コンパクト化であることが示された。
以上の証明では、コンパクト性の特徴づけの一つである、「任意の有限交叉的な閉集合族の共通部分は空でない」を用いました。
Wallman型コンパクト化
完全正則空間に対してをWallman型コンパクト化という。
最後にStone–Čechコンパクト化がWallman型コンパクト化であることを見て終わりにします。ここで、とは、或る連続写像が存在して、となることとします。
完全正則空間に対してはWallman型コンパクト化である。
をに於ける全てのゼロ集合の族とするとき、は正規基底になる。から構成されるWallmanコンパクト化が最大コンパクト化であることを示せば良い。
とすると、が存在してを満たす。この時正規基底の定義より
即ちとなる。
この時となる事を示す。定理7の議論から、の連続拡張であってを満たすものが存在する。特には全射である。今、が単射であることを示せば良い。そうすれば、はコンパクト空間から-空間への連続な全単射となり同相写像になるからである。
が単射でないと仮定して矛盾を導く。この時、相異なる点でとなるものが存在する。は完全正則なので、を且つとなるように取れる。ここで
と置くと、であるから、上の議論からとなる。のに於ける開近傍を任意に取る。の連続性からはのに於ける開近傍であり、特になので或るが存在してとなる。ここにの連続性を用いた。これよりなのでである。即ちとなる。全く同様にしてが言えるが、これはに矛盾する。
以上から、Stone–Čechコンパクト化はWallman型コンパクト化であることが分かった。
おわりに
ここまで読んでくださりありがとうございました!Mathlogでの処女作ともなりましたが、今後も位相空間論の記事を書いていければと思います。Wathematicaアドベントカレンダー、まだまだ続きますのでほかの方の記事も是非ご覧くださいね!