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東大数理院試過去問解答例(2022B01)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2022B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2022B01

n次対称群Sn及びn×n複素行列の為す複素線型空間Mn(C)を考える。ここで作用SnMn(C)Ai,jσ:=Aσ(i),σ(j)のよって定める。ここでSnの部分群Gについて
dn(G):=dim{AMn(C)|Aσ=A}
とおく。
(1) n2に対してdn(Sn)を求めなさい。
(2) n次交代群Anを考える。n2に対してdn(An)を求めなさい。
(3) 部分群Gを作用G{1,,n}が推移的になるようにとるとき、dn(G)の最大値をTnとおく。n2に対してTnを求めなさい。

  1. V:={AMn(C)|Aσ=A}とおく。任意のij及びkについて、Ai,jσ=Ak,なるσを取ることができるから、Vの任意の元について、対角成分以外の成分は全て等しい。また同様の議論でVの任意の元について、対角成分は全て等しい。逆にこれらの条件が満たされていればSnの作用で不変であるから、V
    (0111101111011110)
    及び1nで生成される2次元空間である。よってdn(Sn)=2
  2. 任意の相異なるi,j,k,について、偶置換σ=(i,k)(j,)によってAk,σ=Aijが成り立っている。またn4のとき、相異なるi,j,について、偶置換σ=(j,s,)によってAi,σ=Ai,j及びA,iσ=Aj,iが成り立っている(ここでsi,j,kのいずれとも異なる整数)。またn4のとき、任意の相異なるi,jについて、偶置換σ=(i,j)(s,t)によってAi,jσ=Aj,iが成り立っている。また任意の相異なるi,j,kについて、偶置換σ=(j,i,k)によってAi,jσ=Ak,iが成り立っている。またn3のときAn{1,,n}は推移的である。以上からn4のときdn(An)=2である。
    次にn=3のとき、A3={1,(1,2,3),(1,3,2)}であるから
    {AMn(C)|Aσ=A}={(abccabbca)|a,b,cC}
    であるからd3(A3)=3である。
    次にn=2のときA2={1}であるからd2(A2)=4である。以上をまとめると
    dn(An)={2(n4)3(n=3)4(n=2)
    である。
  3. まずGは推移的に作用しているから、任意のi,jについて{aσ(i),σ(j)|σG}は少なくともn個の元から成る。よって{AMn(C)|Aσ=A}は高々n2n=n次元である。そしてこれはG=(1,2,,n)としたときに実現される。よってTn=n
投稿日:20231022
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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