先日友達と「院試合宿」(とは名ばかりのただの旅行)に行ってきました.真面目にやるぞ!とのことで本をたくさん持って行ったんですが結局現地についてからあまり数学はできませんでした.院試対策を本腰入れるぞ!というはずの合宿の思い出は登山と寝るときに見た20世紀少年と移動中のマリオカート,そして移動中にもらったtake freeのローカルCDでした.事前にやることを決めてから院試対策の合宿を組むべきでしたね.
そこで杉浦解析Iをネタ本に広義積分のショートレクチャー(広義積分の講義)を打ったのですが,そこで「こんなに解説してくれてるけど俺は数学教育系だからこんなに真面目にやんなくてもいいんだけどね」とかうるさく言っていた合宿主催者のA君から質問が来ました.命題5.2に関連してリプシッツ連続とか一様連続とかを話していたら
「一様連続だけどリプシッツ連続でない関数の例って何ですか?」
と言われました.それまで得意げに話していた僕はまあすぐわかるだろうと思い例をあげようとしたら・・・できなかった.
そのあと積分計算や多項式関数のオーダーで積分の収束を判定するところなどボロボロミスを連発.一度やらかすと続けてミスしてしまうものですね.ミカドでの修行が足りないのかもしれません.
ということで今回はその合宿のリベンジとして,リプシッツ連続だが一様連続でない例を紹介します.
そしてそれを通してリプシッツ連続,一様連続な関数とはどんなものなのかという「お気持ち」をわかろうと思います.
目標:一様連続だがリプシッツ連続でない関数の例を見る
それを通してリプシッツ連続,一様連続の「お気持ち」を理解する
以下余談.
皆さんはリプシッツ連続をいつ知りましたか?この記事がはじめて,という人も中にはいるかもしれませんが,それはそれほどヤバいことでもないと思います.連続,一様連続よりも過酷な=厳しい条件が課された連続性が必修の授業とかで出るのは稀だと思うからです.
僕が「リプシッツ連続」という言葉をはじめて見たのは大学2年生の時でした.Yahoo知恵袋にて大学数学の回答をするのにはまっていた時に「リプシッツ連続について教えてください」のような質問を見たのが一番最初だと思います.その後わんこらチャンネルで紹介されていた
高野先生の常微分方程式の本
の第一章でまたリプシッツ条件という形で再会しました.3年生になってからも
坪井多様体
を元にした多様体の授業でまた遭遇しましたがそのときはもう顔なじみといった間柄になっていたと思います.一様連続じゃない例パッと出なかったけどね!
今日の記事を通して僕自身もより一層リプシッツ連続性と仲良くなれたらいいなと思います.
また今日からMathlogの書き方を変えてみようと思います.
今までは長ーい記事を頑張って書いて投稿!としていましたが,それだと内容の厳密性が伴わない危険があることに気づきました.中には逐一ご指摘して頂いている方(アライグマさん.先ほど見たらultralimitについての記事を書いていました.興味深い)も大変ありがたいことにいらっしゃるのですが,間違いが多すぎて申し訳ない気持ちになるし,それでMathlogへの投稿が億劫になるしでよろしくない心境でした.とりあえず投稿したいのなら小切れでもいいからとりあえず投稿してみよう!数学的に厳密にしたい箇所があるならその後に続きを書くことでうまくやってみよう!と思ったのです.僕はMathlogを数学の記事投稿以前にブログだと思っているたちなので基本的にゆるくいきたいなあと思ったのです(数学的厳密性はそれはそれとして当然詰めるけども).
ということで今回の記事は「その1」です.「その2」以降が数学としては本題です.
$A\subset\mathbb{R}^n,f:A\to\mathbb{R}^m$
$f$が一様連続
$\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}\forall\varepsilon>0,\exists\delta>0\;s.t.\;\forall x,y\in A,\;|x-y|<\delta\Longrightarrow|f(x)-f(y)|<\varepsilon$
・上記に対し関数$f$が連続であることの定義は
$\forall a\in A,\forall\varepsilon>0,\exists\delta>0\;s.t.\;\forall x\in A,|x-a|<\delta\Longrightarrow|f(a)-f(x)|<\varepsilon$
でした.$\varepsilon$と$\delta$が$A$の点(はじめに取った$a$)に依存していますね.
それに対し一様連続では$\varepsilon$と$\delta$が$A$の点に依存していません.「はじめに$\varepsilon$と$\delta$ありき」です.
このことから一様連続な関数は連続であることがわかります.一様連続性の方が連続性よりもきつい条件です.
・一様連続性でよく知られた定理に「ハイネの定理」があります:
$A\subset\mathbb{R}^n\;\text{cpct},f:A\to\mathbb{R}^m\;$連続
$\Longrightarrow\;f$は($A$上)一様連続
☆上記の「一様連続$\Longrightarrow$連続」の逆を言うためには定義域がコンパクトでなきゃね,といった主張の定理です.
この定理の証明を調べると,大体背理法で示しています.
もっと踏み込むと,$A:\;$cpct$\Longleftrightarrow$有界閉集合を利用してBolzano-Weierstrassの定理を使えて$A$内の任意の点列は収束部分列を持つんだけれども関数の連続性の特徴づけである点列の極限交換を考えると矛盾が生じる,という流れです.
$A$の点列を取る際,以下の「一様連続でないことの言い換え」が大事です:
$f:A\to\mathbb{R}^m$が一様連続でない
$\overset{\text{by def}}{\Longleftrightarrow}\exists\varepsilon>0\;s.t.\;\forall\delta>0,\exists x\in A\;\exists y\in A\;s.t.\;|x-y|<\delta\text{かつ}|f(x)-f(y)|\geqq\varepsilon$
$\overset{\delta\text{として}\frac{1}{k}\text{をとる}}{\Longleftrightarrow}\exists\varepsilon>0\;s.t.\;\exists A\text{の点列}\{x_k\}_{k\in\mathbb{N}}\;\exists A\text{の点列}\{y_k\}_{k\in\mathbb{N}}\;s.t.\;\text{各}k\in\mathbb{N}\text{で}|x_k-y_k|<\frac{1}{k}\text{かつ}|f(x_k)-f(y_k)|\geqq\varepsilon$
世間では大体背理法,がしかし僕は最近,このハイネの定理はコンパクト集合の定義をよく見つめると一様に押さえられる$\varepsilon$と$\delta$がとれて直接証明できるのではないか?と思うようになってきました.まとまり次第Mathlogに投稿します.「実はググれば出てくる有名事項だよ」などあればコメントにて教えてください.
・連続ですが一様連続でない関数があります.
$I=[0,\infty)\;$関数$f:I\to\mathbb{R}_{+},\;f(x)=x^2$は一様連続でない.
$x_k=k-\frac{1}{4k},\;y_k=k+\frac{1}{4k}\;(k\in\mathbb{N})$として$I$の実数列$\{x_k\}_{k\in\mathbb{N}},\;\{y_k\}_{k\in\mathbb{N}}$をとる.
このとき各$k\in\mathbb{N}$について$|x_k-y_k|=\left|\left(k-\frac{1}{4k}\right)-\left(k+\frac{1}{4k}\right)\right|=\frac{2}{4k}=\frac{1}{2k}<\frac{1}{k}$かつ$|f(x_k)-f(y_k)|=|\left(k-\frac{1}{4k}\right)^2-\left(k+\frac{1}{4k}\right)^2|=|\left(k-\frac{1}{4k}\right)+\left(k+\frac{1}{4k}\right)||\left(k-\frac{1}{4k}\right)-\left(k+\frac{1}{4k}\right)|=2k\cdot\frac{2}{2k}=2>1$
が成り立つので「一様連続でないことの言い換え」より関数$f:I\to\mathbb{R}_{+},\;f(x)=x^2$は一様連続でない.
勢いよく値が大変になる(ところがある)関数は一様におさえられなくて一様連続ではない,といった理解だと気持ちがわかるかもしれません.他にも$g(x)=\frac{1}{x}\;(x\in(0,1])$,$h(x)=\sin\frac{1}{x}\;(x\in(0,1))$は各々区間上連続ですが一様連続ではありません.
$A\subset\mathbb{R}^n,f:A\to\mathbb{R}^m$
$f$がリプシッツ連続
$\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}\exists L\geqq0\;s.t.\forall x,y\in A,\;|f(x)-f(y)|\leqq L|x-y|$
・英語で書くとLipschitzです.
10回書いてみます.
Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz,Lipschitz.
では関数の積の$n$階微分を与える公式の名前は?Leibniz' ruleですね.ひっかからないようにしましょう.
・$A\subset\mathbb{R}^n,f:A\to\mathbb{R}^m$がリプシッツ連続つまり$\exists L\geqq0\;s.t.\forall x,y\in A,\;|f(x)-f(y)|\leqq L|x-y|$を満たすとします.
勝手な正数$\varepsilon$を取ります.$\frac{\varepsilon}{L}>0$で$|x-y|<\frac{\varepsilon}{L}$を満たす任意の$x,y\in A$について$|f(x)-f(y)|\leqq L|x-y|< L\cdot\frac{\varepsilon}{L}=\varepsilon$となるので
関数がリプシッツ連続なら一様連続であることがわかります.
以上をまとめると
$(1)A\subset\mathbb{R}^n,f:A\to\mathbb{R}^m$ $f$が
リプシッツ連続$\Longrightarrow$一様連続$\Longrightarrow$連続
$(2)$連続だが一様連続でない関数が存在する
今日はこのへんで終わります.次回をお楽しみに!