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大学数学基礎解説
文献あり

位相群とそのコンパクト開集合について

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初めに

記事の内容

 G を位相群、KG のコンパクト開集合とします。この記事では以下について書きます。

K に作用する G の部分集合 U についてG がハウスドルフ位相群の場合には、K に含まれるコンパクト開部分群が存在すること

本記事は参考文献[1]の p.142 定理 16 を参考にさせていただきました。

K に作用する G の部分集合について

 ここでは以下の作用を考えます。

1自明な作用 2left multiplication 3共役作用 

left multiplication は、 【Wikipedia】 Group action を参考にさせていただきました。これは群に定義された演算による作用です。これら 3 つのケースではいずれも UG の開集合となります。

1 自明な作用

G を位相群、KG のコンパクト開集合、GK に自明に作用するとする。このとき、K に自明に作用する G の元全体 UG の開集合である。

 U=G であるから UG の開集合である。

2 left multiplication

G を位相群、KG のコンパクト開集合、U:={ xG | xKK } とする。このとき、UG の開集合である。

 任意の xU をとる。xVU となる G の開集合 V が存在することを示す。K は開集合であるから、任意の yK に対して、xyK より
xVy, yWy, VyWyK
となる G の開集合 Vy, Wy が存在する。{Wy}yKK の開被覆であるから、ここから有限個選んで K を覆うことができる:Ki=1nWyi.
 W:=i=1nWyi, V:=i=1nVyi とおくとVG における x の開近傍であり、VKVWK であるから VU である。

3 共役作用

G を位相群、KG のコンパクト開集合、U:={ xG | xKx1K } とする。このとき、UG の開集合である。

 任意の xU をとる。xVU となる G の開集合 V が存在することを示す。K は開集合であるから、任意の yK に対して、xyx1K より
xVy, yWy, VyWyVy1K
となる G の開集合 Vy, Wy が存在する。{Wy}yKK の開被覆であるから、ここから有限個選んで K を覆うことができる:Ki=1nWyi.
 W:=i=1nWyi, V:=i=1nVyi とおくとVG における x の開近傍であり、任意の zV に対して zKz1zWz1K であるから VU である。

ハウスドルフ位相群の場合

 この場合、補題 2 の U はさらに閉集合となります。

G をハウスドルフ位相群、KG のコンパクト開集合、U:={ xG | xKK } とする。このとき、UG の開かつ閉集合である。

◆開集合であること

 補題 2 よりしたがう。

◆閉集合であること

 GUG の開集合であることを示す。任意の xGU に対して、xyGK となる yK が存在する。G はハウスドルフより GKG の開集合であるから、VyGK となる x の開近傍 V が存在する。VyGK より VGU である。

 補題 3 の UG の演算に関して閉じており、G の単位元 e を含みます。U のうち U1 にも含まれている元を選ぶことで、K に含まれる部分群の存在が示されます。xU かつ x1U xUU1 ですので、UU1U の中に含まれる G の部分群のうち最大の部分群になります。

G をハウスドルフ位相群、KG の単位元 e を含むコンパクト開集合とする。このとき、HK となるようなコンパクト開部分群 H が存在する。

 U:={ xG | xKK } とおくと、eK より UK であり、補題 4 より UK の閉集合であるから、UG のコンパクト開集合である。よって、H:=UU1G のコンパクト開集合である。
 H の定義より任意の xH に対して x1H であるから、HG の部分群である。

参考文献

[1]
ポントリャーギン(著)、柴岡泰光・杉浦光夫・宮崎功(訳), 連続群論 上, 岩波書店, 1977
投稿日:202332
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投稿者

pha
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初めまして!ファ♪です☺️ よろしくお願いします🤲🐹

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  1. 初めに
  2. K に作用する G の部分集合について
  3. 1 自明な作用
  4. 2 left multiplication
  5. 3 共役作用
  6. ハウスドルフ位相群の場合
  7. 参考文献