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2次形式と素数改訂版2

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内容

abが整数でpが素数で、
a2+b2=p
a2+2b2=p
a2+3b2=p
の解が存在する場合、
abpから具体的に計算する解の公式を作りました。

準備

文字の約束
pを奇素数とします。
Fpを位数pの有限体とします。
Fp×を位数pの有限体の乗法群とします。
Fp2を位数p2の有限体とします。
Fp2×を位数p2の有限体の乗法群とします。
zFp2の元
x,yFpの元

指標θ(x)

θ^:Fp×C×を非自明群準同型とします。

θを下記で定義します。
θ:FpC
x=0      θ(x):=0   
xFp×     θ(x):=θ^(x)   

θ(x)の例1

θ^(x)=(xp)
(xp)はルジャンドル記号

θ(x)の例2

p1が自然数Nの倍数のとき、

TNFp×での、ある1の原始N乗根とします。
x0のとき、
xp1NTNを用いて、
xp1N=TNvとなる、vが存在する。
ζNC×でのある1の原始N乗根
θ^(x)=ζNvθ^(x)を定義できます。

乗法群Fp2×の部分群GG

GFp2×の部分群で、
|G|を位数としたとき、|G|p+1を割りきるとします。
Fp2×は巡回群のため、Gは位数のみで決まります。

G=Fp×GGを定義します。
定義1のθ^(x)に対して
以下では次の性質を満たすと仮定します。
xG      θ^(x)=1

Gの性質

Gは次を満たします。
|G|G={1,1}
|G|G={1}

Gも巡回群のための位数で決まります。
p+1p1の最大公約数は2のため、
Gの位数は高々2です、
つまりG{1,1}です。
|G|の位数が偶数なら1Gの元です、
|G|の位数が奇数なら1Gの元ではありません。

線形写像t(z)の定義

t:Fp2Fp
t(z):=z+zp2
この写像はフェルマーの小定理より、
Fp線形写像です。

関数α(z)

関数α(z)を下記で定義します。

α:Fp2×C
α(z):=GgGGθ(t(gz))

α(z)は、t(z)Fp線形性及び、θ(x)の仮定より、
GGの代表元によらず定まる。

準備では次の定理2を証明します。

|s|を複素数sの絶対値としたとき。
p=Fp×GzFp×GFp2×|α(z)|2

関数α(z)

関数α(z)を下記で定義します。
α:Fp2×C
α(z):=gGθ(t(gz))

θ(x)の準同型性とt(z)Fp線形性より
xFp×なら
α(xz)=gGθ(t(gxz))=θ(x)α(z)

θ(x)の準同型性より、
x0なら
θ(x)p1=1のため、
θ(x)1の冪根
sを複素数sの複素共役としたとき、
θ(x)1=θ(x)
|θ(x)|2=1となり。
|α(xz)|2=|θ(x)α(z)|2=|α(z)|2

Gの定義と補題3より
xGなら
θ(t(xgz))=θ(t(gz))
α(z)=|G|α(z)

α(z)の定義より
gG
α(gz)=α(z)

1

補題6より
α(z)GzGFp2×の代表元によらない。
また
補題4より
|α(z)|2Fp×zFp×Fp2×の代表元によらない。
そのため、
|α(z)|2Fp×GzFp×GFp2×の代表元によらない。
Fp×Gの元の個数は、|Fp×||G||G|
GzGFp2×|α(z)|2=|Fp×||G|Fp×GzFp×GFp2×|α(z)|2=|Fp×||G|Fp×GzFp×GFp2×|α(z)|2
最後は補題5より

2

GzGFp2×|α(z)|2=GzGFp2×g,gG(θ(t(gz))θ(t(gz))=zFp2×gGθ(t(z))θ(t(gz)) 

zを基底(1,M)で表示する、
ただしMFpで平方非剰余な元
z=x+yM
t(z)=x
θ(x)の定義より、
x=0の場合はθ(x)=0のため、
以下x0 とします。

(続き)
=xFp×yFpgGθ(x)θ(t(g(x+yM)))=xFp×yFpgGθ(t(g(1+yxM)))

yx倍しても和の順番が変わるのみ、
すると和がxに依存しないため。
(続き)
=|Fp×|yFpgGθ(t(g(1+yM)))

g=g1+g2Mと基底でgを書くと。
t(g(1+yM))=t(g)+gyMgpyM2
=t(g)+(g1+g2Mg1+g2M)yM2

=t(g)+yg2M=g1+yg2M

g2=0ならgG
g20 ならg1+yg2M=yyを変換しても、和の順番が変わるのみ

(続き)
=|Fp×|yFpgGθ(g)+|Fp×|yFpgGGθ(y)
1項はθ(g)G1のため|Fp×||Fp||G|

2項はθ^(x)が非自明のため、0

(続き)
=|Fp×||Fp||G|

3

証明(1) より
GzGFp2×|α(z)|2=|Fp×||G|Fp×GzFp×GFp2×|α(z)|2
証明(2)より
GzGFp2×|α(z)|2=|Fp×||Fp||G|

p=|Fp|=Fp×GzFp×GFp2×|α(z)|2

以上で定理2は証明された。

解の公式

p=a2+b2の場合

p=a2+b2

p=a2+b2を満たすp4で割って1余る素数
G:={gFp2×|gp+1=1}
θ(x):=(xp)
(xp)はルジャンドル記号
FpG=G={±1}

p4で割って1余る素数のため、
θ(±1)=1

Fp×Gの元は、
p1p+1の最小公倍数p212乗すると1になるため、
Fp×Gの元はFp2×の生成元τを用いて、
τ2nとあらせる。

τ2p14+1=τp+12p1乗すると
1なので、オイラー規準より、
Fpの平方非剰余な元M用いて、τp+12=M

Fp×GFp2×{1,τ}{1,τ2n+1}{1,M}

α(z)はルジャンドル記号の整数性より整数

p=α(1)2+α(M)2

a=α(1)b=α(M)となり、解の公式が得られた。

p=a2+2b2の場合

p=a2+2b2を満たすp28で割って13余る素数です。
p=2の場合はa=0,b=1があります。
以下8で割って3余る素数と8で割って1余る素数に分けて、解の公式を作ります。

p=a2+2b2

p8で割って3余る素数

G:={gFp2×|gp+14=1}
θ(x):=(xp)
(xp)はルジャンドル記号

p=8q+3とすると。
p+14=2q+1は奇数です。
p+14p1と互いに素です。

FpG=G={1}
θ(1)=1

Fp×Gの元はp214乗で1になるため、
生成元τを用いて、
τ4nとあらせる。

Fp×GFp2×の代表元で計算しやすいものを探すと、
τp214=τ4(4q2+3q)+2
τp218={τ4(2q2+3q2)+1    q0mod2τ4(2q2+3q12)+3    q1mod2

τ3p218={τ4(6q2+9q2)+3    q0mod2τ4(6q2+9q+12)+1    q1mod2

Fp×GFp2×{1,τ,τ2,τ3}{1,τp214,τp218,τ3p218}
Gp=G,t(gpzp)=t(gz)より
α(zp)=α(z)
(τp214)p=τp214p=τp2143=τp214
(τap218)p=τ3ap218
α(τp214)=α((τp214)p)=α(τp214)=α(τp214)
α(τp214)=0
θ(1)=1を用いた。
α(τp218)=α((τp218)p)=α(τ3p218)

α(z)はルジャンドル記号の整数性より整数
p=α(1)2+α(τp214)2+α(τp218)2+α(τ3p218)2=α(1)2+2α(τp218)2

a=α(1)b=α(τp218)となり、解の公式が得られた。

p=a2+2b2
p8で割って1余る素数
G:={gFp2×|gp+1=1}
TFpでの、1の原始4乗根の1つとする。
xp14Tを用いて、
xp14=Tvとなる、整数vが存在する。
θ(x)=(1)vθ(x)を定義する。

FpG=G={±1}
p14は偶数のため、
θ(±1)=1

Fp×GFp2×{1,M}

Mが平方非剰余でθ(M)=1なら
M3も平方非剰余でθ(M3)=1
MMMFp×G剰余類で同じ剰余類に入る。
以上よりθ(M)=1となるようにMを選べる。

α(z)はガウス整数

g=g1+g2M,gG,g1=t(g)ならば,gp+1=g12Mg22=1を変形すると、
(1g1)2M(1g2)2g12=1
(g1=0なら両辺の平方剰余、非剰余が異なるためg10)
j(g)=1g1+M(1g2g1)G
j(j(g))=gpよりj(g)は全単射
t(j(g))=1g1
t(g)1=t(j(g))

α(1)=gGθ(t(g))=gGθ(t(g)1)=gGθ(t(j(g)))=gGθ(t(g))=α(1)

α(1)は整数
α(1)も整数

g=g1+g2M,gG,

gp+1=g12Mg22=1
1+Mg22=g12

t(gM)=Mg2

任意のxFp×に対して、
1+Mx2は平方剰余か平方非剰余のどちらか
(1が平方剰余、Mが平方非剰余なので、1+Mx2=0にはならいない。)
前者の場合
1+Mx2が平方剰余ならMx=t(gM)を満たすgG個あります、1+Mx2=y2ならg=±y+xMの2つです。
後者の場合
1+Mx2が平方非剰余なら1+Mx2=y2Mより
1+M1x2M2=y2x2となり、
1x=t(gM)gG個あります、
1+Mx2=y2Mならg=±yx+1xMM

xFp×
次で関数χ(x)を定義する。
χ(x)={1      1+Mx2=y20      1+Mx2=y2M

1xMxに関して対合で不動点はない。
上の場合分けより、
1=χ(x)+χ(1xM)   x0
α(M)=xFp×χ(x)2θ(Mx)=xFp×χ(x)21θ(x)

α(M)=xFp×χ(1xM)2θ(1x)=xFp×χ(1xM)2θ(x)
1α(M)+α(M)=xFp×(χ(x)+χ(1xM))2θ(x)=2xFp×θ(x)=0
最後はθ(x)の非自明性より

ガウス整数β1β+β=0を満たすのは、
bを整数として、β=b(11)
これにより、α(M)11の整数倍

|α(M)|2=2b2
p=|α(1)|2+|α(M)|2=α(1)2+2b2
となる。

a=α(1),b=α(M)11
解の公式が得られた。

p=a2+3b2の場合

p=a2+3b2を満たすp33で割って1余る素数です。
p=3の場合はa=0,b=1があります。
以下12で割って1余る素数と12で割って7余る素数に分けて、
解の公式を作ります。

p12で割って1余る素数

G:={gFp2×|gp+1=1}
FpG=G={±1}

T3Fpでの、1の原始3乗根の1つとする。
xp13T3を用いて、
xp13=T3vとなる、vが存在する。
ζ3Cでの1の原始3乗根
θ(x)=ζ3vθ(x)を定義する。

θ(1)=1
p13は偶数ゆえに、
θ(1)=1

α(z)はアイゼンシュタイン整数です。

5と同じ推論により、
α(1)=α(1)

α(1)は実数である。
アイゼンシュタイン整数かつ実数は整数のためα(1)は整数です。

同じく例5と同じ推論により、
θ(M)α(M)+α(M)=0

θ(M)=1なら
α(M)は純虚数である。
純虚数かつアイゼンシュタイン整数は、3の整数倍
α(M)=3b

θ(M)1なら
α(M)1θ(M)の実数倍である。
θ(M)1+32132
|1θ(M)|2=(11+32)(1132)=3
α(M)=(3±32)b

a=α(1)
bの方は上記の場合分けに応じて得られる。
一応解の公式が得られた、

p12で割って7余る素数
p1Nは偶数とする。
G:={gFp2×|gp+1=1}
FpG=G={±1}

θ(x)は例6と同じとします。

Fp×Gの元は、τ2nと表せる。
Fp2×/(Fp×G){1,τ}

Fp2の基底として(1,1)が取れます。
Gの定義式は、
g=g1+g21   gGなら
gp+1=1=g12+g22
x21が平方非剰余なら、
x=t(g)となる、gG2個ある。
g=x±g21

x21が平方剰余なら、
x0かつ
x21=y2なので、
1x21=y2x2
1x=t(g)となる、gG2個ある。
g=1x±yx1

x=±1なら、
x=t(g)となる、gG1個ある。
x=g

1xxに関して対合で不動点は±1
χ(x)={1   x21=y200   x21=y2012   x21=0

1=χ(x)+χ(1x)   x0
α(1)=xFp×χ(x)2θ(x)

α(1)=xFp×χ(1x)2θ(1x)=xFp×χ(1x)2θ(x)
α(1)+α(1)=xFp×(χ(x)+χ(1x))2θ(x)=2xFp×θ(x)=0
最後はθ(x)の非自明性より

α(1)は純虚数
α(1)はアイゼンシュタイン整数のため3の整数倍

p=4q+3
τFp2×の生成元としたとき、
M=τp+1Mで定義する。
Mは平方非剰余
1=τp212=Mp12=Mp32M=M2qM

(gτ)p+1=τp+1=Mを満たす。
gτ=h1+h21としたとき、

h12+h22=Mかつh10
これを変形すると。
h12M=h22
M2h12M=Mh22h12=(h2Mqh1)2
このため、

j(gτ)=Mh1+h2Mqh11

j(j(gτ))=(gτ)p
のため、j(gτ)は全単射

α(τ)=gGθ(t(gτ))=gGθ(t(j(gτ)))=gGθ(Mt(gτ)) =θ(M)gGθ(t(gτ))
=θ(M)α(τ)
α(τ)1+θ(M)の実数倍
α(τ)はアイゼンシュタイン整数のため
α(τ)1+θ(M)の整数倍

θ(M)=1つまりM=y3なら
τp+1=y3右辺はp13乗で1だが左辺は1でないため、
θ(M)1+32132
|1+θ(M)|2=(1+1+32)(1+132)=1

以上より
α(1)=3b
|α(τ)|=a
p=|α(1)|2+|α(τ)|2=a2+3b2

となり解の公式が得られた。

一般化

F(G,θ)(A)

AGL2(Fp)の元
A=(abcd)のとき
t(A)=aとする。
T+GL2(Fp)の正則上三角行列のなす部分群
TGL2(Fp)の正則下三角行列のなす部分群

θ(a)及びτ(a)Fpの非自明な乗法指標
GGL2(Fp)の部分群

ρ(g)G1次指標でgGTρ(g)=1

F(G,θ)(A)を次で定義する。
F(G,θ)(A):=gGθ(t(gA))ρ(g)

F(G,θ)(A)Gθの組は
以下次の条件O1 を満たすとする。(満たさない場合はF(G,θ)(A)=0
gGTθ(t(g))=1

θ(t(gA)) の性質

性質1
X=(x1x20x4)T+
θ(t(gAX))=θ(t(gA))θ(x1)

性質2
X=A(x1x20x4)A1AT+A1
θ(t(XA))=θ(t(A))θ(x1)

性質3
Y=(y10y3y4)T
θ(t(YA))=θ(t(A))θ(y1)

性質4
条件O1を満たす(G,θ)に対して
YGT
θ(t(YA))ρ(Y)=θ(t(A))

性質5
GL2(Fp)は次の条件O2を満たす、

AH  cFp  t(A)0A=(t(A)bcd)GL2(Fp)

F(G,θ)(A) の性質

性質6
gGF(G,θ)(gA)=ρ(g1)F(G,θ)(A)

性質7
性質4により、F(G,θ)(A))|GT|は代数的整数

性質8
性質2により、
YGATA1 θ(t(A1YA))1F(G,θ)(A)=0

AGL2(Fp)F(G,θ)(A)F(G,τ)(A)={|G||T||GT|p      θ=τ0                                 θτ

AGL2(Fp)F(G,θ)(A)F(G,τ)=
AGL2(Fp)g,gGθ(t(gA))ρ(g)τ(t(gA))ρ(g)=
|G|AGL2(Fp)gGθ(t(gA))ρ(g)τ(t(A))=

A=(abcd) g=(g1g2g3g4)

|G|AGL2(Fp)gGθ(t(g1a+g2c))ρ(g)τ(a)=
τ(a)=0a=0よりa0としてよい。
A(100a)Aと変換すると、
|G|AGL2(Fp)t(A)0gGθ(t(g1+g2c))ρ(g)θ(a)τ(a)=
gTg2=0
g20ならば条件O2θ の非自明性より0
g2=0なら諸条件が使える。
|G||GT|AGL2(Fp)t(A)0θ(a)τ(a)=
{|G||GT|(p1)2p2      θ=τ0                                         θτ
={|G||GT||T|p      θ=τ0                                 θτ

F(G,θ)(A)F(G,θ)(A)XT+のとき性質1により 変換AAXで不変

GAT+GGL2(Fp)/T+|GT||GAT+A1|F(G,θ)(A)|GT|F(G,θ)(A)|GT|=p

条件O2を満たす。GL2(Fp)の部分群であれば、
別の群、Fp2×でも同じ議論ができるのではないだろうか。

θ(t(A))は上三角行列の表現θ(t(X))からGL2(Fp)への誘導表現の元
F(F,θ)(A)θ(t(A))Gの表現に制限して、
ρ(g)に対応する等質成分に射影したもの、
そのためMackey分解を使うことでも、
できたはずだが著者はどのように使えばよいのかわかっていない。

投稿日:202337
更新日:20231113
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  2. 準備
  3. 解の公式
  4. p=a2+b2の場合
  5. p=a2+2b2の場合
  6. p=a2+3b2の場合
  7. 一般化