はじめに
前回の記事で,拡大体を定義しました。今回は,実際に体を"拡げる"ということをしていきます。が,その前に,前回導入を忘れていた記法を導入しておきます。
ということで本題に移りましょう。
目次
1.中間体・添加した体
2.拡大次数
(読み返しやすくするため,今回から目次をつけることにしました。前回の記事にも目次を追加してあります)
中間体・添加した体
中間体
体を体の拡大体とする。体が体の拡大体かつ体の部分体であるとき,体をの中間体といい,と書く。
包含関係はとなる。
添加した体
- およびに対し,を含む最小の中間体をにを添加した体といい,と書く。特にが有限集合のとき,単にと書く。
- に対しが存在してを満たすときを単拡大といい,をの生成元という。
にの元を追加しただけでは一般にはにはならない。
インフォーマルな言い方をすれば,とはの元を使った四則演算[1]によって表されるようなの元 だけ を すべて 集めてできる体である。もちろん,ならばとなる。
上の例はどれも単拡大である。議論に慣れるため,最初の二つを簡単に証明しておこう(最後の例は明らかであろう)。
は定義から明らかなので,逆の包含関係を示す。そのためには
をいえば十分であるが,
から直ちに示される。□
は明らかなので,逆の包含関係を示す。そのためにはをいえば十分である。 はの元であり, であるから, □
拡大次数
拡大次数
を-線形空間と見なしたときの次元をの拡大次数といい,と書く。であるとき,は有限次拡大であるといい,そうでないとき無限次拡大であるという。
が線形空間の公理を満足することは各自で確かめよ。定義によれば,とは「個の一次独立なの元が存在して,その係数の一次結合によっての任意の元が表せること」に他ならない。
拡大次数
- (基底としてがとれる)
- (基底としてがとれる)
- (基底としてがとれる)
これも,議論に慣れるため最初の例について証明する(他の二つの例について同じように示そうとするとやや面倒である)。
上で示したようにであるから,はを生成する。
次にとし,このときと仮定すると,を得るが,これはに矛盾する。ゆえにであり,も従う。よっては一次独立である。□
実は,ある方法を使えば有限次拡大の拡大次数は基底を構成せずともわかってしまいます。
また,が成り立つことを確かめましたが,これは偶然なのでしょうか?それとも……。