グラフ
グラフとは組であって,は集合,はの部分集合となるもののことを言う.
テンソル積
二つのグラフのテンソル積とはのことで,は通常のデカルト積,は次で定められる集合である:
彩色数
グラフの彩色とは写像のことを言う.
彩色であって,隣り合う頂点同士の色が異なるもの,すなわち,任意のでなものについてを満たすものことを良い彩色という.
グラフの彩色数とはの良い彩色が存在するようなの最小値である.
次がHedetniemiが1966年に立てた予想である.
ここでこの等式の片側の不等号
は明らかなことに注意しよう.
実際,がの良い彩色ならの彩色を「第1座標だけ見てを使って色を決める」というように定めればこれはの良い彩色である.よってであり,に対しても同じことが言える.
次が2019年 (!)に示された:
Shitov
Hedetniemiの予想は偽である.つまり,ある有限グラフについて不等式
が成り立つ.
本稿では,この結果ではなく,無限版Hedetniemiの予想の反例について解説する.
無限色の彩色や彩色数も色の数が有限のときと同様に定められる.
次はHajnalによって1984年に証明された定理である.
無限のときの問題が有限のときの問題よりずっと先に解かれているのも面白いところである.
早速Hajnalの定理の証明に入ろう.
を無限基数とする.に対して
上の順序を (つまりはのある制限関数である)で定めるとは(集合論の用語で言うところの)木である.
グラフをでと定める.
を互いに素なの部分集合とする.このときに対してが成り立つ.
頂点集合は次の2つの集合の和集合で書ける:
ここで,とが互いに素なので,なる点はないことに注意しよう.
とそれぞれに良い彩色があることを言えばよい.
なぜなら,それができると は色で良い彩色ができることがわかるが,はと同じ濃度であるからだ.
対称性によりが色で彩色できることを言おう.
を
で定める.
が良い彩色なことを示そう.
とし,とする.
(for )とおく.
するとかつであり,対称性よりと仮定してよい.
よりがわかる.
またよりがわかる (が比較可能かつ両方ともを定義域に持っているから).
よって,
となる.ここではの単射性による.
したがって,が良い彩色なことを示された.
仮にが色の良い彩色を持ったとしよう.
このときの長さの鎖が構成できることを見る.
長さの鎖を帰納的に
と定める.
が良い彩色なことを使って各がの元であること (特に各の単射性)を確かめられる.
しかし,するとはからへの単射となって矛盾.
が部分集合で閉じていることは容易に確かめられる.
が個の和集合で閉じていることも,からわかる.
が真のイデアルであることは補題4による.
実際にはこのイデアルが非定常集合イデアルになることが知られているが,その事実はここでは使わないため証明しない.
Hajnalの定理の証明
-Ulam行列の存在定理の系として,上の任意の完備の真のイデアルについて,2つの正値集合で互いに素なものがとれることがわかる.
よって,補題5のにこの事実を適用して互いに素なでなものがとれる.
互いに素なことから,補題3により,である.
については省略する.
これでHajnalの定理が証明された.
最後に無限Hedetniemiの予想についての最近の結果について触れておく.
2017年にRinotによって,ゲーデルの構成可能宇宙で任意に後続基数についてだが、なものが構成されている.
[1]
Thomas J. Jech, Set Theory: The Third Millennium Edition, revised and expanded, Springer, 2011
[2]
A. Hajnal, The chromatic number of the product of two ℵ1-chromatic graphs can be countable, Combinatorica, 1985, pp. 137-139
[3]
A. Rinot, Hedetniemi’s conjecture for uncountable graphs, J. Eur. Math. Soc., 2017, pp. 285-291