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単項イデアル性は交叉では保たれない

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環は可換であるものとする。

整数環 $\mathbb{Z}$ のような良い環においては、有限個の単項イデアルの交叉は単項イデアルとなる。しかし、一般の環においてはこのような性質は成り立たない。本記事においては単項イデアルの交叉が単項イデアルとならない例を紹介する。

単項イデアル・$\mathrm{PI}$

$R$ のついて、$R$ のイデアル $I$ が単項イデアルであるとは、ある $x\in R$ が存在して $I=(x)$ と表せることをいう。また、$R$ の単項イデアル全体の集合を $\mathrm{PI}(R)$ と表記する。

$\mathrm{PI}$-交叉的

$R$$\mathrm{PI}$-交叉的であるとは、$\mathrm{PI}(R)$ の元 $I$, $J$ について $I\cap J \in \mathrm{PI}(R)$ となることをいう。

語法について

$\mathrm{PI}$-交叉的という単語は独自に使用している語法であり、一般的なものではない。

$\mathrm{PI}$-交叉的でない環

$k$ を任意に取る。このとき、$R=k[X^3,X^4,X^5]\subset k[X]$$\mathrm{PI}$-交叉的ではない。実際、$I=(X^4)$, $J=(X^5)$ とおくと、$I=kX^4+kX^7+kX^8+kX^9+\ldots$ かつ $J=kX^5+kX^8+kX^9+kX^{10}+\ldots$ が成り立つため、$I\cap J=kX^8+kX^9+kX^{10}+\ldots =X^8k[X]$ が成り立つ。このとき、$I\cap J=(f)$ なる $f \in k[X^3,X^4,X^5]$ が存在するなら、$X^8 \in (f)$ より $f$ は単元倍を除いて $X^i \ (0\leq i \leq 8)$ の形で表せるが、$f \in X^8k[X]$ より $i=8$ が成り立つ。しかし、$X^9 \notin (X^8)=X^8k[X^3,X^4,X^5]$ より、$I\cap J\neq (X^8)$ である。よって $I \cap J$ は単項イデアルではない。

ここで、$R$ が一意分解整域(UFD)であるとき、$R$$\mathrm{PI}$-交叉的であることが知られている。このことから、$k[X^3,X^4,X^5]$ は一意分解整域ではないことがわかる。

実は、さらにNoether整域のクラスにおいては、$\mathrm{PI}$-交叉的であることと一意分解整域であることの同値性が知られている。

投稿日:20201110

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