タイトル通り, 実数のを特徴づける2つの公理, Dedekind の公理と Weierstrass の公理の同値性を丁寧に示します. そのため大分冗長な証明になってしまいましたが, ご了承ください. また, 上界, 上限, 下界, 下限などの知識は前提としています.
間違いなどありましたら, ご指摘いただけると幸いです.
2つの公理の主張は, それぞれ以下の通りです. また, Dedekind の公理には切断という概念が登場するため, それも紹介しています.
全順序集合 $K$ の部分集合 $A$,$B$ に対し $< A, B>$ が $K$ の切断であるとは,
$K=A \cup B, A \cap B = \emptyset,A \neq \emptyset, B \neq \emptyset,$
$a \in A, b \in B \Longrightarrow a < b$
を満たすことをいう.
$\mathbb R$ の任意の切断 $< A, B>$ に対し, 次のいずれか一方が成り立つ.
(i) $A$ に最大限が存在し, $B$ に最小限が存在しない
(ii) $B$ に最小限が存在し, $A$ に最大限が存在しない.
$\mathbb R$ の空でない上に有界な部分集合は上限を持つ.
Dedekind の公理と Weierstrass の公理は同値である.
$(\Rightarrow)$ を示す.
$\mathbb R$ の空集合でなく, 上に有界な部分集合 $A$ を任意に取る. $A$ の上界の集合を $U(A)$ と書くことにし, $C = U(A)^c = \mathbb R \setminus U(A)$ で定義する. このとき, $< C, U(A)>$ は $\mathbb R$ の切断になっている.
定義1 に照らし合わせてこれを確認しよう. $C \neq \emptyset$ であることは, 或る $a \in A$ に対し, $b< a$ なる $b$ は $b \in \mathbb R$ かつ $b \neq U(A)$ であるため, $b \in C$ であるのでよい($A \neq \emptyset$ よりこのような $a$, $b$ は存在する). $U(A) \neq \emptyset$ は $A$ が上に有界であるという仮定そのものである. $C \cup U(A)= \mathbb R$, $C \cap U(A)=\emptyset$ は, $C$ の定義より明らかである. 最後に, $c \in C, b \in U(A) \Rightarrow c < b$ を示そう. $c \in C \Leftrightarrow \exists a_0 \in A, c < a$, $b \in U(A) \Leftrightarrow \forall a \in A, a \leq b$ であるから, このような $a_0 \in A$ をとると, $c < a_0 \leq b$ より $c< b$ が得られる.
さて以上より $< C, U(A)>$ が $\mathbb R$ の切断であることが示されたので, Dedekind の公理より次のいずれか一方が成り立つ.
(i) $\max C$ は存在し, $\min B$ は存在しない
(ii) $\min B$ は存在し, $\max C$ は存在しない
$\max C$ が存在すると仮定すると矛盾が導かれる. 実際に示そう. $M = \max C$ が存在すると仮定し, 同値変形する.
$ M = \max C$
$\Longleftrightarrow$ $ M \in C$ $\&$ $\forall c \in C, c \leq M$
$\Longleftrightarrow$ $\exists a_0 \in A, M < a_0$ $\&$ $ \forall c \in \mathbb R (s.t. \exists a \in A, c< a), c \leq M $
$\Longleftrightarrow$ $\exists a_0 \in A, M < a_0$ $\&$ $\forall a \in A, c< a \Rightarrow c \leq M$
ここで, このような $a_0$ をとり, $\frac{M+a_0}{2}$ を考えると, $\frac{M+a_0}{2} < a_0$ であるため $\frac{M+a_0}{2} \leq M$ であるが, これは $a_0 \leq M$ と同値であり, $M < a_0$ に反する.
よって, (ii) が成り立つため, $\min U(A)$, 即ち $\sup A$ の存在がいえる.
$(\Leftarrow)$ を示す.
$\mathbb R$ の切断 $< A, B>$ を任意にとる. 切断の仮定より $A \neq \emptyset$ であり, $a \in A, b \in B \Longrightarrow a < b$ であるから, $A$ は上に有界である. よって, 仮定から $s = \sup A$ が存在する.
$s \in A$ の場合, $s=\max A$ である. $\min B$ が存在しないことを示そう. 今, $b_0 = \min B$ が存在すると仮定する. $s \in A$ であるから, 切断の仮定より $s < b_0$ である. $s < \frac{s+b_0}{2}< b_0$ であるが, $\frac{s+b_0}{2} \in A$ とすると $s$ の最大性に矛盾し, $\frac{s+b_0}{2} \in B$ とすると $b_0$ の最小性に矛盾する. これより, $\min B$ は存在しないことが分かる.
$s \notin A$ の場合, $s \in B$ である. 任意の $b \in B$ は $A$ の上界であるから, $s \leq b$ である. よって, $s$ は $B$ の最小値である. $\max A$ が存在しないことの証明は, 先程の $\min B$ が存在しないことの証明と同様である.
これより, Dedekind の公理が示された. $\square$