2

Dedekind の公理と Weierstrass の公理の同値性を丁寧に証明する

985
1

はじめに

 タイトル通り,実数の連続性を特徴づける2つの公理,Dedekind の公理と Weierstrass の公理の同値性を丁寧に示します.そのため大分冗長な証明になってしまいましたが,ご了承ください.また,上界,上限,下界,下限などの知識は前提としています.
 間違いなどありましたら,ご指摘いただけると幸いです.  

公理のステートメント

 2つの公理の主張は,それぞれ以下の通りです.また,Dedekind の公理には切断という概念が登場するため,それも紹介しています.

Dedekind の切断

全順序集合 K の部分集合 A,B に対し <A,B>K の切断であるとは,
ABAB=KAB=,
aAbBa<b
を満たすことをいう.

Dedekind の公理

R の任意の切断 <A,B> に対し,次のいずれか一方が成り立つ.
(i) maxA は存在し,minB は存在しない.
(ii) minB は存在し,maxA は存在しない.

Weierstrass の公理

R の空でない上に有界な部分集合は上限を持つ.

証明

Dedekind の公理と Weierstrass の公理は同値である.

 () を示す.
 空集合でなく,上に有界なR の部分集合 A を任意に取る.A の上界の集合を U(A) と書くことにし,C=U(A)c=RU(A) で定義する.このとき,<C,U(A)>R の切断になっている.
 定義1 に照らし合わせてこれを確認しよう.C であることは,或る aA に対し b<a を満たす bbR かつ bU(A) であるため,bC であるのでよい(A よりこのような ab は存在する).U(A)A が上に有界であるという仮定そのものである.CU(A)=RCU(A)= は,C の定義より明らかである.最後に,cCbU(A)c<b を示そう.cCa0Ac<a であり, bU(A)aAab であるから,このような a0A をとると,c<a0b より c<b が得られる.
 さて以上より <C,U(A)>R の切断であることが示されたので,Dedekind の公理より次のいずれか一方が成り立つ.

(i) maxC は存在し,minU(A) は存在しない
(ii) minU(A) は存在し,maxC は存在しない

maxC が存在すると仮定すると矛盾が導かれる.実際に示そう.M=maxC が存在すると仮定し,同値変形する.

M=maxC
MC cCcM
a0AM<a0 cR(staAc<a)cM
a0AM<a0 aAc<acM

ここで,このような a0 をとり,M+a02 を考えると,M+a02<a0 であるため M+a02M であるが,これは a0M と同値であり,M<a0 に反する.

よって,(ii) が成り立つため,minU(A),即ち supA の存在がいえる.
 これより,Weierstrass の公理が示された.

 () を示す.
 R の切断 <A,B> を任意にとる.切断の仮定より A であり,aAbBa<b であるから,A は上に有界である.よって,仮定から s=supA が存在する.
 sA の場合,s=maxA である.minB が存在しないことを示そう.今,b0=minB が存在すると仮定する.sA であるから,切断の仮定より s<b0 である.s<s+b02<b0 であるが,s+b02A とすると s の最大性に矛盾し, s+b02B とすると b0 の最小性に矛盾する.これより,minB は存在しないことが分かる.
 sA の場合,sB である.任意の bBA の上界であるから,sb である.よって,s=minB である.maxA が存在しないことの証明は,先程の minB が存在しないことの証明と同様である.
 これより,Dedekind の公理が示された.

投稿日:202343
更新日:19日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

情報系の学部1年生です。 数学科ではありませんが、数学科のカリキュラムに則って勉強していこうと思っています。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中