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大学数学基礎解説
文献あり

UFD上の多項式環はUFDの証明

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次の定理の証明をします。

一意分解整域$A$上の多項式環$A[X]$は一意分解整域である

まず、一意分解整域とは、0でも単元でもない元が必ず有限個の素元の積になるような整域です。なお、一般の整域Rにおいて、素元の積への分解は順序と単元倍を除いて一意的です(これが「一意」の理由)。
そのため、今回示せばよいのは「$A[X]$の0でも単元でもない元が有限個の素元の積に書ける」ということです。

次の定理2が証明できれば定理1もわかります。実際、整域Aの商体F上の多項式環F[X]は、
ユークリッド整域なので一意分解整域。よって$f(X)\in A[x]$はF[X]で素元(既約多項式)の積に
$$f(X)=p_1(X)\cdots p_n(X)\qquad (p_i(X)\in F[X]) $$
と分解できる。よって定理2より、帰納的に
$$f(X)=q_1(X)\cdots q_n(X)\qquad(q_i(X)\in A[X])$$
となり、各$q_i(X)$の構成から、$q_i(X)は$$F[X]$において既約であるから$A[X]$においても既約。

一意分解整域Rの商体をFとする。$f[X]$$ \in $$R[X]$$F[X]$において、
$$f(X)=g_1(X)h_1(X)    (g_1(X),h_1(X) \in F[X])$$
と二つの多項式の積に分解すれば、$f(X)$$R[X]$において、次のように二つの多項式の積に分解する。
$$f(X)=g(X)h(X)    (g(X),h(X) \in R[X])$$
deg$(g_1)$=deg$(g)$ deg$(h_1)$=deg$(h)$

$$g_1(X),h_1(X)はそれぞれ$$
$$g_1(X)= \frac{a}{b}g_0(X)\qquad h_1(X)=\frac{c}{d}h_0(X)\qquad (a,b,c,d \in R) $$
$$(g_0(X),h_0(X)\in R[X]は原始多項式)$$
と書け、(最小公倍元$a$をかけて最大公約元$b$で割ればよい)
$$f(X)=\frac{ac}{bd}g_0(X)h_0(X)$$
となる。原始多項式の積はまた原始多項式なので$g_0(X)h_0(X)$$R[X]$の原始多項式となり、次の補題により
$$\frac{ac}{bd}\in R、となるのでg(X)=\frac{ac}{bd}g_0(X) h(X)=h_0(X)とおけばよい$$

$$f(X),g(X)\in R[X],g(X)は原始多項式、このときf(X)=g(X)h(X)となるh(X)\in F[X]が存在すれば、$$$$h(X)\in R[X]である。$$

$$f(X)=g(X)h(X)\qquad (f(X),g(X)\in R[X],g(X)は原始多項式,h(X)\in F[X])$$
なら、$a\in Rとh_1\in R[X]$が存在して、$af(X)=g(X)h_1(X)$となる。
$f(X)$$g(X)$の最大公約元をそれぞれ$b,c$とすれば、
$$f(X)=bf_0(X),h(X)=ch_0(X)$$$f_0(X),h_0(X)$はR[X]の原始多項式、の形に表され、
$$abf_0(X)=cg(X)h_0(X) が成り立つ。$$
$f_0(X),g(X)h_0(X)$は原始多項式より$ab|c、c|ab$となるので
$abu=c$となる$R$の単元$u$が存在して,
$$f_0(X)=ug(X)h_0(X)$$
となる。したがって、
$$f(X)=bf_0(X)=g(X)\cdot buh_0(X),\quad buh_0(X)\in R[X]となる。$$
ところで、$f(X)=g(X)h(X)$だったので、$g(X)h(X)=g(X)\cdot buh_0(X)$
で、$F[X]$は整域であるから、$h(X)=buh_0(X)\in R[X]$である。

初めてこのような記事を書いたので数学的な間違いや、書き方の間違いがあるかもしれません。その時はご指摘くださるとありがたいです。

参考文献

[1]
藤崎源二郎, 体とガロア理論, 岩波書店
投稿日:202343

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