せっかくこのように簡単に数学の記事が書けるツールがあるので、勉強したことを気楽に記事にしていこうかなと思いました。スタイルとしては、「定理、証明、定理、証明、...」というような厳格なものではなく、数学書で勉強したところを、自分なりの解釈で噛み砕いたものを書いていくつもりです。
どれだけ細かく書くかは悩みどころですが、一応、まだこの内容を勉強したことがない人がこれを読んで、考え方や"気持ち"だけでも分かって、細かいところは自分で勉強してもらう、というような状況をイメージして書くことにします。
Without further ado, 始めていきましょう。
定義をさらっと書くと、
n次元有界閉区間$I$上で定義された実数値関数$f$がある。区間$I$の任意の分割$\Delta$に対し、$\Delta$によって生ずる各小区間$I_k(k\in K(\Delta))$の中から任意に一点$\xi_k$をとって作った和
$$
s(f;\Delta ;\xi)=\sum_{k\in K(\Delta)}f(\xi_k)v(I_k)
$$
を、$f$の$\Delta$に関するRiemann和という。もしもある実数$J$が存在して、$I_k$の代表点$\xi_k$の取り方によらず
$$
\lim_{d(\Delta) \to 0}s(f;\Delta ;\xi)=J
$$
となるとき、$f$は(Riemann)可積分であるといい、$J$を$f$の$I$上での(Riemann)積分という。そして
$$
J=\int_{I}f=\int_{I}f(x)dx
$$
などと表す。
となります。基本的には感覚通りですが、大事なのは赤字の「$I_k$の代表点$\xi_k$の取り方によらず」のところです。各$I_k$内で$\xi_k$を動かすとき、$f$の値があまりに変化するようだと、Riemann和が$\xi$の取り方の影響を強く受けてしまい、極限が一意に定まらなくなる恐れがあるわけです。式で書くと、
$$
s(f;\Delta ;\xi)-s(f;\Delta ;\xi')= \sum_{k\in K(\Delta)}(f(\xi_k)-f(\xi'_k))v(I_k)
$$
となるので、どう$\xi,\xi'$を取っても、この右辺が任意に与えられた$\epsilon>0$より小さくなるように$\Delta$をとることができることが必要になってきます。$a(f,I_k):=\displaystyle\sup_{\xi_k,\xi'_k\in I_k}\{f(\xi_k)-f(\xi'_k)\}$を$f$の$I_k$における振幅とよびます。そして実際に、次の定理が成り立ちます。
任意の$\epsilon>0$に対して
$$
\sum_{k\in K(\Delta)}a(f,I_k)v(I_k)<\epsilon
$$
となるような分割$\Delta$が存在することと、$f$が$I$上可積分であることは同値である。
ただし、上の説明は証明ではなく、あくまで"気持ち"であることに注意してください。
さて、この定理から、$\sum a(f,I_k)v(I_k)$が注目の対象になります。この和を十分に小さくする方法は大きく2つ考えられます。
この1に応えるのが「一様連続性」であり、2に応えるのが「零集合」であるのだと思います。
$A\subset \mathbb{R}^n$とする。関数$f:A\rightarrow \mathbb{R}^m$は、
$$
(\forall \epsilon >0)(\exists \delta >0)(\forall x,y\in A)(|x-y|<\delta \Rightarrow |f(x)-f(y)|<\epsilon)
$$
を満たすとき、$A$上一様連続であるという。
$f$が$I$上一様連続ならば、$I_k$の直径を十分小さくすれば、すべての$k$に対して$a(f,I_k)<\epsilon$とできることを意味しますから、
$$
\sum_{k\in K(\Delta)}a(f,I_k)v(I_k) \lt v(I)\epsilon
$$
より、可積分条件を満たします。
$\mathbb{R}^n$の有界閉区間$I$上で連続な関数$f:I\rightarrow \mathbb{R}^m$は、$I$上可積分である。
この$f$は一様連続なので、可積分なわけです。
$\mathbb{R}^n$の部分集合$A$は、任意の$\epsilon >0$に対して、有界閉区間の列$(I_m)_{m\in \mathbb{N}}$であって、
$$
A\subset \bigcup_{m\in \mathbb{N}} I_m,\ \sum_{m=0}^{\infty}v(I_m)<\epsilon
$$
を満たすものが存在するとき、($n$次元)零集合という。
$f$が連続な点では、それを含む小区間$I_k$であって、$a(f,I_k)<\epsilon$なるものが任意の$\epsilon >0$に対して存在しますが、不連続な点ではそうはなりません。そこで、不連続点を含む小区間については$v(I_k)$が、特にその和が十分小さくできる必要があります。そして、証明はしませんが、次の定理が成り立ちます。
$\mathbb{R}^n$の有界閉区間$I$上の有界関数$f:I\rightarrow \mathbb{R}$に対し、次のa),b)は同値である。
a)$f$は$I$上(Riemann)可積分である。
b)$f$の不連続点の集合は零集合である。
読んでいただきありがとうございました。