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複素解析:正則関数とその性質の紹介

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はじめまして! 素敵なサービスを見つけたので記事を書かせていただきたく思います。よろしくお願いいたします。
今回は複素解析の入門のような記事を書いてみようと思います。

複素関数

複素解析は、複素数を変数として複素数を返すような関数(複素関数)を調べる分野です。例えば、オイラーの公式として知られる$$e^{i\theta} = \cos \theta + i\sin \theta $$では、複素数$i\theta$に対する指数関数が左辺に出てきます。指数関数$e^x$はもともと$x$が実数のときに定義されていた関数ですが、その定義とつじつまが合うように、定義域を複素数にまで広げることができます。

余談ですが、オイラーの公式で$\theta = \pi$とおくと、こちらも有名な$$e^{i\pi} = -1 $$が得られます。これらの式は神秘的な式だとよく言われている気がしますが、複素解析を学ぶと日常的に(?)使うことになる便利な式です。

複素関数の例

複素関数の例を挙げてみましょう。以下、$z$を複素数の変数とします。

複素関数の例
  • 定数関数: $1$, $-5i$, $2+\sqrt{2}i$, ...
  • 実部、虚部: $x = \mathrm{Re}\, z$, $y = \mathrm{Im}\,z$
  • $z$の多項式: $z$, $3z^2 + 5iz - 2$, ...
  • $z$の共役: $\overline{z}= x-iy$
  • 指数関数: $e^z = e^x(\cos y + i \sin y)$

他にも、三角関数も定義域を複素数にまで広げることができます。

正則関数

複素関数の中でも、正則関数と呼ばれる関数たちがとても良い性質を持つことが知られています。とりあえず定義を見てみましょう。

正則関数

$\Omega \subset \mathbb{C}$を(空でない)開集合とする。関数$f: \Omega \to \mathbb{C}$正則であるとは、任意の$z \in \Omega$に対して、極限$$\lim_{\substack{h \in \mathbb{C} \setminus \{0\}\\ h \to 0}}\frac{f(z+h) - f(z)}{h} $$が存在することをいう。

正則であることの定義は、実関数の微分可能性の定義とほぼ同じです。見た目の違いは$h$が複素数の範囲を動くことだけですが、それにより関数の満たす性質は大きく変わってきます。

例1で挙げたいくつかの複素関数を正則関数とそうでないものに分けると、次のようになります。

正則関数の例
  • 定数関数: $1$, $-5i$, $2+\sqrt{2}i$, ...
  • $z$の多項式: $z$, $3z^2 + 5iz - 2$, ...
  • 指数関数: $e^z = e^x(\cos y + i \sin y)$
正則でない関数の例
  • 実部、虚部: $x = \mathrm{Re}\, z$, $y = \mathrm{Im}\,z$
  • $z$の共役: $\overline{z}= x-iy$

余裕のある方はこれらの関数が正則かどうかを実際に確かめてみてください!

大雑把に言うと、$z$の多項式やその極限として表される関数が正則関数となります。指数関数は上の書き方だと$z$の多項式に見えませんが、実は
$$e^z = 1 + z + \frac{1}{2} z^2 + \frac{1}{3!}z^3 + \cdots + \frac{1}{n!} z^n + \cdots $$と展開(テイラー展開)できることが知られています。この意味で、指数関数$e^z$は多項式の極限となっています。

コーシーの積分定理

正則関数に対して、コーシーの積分定理と呼ばれる等式
$$\int_C f(z)dz = 0 $$が成り立ちます。ここで、$C$$f$の定義域内の閉曲線で、それに沿う線積分というものを考えています。線積分は正確に定義するとちょっと大変ですが、実関数の積分と似ていて、「$z$$C$上をぐるっと一周動くときに、$f(z)\cdot\Delta z$ (ただし$\Delta z$$z$の微小な変化量)を足し合わせる」といったものです。$f$$C$に沿ってぐるっと一周積分すると0になると言っています。

本当は、$C$の連続性に関する仮定や「$C$の内部に穴がない」というタイプの仮定が必要ですが、今回は正確な仮定は省いています。

コーシーの積分公式

コーシーの積分定理をうまく用いると、コーシーの積分公式
$$f(z) = \frac{1}{2\pi i}\int_C \frac{f(\zeta)}{\zeta-z} d\zeta $$が得られます。ここで、$z$は閉曲線$C$が囲む領域の内部の点です。この公式をよく見ると、右辺は$C$に沿う線積分になっています。$C$に沿う線積分を計算するためには、関数$f$$C$上での値が分かれば十分です。つまり、閉曲線$C$上の$f$の情報だけから$C$の内側での$f$の値が完全に分かってしまうということを意味しています。これは正則関数の持つとても便利な性質のひとつです。

正則関数のいろいろな性質がコーシーの積分公式から導かれます。とくに、すべての正則関数はテイラー展開可能であることが分かります。

また、これらの性質をうまく用いることで、簡単には計算できないような実関数の積分も計算できます。これが留数積分と呼ばれる技術で、例えば、
$$\int_{-\infty}^{\infty} \frac{e^{itx}}{x^2+1}dx = \pi e^{-|t|} $$であることが留数積分により得られます( Residue theorem - Wikipedia より引用)。

今回のまとめ

他にもいろいろな話題がありますが、このあたりで終わりにしたいと思います。
この記事では、次の内容を紹介しました:

  • 複素解析は複素関数を扱う分野であること
  • 正則関数の定義
  • コーシーの積分定理や積分公式のおおまかな紹介

詳しい内容については今後また紹介するかもしれませんので、よろしくお願いします。それではまた!

投稿日:20201110

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