どうもこんにちは.今日は本のレビューをしたいと思います.
今日紹介するのは,E.ハイラーさんとG.ヴァンナーさんの解析教程です!
これは完全に僕好みなのです.章構成は,まず初めにデカルトの座標幾何学や代数方程式の話題が取り上げられ,多項式函数が述べられます.その後,積分の話題に入ります.然し厳密にリーマン積分やルベーグ積分を論じるのではなく,極めて直観的にフェルマーやニュートンが行った通りの考察が書かれています(と思います).
そして三角関数や級数展開が現れて(これらも皆直観的です),沢山の計算が書かれています.今の本には載っていないような計算方法が沢山ありますね.
それで微分積分に入ります.これもニュートン,ライプニッツがやったように展開されます.
その後もどんどん進みます.積分の近似計算,テイラー展開,曲率,有理関数の積分,漸近展開,微分方程式などなど.これらは皆,現代の解析学の基礎づけが成されていないままに発見されてきたものです.
そして微分方程式まで行った後に,点列の収束から,$\varepsilon - \delta$論法など,現代の解析学の基礎が論じられます.連続性,極限,などなど.もう他の微積の本と変わりません.
これらは完全に歴史に沿っています.こんな本は他にないのではないでしょうか?
本書の特徴の二つ目として,その文献の数の膨大さがあります.
ページをめくるたびに,大数学者の計算用紙や論文の写真など,どんどん元物が出てきます.
矢張り当時の資料は,見るだけでも大分違います.パスカルが実際に書いた三角形だってありますよ…?
この解析教程には,多くの数学者の言葉が引用されています,
例えば,本書はアンドレ・ヴェイユの次の様な言葉で始まっています:
我々の数学の学生達には,現代的な教科書を使うよりもオイラーの「無限解析入門」を学ぶ方がはるかに役に立つでしょう
また原始函数のところで,次の言葉に目が留まります:
これは平均値の定理によって与えられる.このことの基本的な重要性に気づいたことはコーシーの偉大な貢献である.…このゆえにこそ,コーシーを厳密な無限小解析の創始者とみなすのである.
更に,如何に極限が重要な概念かというのを強調するために,コーシーがその有名な著書「解析学教程」に於いて解決した問題と題して次のようなことをあげています:
*
・導関数とは何か? 答.極限
・積分とは何か? 答.極限
・無限級数とは何か? 答.極限
・極限とは何か? 答.数
・数とは何か?*
こんな風な本です.僕は数学史が好きなので,この本は大好きなのだと思います.
普通,数学史の本を読むと,はやり歴史に焦点が当たっているから数式や議論が余り出てこない.
だけど数学書を読むと,矢張り数式や議論に焦点が当たっているから数学史があまり出てこない.
それらの間をとった,名著だと思います.そんな本でしたら,他にも高木貞治の解析概論はそういうところがあると思います.
気になった方は,是非一度手に取ってみてはいかがでしょう!