数学を学んでいると,実数,有理数,自然数などいろいろな数,および数の集合が現れます.これらがどのように導入されていくか,演算を交えて考えていきましょう.
まず自然数を考えてみます.これは というような,簡単にいえば「指を折って数えていく数」です.このような数の集合のことも自然数といいます.
次に四則演算,つまり を考えます.自然数同士の和を考えると,その演算結果は自然数になります.ところが自然数同士の差を考えると,小さい数から大きい数を引いた場合には,自然数にはなりません.「負の数」になります.同じ数同士を引いた場合はになります.
そこで,と「負の数」を自然数に加えた集合を考えます.つまり, です.このような数の集合,あるいは集合に含まれる数を整数といいます.
四則演算のうち を考えると,整数同士の積は整数になります.それでは はどうでしょう.もちろん「で割る」は除外します.「割り切れる」ならば演算結果,つまり商は整数になります.ところが割り切れない場合は分数や小数で表すことになります.
そこで, を整数として, を導入します. が の倍数でなければ,整数で表されません.このような数,あるいは数の集合を有理数といいます.
さて,四則演算を超えて考えます.「2乗するとになる数」というと, の二つです.それでは「2乗するとになる数」はどのような数でしょうか.実はこのような数は有理数で表すことはできません.そこで,「2乗するとになる数」として,を導入します.中学校で教わる二次方程式の解の公式でも,同じような記号が現れるでしょう.このような有理数で表すことができない数と,有理数を合わせて実数という集合を考えます.
さらに,二次方程式の解の公式を用いると,という記号の中の値が負になると困ることになります.もっと簡単な例を考えると「2乗するとになる数」です.このような数は実数には含まれません.「2乗するとになる数」として,虚数単位を考えます.そして,実数 を用いて,という数を考えます.このような数,あるいは数の集合を複素数といいます.二次方程式の解は,複素数を使えば全て表すことができます.
それでは,三次方程式,あるいはより次数の高い方程式の解を表すには,複素数よりも拡張された数が必要なのでしょうか.実は代数学の基本定理では,
という方程式で, が全て複素数という次方程式の場合,解は全て複素数ということが示されます.さらに,重解の重複を考えると,ちょうど個の解が存在することも示されています.
複雑な状況を考えると,複素数をさらに拡張した数の体系が必要になりますが,次方程式の場合には複素数で十分です.なお,代数学の基本定理は解の存在を示しているだけで,解の公式が存在することは示していません.五次以上の方程式に解の公式がないということが既に証明されていますが,これまでの話に比べると難易度がはるかに高いので,ここでは紹介しません.