ときどき,「
そのようなものを目にするたび,
これは自明な結果であり,実は難しいといわれてもピンとこない.ましてや証明するべき対象だとは到底考えられない.
「
数学において,最初に与えられた「証明なしに用いてよいもの」を公理(axiom)という.
そして公理から正しい推論規則を繰り返し適用して得られた結果を定理(theorem)という.
「
では,この問いにおける公理とは何なのであろうか.多くの場合,この点が不明確であるから「
自然数とは何かという問いは自然数についての公理をみつけようという問いであり,この問いに答えたのがG Peanoである.
そして自然数についての公理系は今日「Peanoの公理」として知られている.Peanoの公理とは次の五つの公理からなる.
(この
自然数
この公理も慣れていなければ不思議に思われることだろう.
まず,最初に「
この公理は,我々が自然数について何かを語るとき,何もないところから始めることはできないことを物語っている.
すなわち,せめて
このような記号の集合を言語という.
まずは自然数を語る上で必要な,自然数の言語について考えてみる.
Peano算術の言語
自然数の集合を考えるだけであれば和の記号
しかし,今は自然数の計算も含めたPeano算術について考えるため,和や積の記号も用意する.
また,今回は直接用いることはないが,通常大小関係も考えるためそれに倣い
上のように述べてはいるが,この時点では各記号に「意味」はない.
というのもまだPeano算術の公理を定めていないからである.
つまり,この後で公理を定め,たとえば
また,Peano算術に限らず,次のような論理記号を用いるので今回もそれにしたがうことにする.
ブール結合子
量化記号
等号記号
変数
括弧
必要に応じて変数は
また,
今回はこのすべてを用いるわけではないし,せっかくだから載せているものも多い.
適宜読み飛ばし,わからなくなったときに再度みるくらいでちょうどいいと思われる.
さて,前節でPeanoの公理をみたときにも述べたが,Peanoの公理自体は自然数というモノに関する定義であってその計算などには触れられていない.計算も含めた自然数の公理系(理論ともいう)はPeano算術(Peano arithmetic)とよばれ,
ここではPeano算術の公理についてみていく.
すべての
すべての
Peano算術最初の公理は後者関数に関するものであり,上でみたPeanoの公理の3と4にあたる.
この公理を繰り返し適用することで
すべての
すべての
すべての
すべての
Peanoの公理にはなかった和と積についての公理である.3と4ですべての数項についての和を定め,5と6で積を定める.
また,ここでたとえば4についてはすでに
すべての
すべての
今回は不等号に関する公理は用いないため,紹介にとどめる.
この公理はPeanoの公理の5にあたる.
その内容をみてみると,帰納法は次の二つの主張を証明することですべての
すべての
このことは記号
これを帰納法の公理という.
しかし,実際には算術の言語で記述される性質
以上が
これらの公理から出発して定理を導くことになる.
いよいよ本題の
しかし,この式はそもそも
まずは正確に問題をかき下すことから始める.
次の式は
すなわち,「
そして,この証明には前章で紹介した和の公理のみを使用する.
どの公理を使ったかみながら示していく.
ここまで,「
結論としては,確かに
しかしその証明自体は何も難しくないし,興味深いことでもない.
むしろその背後にある,理論や形式的な議論にこそ意味があるといえる.
最後に補足として
ではそのような不思議な関数の代わりに,はじめから
実はそのようにするやり方もある.実際,同じ理論を考えていても異なる言語や公理を用いることがある.
そして,それらは証明能力としては同値になる. そして,言語を
ここから何がいえるだろうか.この場合の数項
つまり,証明すべきことではない.
それは論理式をその形によって分類するなどの利点があるからである.
つまり,言語や公理は最小にしなければいけないわけではなく,他の公理から導き出されるものであっても公理に追加してもよい.
ここから何がいえるか.
この場合,
「
結局
それは,用いている言語や理論の内容による.
広く使われている
また,先述したように言語や公理の選び方によっては証明せずともよいので,証明したくない場合は最初から公理に入れている立場をとればよいと思う.
しかし,この問題を通して言語や理論を学ぶきっかけにはなるので,そういう意味では意味のある問題なのかもしれない.
Richard Kaye Models of Peano Arithmetic Clarendon Pr,1991
菊池誠『不完全性定理』 共立出版,2014
新井敏康『数学基礎論』 岩波書店,2011
John Stillwell著,川辺治之訳『逆数学 -定理から公理を「証明」する-』
森北出版,2019
田中一之『数学基礎論序説』 裳華房,2019
結城浩『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』 SBクリエイティブ,2009