教科書の行列式の定義式が簡潔すぎてイメージできないので、ゴチャゴチャ考えて
噛み砕こうとした話。多少はイメージしやすくなった……か?
行列式の構成 by 行ベクトル
として、次のような行ベクトル、整数、行列の組を考える。
この「組」に対して、次の操作によって得られる「組」をすべて集めた集合をとする。
1. ベクトルの列目と列目を入れ替える
整数を倍する。
行列の列目と列目を入れ替える
(,は適当)
2. 1.を有限回おこなう
の要素をとして、次のを考える。
は「整数」と「行列の対角成分」をすべて掛け合わせたもの
つまりであり、とおくと、次のようにも書ける。また、この操作ではに対するが一意に定まることが知られており、
と書くこともできる。
集合全体にわたってを足し合わせたものを、行列の行列式という。
教科書で馴染みの正式な定義はこちら。
※は対称群
「行」を「列」に読み替えて議論しても同じように行列式を構成できる。
→
- 列の交換
交換後の行列をとする。をに戻す操作でができることに注目。
の要素(の)の符号が(の場合と比較して)すべて反転するので
- 列を倍する。
その行列をとする。列の交換操作について考えると、
倍された数がの対角成分に必ずつ入る。
がすべて倍されるので - 同じ内容の列がある
任意のの要素について、該当の列を入れ替えた要素が存在する。
はの符号違いなので行列式の計算において打ち消し合う。よって
多重線形性
行列の行目に注目しつつ、行列式について考える。
行列式をでくくると
括りだされたものをとして
行列式の計算において、に注目すると、
掛け合わされている個々の要素で行番号が重なることはない。
よってを含まない。
数列,を用いて
行列の行目(~)に,を代入した行列をそれぞれ,とすると☆式より
よって
とすると
※ここでは行列の行目()にを代入したもの。
よって、行列式の行において多重線形性が成り立つ。
行と列を入れ替えても同じ議論ができるので
行列式の列においても多重線形性が成り立つ。
余因子展開
列目の余因子展開を考える。つまり次のについて調べていく。
がに登場するのはがの対角成分に含まれるとき。
よって行列式におけるの係数を考える際に考慮すべきは
の列目が列目に移動したもの。
まず、の列目を列目に移動させる。
ただし、他の列の並び順を変えたくないので、移動は隣接互換の繰り返しで行う。
回必要なので、この時点で。をかけてとして良い。
この「組」を起点とする。
列目を固定、他の列を入れ替えたときの,を考えていく。
行目,列目を除外した小行列(とする)を観察しながらの係数を考えると、
の行列式を構成する手順が含まれていることが分かる。よって
「行」を「列」に読み替えた議論のための参考として、次を考えておく(自明?)。
を対称群とする。次のように定義される集合は等しい。
表示
のある要素について
とする。
はの元なのでそれぞれ~のどれかである。よって、小さい順にならべてとできる。
同じ手順での要素を並べると、の要素と同じ形になる。
よって、。
任意のの要素に対して同じ議論ができるので
同様にの要素をの要素の形にできるので
よって