今回の電磁波が存在することの証明は、私が今まで電磁気学を学んできた中で、一番感動した証明です。なんと、電磁気学の実験結果をまとめた綺麗な4本の式(マクスウェル方程式)から、電磁波が存在することが示せるんです!これは、本当に圧巻なのでみなさんにも味わって頂きたいと思い、この記事を作成しています笑。
最初にマクスウェル方程式を確認していきましょう。
マクスウェル方程式は以下の4つの式のことを指す。
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\div E = 0 \\
\div B = 0 \\
\rot E + \frac{\d B}{\d t} = 0 \\
\rot B - \eps_0 \mu_0 \frac{\d E}{\d t}=0
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
※ただし、電流、電荷が存在しない真空を仮定している。
これらの法則は今回既知としますが、上から順番にガウスの法則、単極磁荷の非存在性、ファラデーの法則、アンペール・マクスウェルの法則を表す式です。これらのイメージについては、また別の記事で解説しようと思います。
波動方程式は以下のように表される。
$$
\begin{eqnarray}
\frac{1}{v^2}\frac{\d^2 u}{\d t^2} = \frac{\d^2 u}{\d x^2} + \frac{\d^2 u}{\d y^2} + \frac{\d^2 u}{\d z^2} = \Delta u
\end{eqnarray}
$$
波動方程式は、このような式を満たす$u$や$v$が存在した時に、$u$が波の関数、$v$が波の速度とするような波が発生している考えることができるという式です。
試しに$u(x,t)=\sin(x + vt)$(1次元の波)は波動方程式を満たす。実際、
$$
\frac{\d^2 u}{\d t^2}= -v^2\sin(x + vt),\ \ \frac{\d^2 u}{\d x^2}= -\sin(x + vt)
$$
ですから、波動方程式の左辺と右辺を比べれば明らかです。
「波以外の関数も波動関数を満たしてしまうのでは?」と思う方向けにもう少し深めておきましょう。1次元に限った場合は波動関数一般解は
$$u = f(x-vt)+g(x+vt)$$
と表されます。これは、順方向に進む波と逆方向に進む波の重ね合わせであると考えられるので、波動関数は妥当であると捉えることができます。
電磁波の存在を証明するためには、ベクトル解析の知識が必要不可欠であるから、今回使うものを挙げておく。
ベクトル解析の演算子に対して、以下の公式が成り立つ。
$$
\rot \rot A = \grad \div A - \Delta A
$$
基本的にただ展開するだけになりますが、少々お付き合いください。この式は直感的にはイメージしづらいですね。証明を確認していきましょう。
全成分同じ計算となるので、両辺の$x$成分のみ比較します。また以下では、$A=(A_x,A_y,A_z)$とする。
$$
\begin{eqnarray}
\rot A &=& \left( \frac{\d A_z}{\d y}-\frac{\d A_y}{\d z},\ \frac{\d A_x}{\d z}-\frac{\d A_z}{\d x},\ \frac{\d A_y}{\d x}-\frac{\d A_x}{\d y} \right) \\
\div A &=& \frac{\d A_x}{\d x} + \frac{\d A_y}{\d y} + \frac{\d A_z}{\d z}
\end{eqnarray}
$$
より、左辺と右辺の$x$成分はそれぞれ、
$$
\begin{eqnarray}
\left( 左辺のx成分\right) &=& \frac{\d}{\d y}\left( \frac{\d A_y}{\d x}-\frac{\d A_x}{\d y} \right) - \frac{\d}{\d z}\left( \frac{\d A_x}{\d z}-\frac{\d A_z}{\d x} \right) \\
&=& \frac{\d^2 A_z}{\d z\d x} + \frac{\d^2 A_y}{\d y\d x} - \frac{\d^2 A_x}{\d y^2} -\frac{\d^2 A_x}{\d z^2} \\\\
\left( 右辺のx成分\right) &=& \frac{\d}{\d x}\left( \frac{\d A_x}{\d x} + \frac{\d A_y}{\d y} + \frac{\d A_z}{\d z} \right) - \left( \frac{\d^2 A_x}{\d x^2} + \frac{\d^2 A_y}{\d y^2} + \frac{\d^2 A_z}{\d z^2} \right)\\
&=& \frac{\d^2 A_z}{\d z\d x} + \frac{\d^2 A_y}{\d y\d x} - \frac{\d^2 A_x}{\d y^2} -\frac{\d^2 A_x}{\d z^2}
\end{eqnarray}
$$
となり一致する。
いよいよ、前提知識が揃ったので電磁波の存在性を証明していきたいと思います。
まずは、電場が波であることを示していきます。ファラデーの法則において両辺の$\rot$をとります。
$$
\rot\rot E + \frac{\d}{\d t} \rot B = 0
$$
ここでベクトル解析の補題とアンペール・マクスウェルの法則の時間微分を用いることにより、
$$ \grad \div E - \Delta E + \eps_0\mu_0\frac{\d^2 E}{\d t^2} = 0 $$
となりますが、$\div E = 0$ですから、$c=\frac{1}{\sqrt{\eps_0\mu_0 }}$とすれば、
$$
\frac{1}{c^2}\frac{\d^2 E}{\d t^2}=\Delta E
$$
が導かれます。
次に、磁場が波であることを示していきます。アンペール・マクスウェルの法則において両辺の$\rot$をとります。
$$
\rot\rot B - \eps_0\mu_0\frac{\d}{\d t}\rot E = 0
$$
こちらも同様にベクトル解析の補題とファラデーの法則の時間微分を用いることにより、
$$ \grad \div B - \Delta B + \eps_0\mu_0\frac{\d^2 B}{\d t^2} = 0 $$
となりますが、$\div B = 0$より、
$$
\Delta B = \eps_0\mu_0\frac{\d^2 B}{\d t^2} = \frac{1}{c^2}\frac{\d^2 B}{\d t^2}
$$
が導かれます。
電場と磁場に関して導かれた
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{c^2}\frac{\d^2 E}{\d t^2}=\Delta E \\
\frac{1}{c^2}\frac{\d^2 B}{\d t^2}=\Delta B
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
をよく見てください。これは波動方程式の形になっています。つまり、これが電磁波の正体です。
上述した波動方程式と比較すると$v=c$ということになりますが、$v$はいくつでしょうか。真空の誘電率$\eps_0$と真空の透磁率は$\mu_0$はそれぞれ、$\eps_0 \simeq 8.854 × 10^{-12},\ \mu_0 \simeq 1.257 × 10^{-6}$です(単位省略)。さて早速代入していきましょう。
$$
c=\frac{1}{\sqrt{\eps_0\mu_0}}\simeq 2.998 \times 10^8
$$
みなさんいかがですか。最高ですよね、光速とものすごい近い値が導かれました。
前提知識がないとやや難しかったかもしれませんが、楽しめたでしょうか。実験の事実が理論できちんと説明できたときが、私が物理をしていて一番楽しい瞬間です。今回のこの内容もその1つです。これからも物理の興味深い内容も記事にしていきますので、ぜひフォローお願いします。