はじめに
高校範囲では極限が一番好き, と言っている身ですので, 高校範囲でできるいい感じの極限の公式(?)を2つ, 紹介しようと思います.
以下, は区間で微分可能で, は連続としておきます.
ひとつめ
ひとつめは, 次のような式です.
これは少し有名かもしれません. 昔, 京大で出題されたことがあるみたいです.
(証明)
と書けます. ここで, 平均値の定理より, なる実数が存在して,
が成り立ちます.
従って,
と書けます.
すると, これはを区間内の代表点としたRiemann和と見ることができるので,
となり, 証明が終了しました.
最後にをもう一度積分することになるというのがなかなか面白いですね.
例えば, に対し とすると以下のようになります.
ただし, 奇数項も収束するので, をに読み替えました.
この式でとしてみたりすると, ちょこっと面白いことになりますね.
ふたつめ
ふたつめは, 以下のような式です.
これは, そこまで有名ではないかもしれませんが, いろいろと面白い式が得られるので, 結構好きです.
イメージとしては, 区分求積の短冊和と本来の積分値の誤差の倍の極限値ということになります.
この誤差が大体, それぞれ底辺高さの三角形となるので, それらの面積の和が となるので, 感覚としては正しいかなということになります.
この, 大体三角形になる, を評価するのがなかなかに難しいので, 証明は少し複雑になってしまいます.
(証明)
まずは, 細かく区切ると誤差の三角形の斜辺にあたる部分が大体直線になることを言いたいので, の評価を考えてみます.
区間内でのの最小値, 最大値をそれぞれとおきます. 即ち, この内の実数に対して
が成り立ちます.
次に, を内の実数として, この不等式の両辺を と積分します. (これが上手いところです!あえて傾きから評価してそれを積分することで, 関数の値を上手くおさえることができます!)
すると,
となります.
これをさらに と積分することで,
とすることができます!
この不等式の両辺を, で足し合わせることで,
両辺にをかけて,
となります.
ここで, はどちらも内でのの値だったので, これらを代表点としたのRiemann和と見ることができます.
即ち,
となるので, はさみうちの原理より
を示すことができました.
[追記] これが実は, 「オイラーの和公式」を背景としていることに気が付きました!詳しくは
Wikipediaの記事
をご覧ください.
実は, これを用いると, いろいろと面白い式を導くことができます.
まずは, に対してとしてみると, 次のようになります.
これは何を表しているかというと, 特にが自然数のとき, 左辺のの部分は乗和になっています.
乗和は次の多項式で, 次の係数がであることは常識かと思いますが, (この係数は の極限であり, 極限値は単純な区分求積で求められます. ) そのひとつ下の, 次の係数が常にであることが, この式からわかるのです!
次に, としてみます. すると,
であり,
なので,
となります.
従って,
即ち
を得ます. これはなかなか面白いと思います. これとWallis積を使うと, Starlingの公式を高校範囲で導くことができます!
おわりに
今回もまた, 結構長くなってしまってすみません... 反省しています.
ここまで読んでくださった方, 本当にありがとうございました. やっぱり極限は面白いですね.
ところで, 今回紹介したつの式の収束値がどちらも等しいのは, なぜなのでしょうか? どなたか分かる方がいらっしゃったら, 教えていただきたいです.
それでは改めて, ありがとうございました.