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大学数学基礎解説
文献あり

Craigの絡繰とその相対化

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再帰的可算な理論と初等再帰的な理論が一致するというCraigの絡繰 (Craig's trick) とその算術的階層への一般化を紹介する。以下では言語に指数関数に対する関数記号が含まれていると仮定する。

算術的階層
  • Δ00 を有界論理式全体の集合とする。
  • Σ00:=Π00:=Δ00 とする。
  • Σn+10 を、ある φ(x)Πn0 に対して xφ(x) と表せる論理式の集合とする。
  • Πn+10 を、ある φ(x)Σn0 に対して xφ(x) と表せる論理式の集合とする。
定義可能性

集合XNνΓ-定義可能 (Γ-definable) であるとは、あるφΓ が存在しX={xNνNφ(x)}となることである。
関数fΓ-定義可能であるのはそのグラフがΓ-定義可能であることとし、理論TΓ-定義可能であるのはTに含まれる論理式のコード全体{φφT}Γ-定義可能であることとする。

一般化されたCraigの絡繰

任意のΣn+10-定義可能な理論Tに対し、あるΠn0-定義可能な理論Sが存在し、任意の論理式φに対しTφSφとなる。

まず再帰理論の基本的結果、空でない集合XΣn+10-定義可能であることとXはあるΠn0-定義可能関数の値域となることが同値になることに気をつける。今、理論Tが空だとするど自明に成立つので空でないとし、Πn0-定義可能な関数frng(f)={φφT}となるようなものを取る。また論理式φに対してφnφ0:=,φn+1:=φnφと定めて、理論SS:={φn+1f(n)=φ}とする。Sの定義からTφSφとなることは明らか。またnφからφnを返す関数、すなわちg(n,φ)=φnを満たす関数gは初等再帰的であることからx{φφS}(y<x)[x=g(y+1,f(y))]と同値であり、Πn0-定義可能である。

Craigの絡繰

任意の再帰的可算な理論Tに対し、ある初等再帰的な理論Sが存在し、任意の論理式φに対しTφSφとなる。

再帰的可算であることとΣ10-定義可能であることの同値性と初等再帰的であることとΠ00-定義可能であることの同値性による。後者の同値性は関数記号として指数関数を含んでいることによる。

参考文献

[1]
W. Craig, On axiomatizability within a system, The Journal of Symbolic Logic, 1953, 30–32
投稿日:20201112
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