$\zeta(3)$になるすごい級数がとある論文に書かれていたので, それについて書きたいと思います. それは以下のようなものです.
$$\begin{eqnarray}
\zeta(3)=\frac 12\sum_{0\lt n}\frac{(-1)^{n-1}(205n^2-160n+32)}{n^5\binom{2n}{n}^5}
\end{eqnarray}$$
これはやばいですね, なにがやばいかというと, まず, 二項係数が$5$乗になっているということです.
$$\begin{eqnarray}
\zeta(3)=\frac 52\sum_{0\lt n}\frac{(-1)^{n-1}}{n^3\binom{2n}n}
\end{eqnarray}$$という有名な公式がありますが, これは二項係数が分母についていますが, 二項係数は累乗になってないですね. そして, 二項係数の$2$乗ですら, そのような公式はほとんど見当たりません. (僕が知らないだけの可能性もありますね.) Gosperによる, 次のようなものもありますが, それは分母に$n$の累乗以外に$2n-1$というものがついてきてしまっています.
$$\begin{eqnarray}
\zeta(3)=\frac 14\sum_{0\lt n}\frac{30n-11}{(2n-1)n^3\binom{2n}n^2}
\end{eqnarray}$$さて, 分母に二項係数が掛かっているほど収束速度が大きいということです. 試しに$5$項まで足し合わせて$\zeta(3)$の真の値と比較してみましょう.
$$\begin{eqnarray}
\zeta(3)&=&1.2020569031595942853\dots\\
\frac 12\sum_{0\lt n\leq 5}\frac{(-1)^{n-1}(205n^2-160n+32)}{n^5\binom{2n}{n}^5}&=&\underline{1.202056903159594}9007\dots
\end{eqnarray}$$やばいですね. めっちゃ収束が速いです. これは実際に$\zeta(3)$の数値計算につかわれたりしたらしいですね. 証明にはWZ-methodというものをもちいます. これはコンピュータをつかうので, 基本的に人間がやるものではないです. いつかこういう二項係数が累乗になってる形の級数を扱える枠組みをつくりたいですね.
Tewodros Amdeberhan (Temple University), Doron Zeilberger, Hypergeometric Series Acceleration Via the WZ method, arXiv:math/9804121