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フラティニ論法(Frattini Argument)

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はじめに

こんにちはMakkyoExistsです。いやー今更ですけど数学って難しいですね。本当に何個も何十個も議論と知識を積んでいかないといけない気がします。終わりがありませんね。まぁそこが面白いんですけどね。

前置きはそれくらいにして、本日は有限群論では有名なFrattini論法について紹介したいと思います。名前に「論法」とついてはいますが普通に「定理」です。では見ていきましょう。主張は

Frattini論法

Gを群、NGの有限位数の正規部分群とする。このときPNのSylow p-部分群とすると
G=NG(P)N
が成り立つ。

という感じです。この定理は有限群論の議論をしていくうえででは「当たり前」として認識して話を進めることもあります。それくらいBasicな事実ということですね。あ、ちなみにNG(P)という記号はよろしいでしょうか?
NG(P):={gG|g1Pg=P}
という定義で、これはPG内の正規化群(normalizer of P in G)と呼ばれています。では見ていきましょう。

シローの定理(一部)

Frattini論法の証明にはシローの定理が一部必要になりますので、シロー部分群の定義とシローの定理を紹介したいと思います。

シロー部分群

Gを有限群とし、pを素数とする。またGの位数を
|G|=pnm
とする(mpと互いに素な自然数)。このとき、位数がpnである部分群をGシローp-部分群(Sylow p-subgroup of G)といい、GのSylow p-部分群全体の集合をSylp(G)と表す。

つまりSylow p-部分群とはGの位数を因数分解したとき, pの最高べきの部分群ということですね。Sylow群には大事な事実がたくさんあります。まず、任意の素数pに対して有限群GSylow p-部分群を必ず持つということです。これはSylow群の存在を保証するとても大切な事実です。

次にGSylow p-部分群はすべて共役という事実です。共役というのは大丈夫ですか? 2つの部分群H, Kに対し、g1Kg=Hとなるような元gGがとれるときHK共役(conjugate)と言います。つまりHKGのSylow p-部分群ならg1Kg=HとなるgGがいつでもとれるということですね。この2つの事実と、Sylow群の個数に付いての主張をまとめてシローの定理と呼ばれています。証明などもまた機会があれば書きたいと思います。

Frattini論法の証明

では、冒頭の定理

Frattini論法

Gを群、NGの有限位数の正規部分群とする。このときPNのSylow p-部分群とすると
G=NG(P)N
が成り立つ。

を証明してみましょう。PNのSylow p-部分群としているのでPNであることに注意してください。またGの部分群X, Gの任意の元gに対して以下より
Xg=g1Xg
と書きます。XgXの「g乗」ではないことにも注意してくださいね。(まぁそもそも「g乗」なんて定義されてないわけですが一応念のため…笑)

任意にgGをとる。NGの正規部分群であることとPNであることから
PgNg=N
がわかる。よってPgNの部分群であり、|Pg|=|P|なのでPgNのSylow p-部分群であることがわかる。またSylowの定理よりPPgNで共役になる。したがって
(Pg)n=P
となるようなnNがとれる(Sylowの定理をNに適用していることに注意)。つまりPgn=PなのでgnNG(P)である。よって
gNG(P)n1NG(P)N
となり、Gの任意の元gNG(P)Nに属することがわかった。つまりG=NG(P)Nが成り立つ。

さいごに

どうでしたか? 使っている定義が少ないせいか今回はすぐに終わりましたね。これは僕も学部生の頃最初の最初のゼミでやりました。懐かしいですね。群論の授業の演習問題としても出てきそうです。

はい、今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。いつもの通り誤植を見つけた方はコメントで教えて頂けると助かります。感想コメントもお待ちしております(反応してくれるというのは本当に嬉しいです!笑)

では、また!('-'*)

投稿日:20201113
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投稿者

音楽してます。数学科です。エースバーンが好きです。

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