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最大値・最小値の定理からロピタルの定理を示す

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初めに

最大値・最小値の定理をスタートとしてそこからロルの定理、コーシーの平均値の定理、そしてロピタルの定理という流れで示します。また、この記事の中では一般にa<bとします。

本題

では最初に最大値・最小値の定理を述べます。

最大値・最小値の定理

今回は次の定理を認めてこれからスタートします。

最大値・最小値の定理

実数値関数fと有界閉区間[a,b]について. f[a,b]上で連続であるなら, あるc,d[a,b]が存在して任意の実数x[a,b]について
f(c)f(x)f(d)が成立する.

噛み砕いていえば「連続である関数は有界閉区間で最大値も最小値も存在する。」というものですね。さて、次はロルの定理です。

ロルの定理

ロルの定理は次のような定理です。

ロルの定理

有界閉区間[a,b]上で連続でありしかも(a,b)で微分可能な関数fについて.
f(a)=f(b)c(a,b)[f(c)=0]が成立する.

c(a,b)[f(c)=0] とは「f(c)=0となるような、あるc(a,b)が存在する。」という意味です。
証明の前に次の補題を示します。

有界閉区間[a,b]において, 実数値関数fc[a,b]で最大値, または最小値を取り, しかもこの点で微分可能であるときf(c)=0が成立する.

最大値を取る場合について示す.
仮定よりx[a,b]についてf(x)f(c)が成立する. また, cにおいて微分可能であるのでca,bである. 従って(c,c+h)[a,b]となる正の実数hが存在して
f(c+h)f(c)h0
が成立するのでこれをh+0とすることにより
limh+0f(c+h)f(c)h=f(c)0
が成立する. そして(ch,c)[a,b]となるような正の実数hについて同様の議論により
limh0f(ch)f(c)h=f(c)0
が分かる. 以上よりf(c)=0が成立する. 最小値を取る場合も同様である.

ではロルの定理を示しましょう。

f(a)=f(b)=kと置く.
最大値・最小値の定理よりあるc[a,b]が存在してfはそこで最大値, または最小値を取る.
もしc(a,b)において最大値, または最小値を取るときこの点でfは微分可能である. 従って補題よりf(c)=0が成立する.
さもなくばabにおいて最大値と最小値の両方を取るので任意のx[a,b]について
k=f(a)f(x)f(b)=k
が成立する. 即ちff(x)=kなる定数関数であるのであるc(a,b)が存在してf(c)=0が成立する.
以上より示された.

これでロルの定理は示されました。次はコーシーの平均値の定理です。

コーシーの平均値の定理

平均値の定理といえば高校の数学lllで習う次のものをご存じの方も多いのではないでしょうか。

ラグランジュの平均値の定理

有界閉区間[a,b]上で連続でありしかも(a,b)で微分可能な関数fについて
c(a,b)[f(b)f(a)ba=f(c)]が成立する.

定理の名前の欄で分かってしまいますが、実はラグランジュの平均値の定理という名前が本来のこの定理の名前です。今回示すコーシーの平均値の定理はこれより一般的な次の定理です。

コーシーの平均値の定理

有界閉区間[a,b]上で連続でありしかも(a,b)で微分可能な関数f,gについて
c(a,b)[{f(b)f(a)}g(c)=f(c){g(b)g(a)}]が成立する. 特にg(a)g(b)かつg(c)0であるとき
c(a,b)[f(b)f(a)g(b)g(a)=f(c)g(c)]が成立する.

コーシーの平均値の定理においてg(x)=xとした場合がラグランジュの平均値の定理であるのでコーシーの平均値の定理はその拡張であると言えます。では、証明していきましょう。

h(x)={f(b)f(a)}{g(x)g(a)}{g(b)g(a)}{f(x)f(a)}と定義する. 仮定よりh[a,b]上で連続でありしかも(a,b)で微分可能である. また, 簡単な計算によりh(a)=h(b)=0であることも分かる. 従ってロルの定理より
c(a,b)[h(c)=0]が成立する. h(x)={f(b)f(a)}g(x){g(b)g(a)}f(x)であるので
c(a,b)[{f(b)f(a)}g(c)={g(b)g(a)}f(c)]が成立する. また, g(a)g(b)かつg(c)0であるとき
c(a,b)[f(b)f(a)g(b)g(a)=f(c)g(c)]が成立する.

これでコーシーの平均値の定理が示されました。次で最後、ロピタルの定理を示していきます。

ロピタルの定理

ロピタルの定理といえば「大学入試の最終手段」だとか「入試の裏ワザ」みたいなことを言われてると思っているんですが、そもそも皆正しく使えていないので所詮そんなもんなんだろうなぁと思ってます。では定理の内容を書きます。

ロピタルの定理

limxa+0f(x)=limxa+0g(x)=0であり, limxa+0f(x)g(x)が存在するときlimxa+0f(x)g(x)も存在して
limxa+0f(x)g(x)=limxa+0f(x)g(x)が成立する.

定理の中の「a+0」の部分を全て「a0」や「a」に置き換えても成立します。a0とした場合の証明もほぼ同様なので端折り、この二つの結果を合わせれば「a」とした場合になります。さて、証明しましょう。

f,gが存在し, limxa+0f(x)g(x)が存在するのでε1をある正の実数として, ある開区間(a,a+ε1)においてg(x)0であり, f,gは連続かつ微分可能である. さらにlimxa+0f(x)g(x)が存在するのでε2をある正の実数として(a,a+ε2)においてg(x)0である. ε=min(ε1,ε2)とすると(a,a+ε)においてg(x)0かつg(x)0であり,f,gは連続かつ微分可能である. また, f(a)=g(a)=0と定義する. そしてa<x<a+εとなるようにxを定める. するとf,g[a,x]上で連続でありしかも(a,x)において微分可能かつg(x)g(a)=g(x)0, t(a,x)に対してg(t)0であるのでコーシーの平均値の定理から
cx(a,x)[f(x)f(a)g(x)g(a)=f(cx)g(cx)]が成立する. f(a)=g(a)=0であるので
cx(a,x)[f(x)g(x)=f(cx)g(cx)]
となる. さて, この関係を保ったままxa+0とすることによりcxa+0となるので
limxa+0f(x)g(x)=limxa+0f(x)g(x)
が成立する.

終わりに

ロピタルの定理は確かに強力で使いやすい定理に見えますがその実、仮定がめんどくさかったりそもそも示すのがめんどくさかったりするのでとりあえず一回は示してみたらいいと思います。

投稿日:20201113
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