散在型単純群に興味を持って調べてみると, 軽い定義/性質が書いてあるものは見つかっても, 証明まで書いてあるものはあまり見当たらないです. (とくに日本語では.)
追記: 最近, 「散在型有限単純群」という本が共立出版から出されました. この記事に載ってること以上の情報が丁寧に載ってるので, 興味を持ったら読んでみるといいかもしれません
今回は次のことをself-containedに証明していきます.
先に参考文献について述べておきます.
この記事の大半の部分は"Twelve Sporadic Groups(Robert L. Jr. Griess)"を参考にしました. シローの定理+α程度でマシュー群, コンウェイ群について詳しく書かれています.(1,2章はわからなければ飛ばしてもなんとかなります)
参考文献2
のシリーズでは, 海外の数学系youtuberがマシュー群や符号/デザインについて概述されています. 符号とかになれてないなら先にこれをみるといいかも?
参考文献3
を証明の一部分の参考としています.
以下の文章にて, 例は全て後の証明にて使います.
以下にでてくるすべての集合は, 断りがなければ有限集合とする. (従って, 単に「群」というと有限群を指す. )
$G$が$\Omega$に作用しているとする. この作用が$k$重可移であるとは, 次の$2$条件を満たしていることを指す.
また, 作用が鋭$k$重可移であるとは, $k$重可移であり, かつ上の定義の$g$が一意に決まることを指す.
相異なる$a_1,a_2,\ldots a_k\in \Omega$をひとつ固定する. この下で, $G$が$k$重可移であることと,
「任意の相異なる$b_1,\ldots b_k\in\Omega$に対して, ある$g$が存在し, 任意の$i$に対し$gb_i=a_i$」は同値.
$G$が$\Omega$に作用しているとする. $\emptyset\neq B\subset \Omega$がブロックであるとは, 任意の$g\in G$に対し, $B\cap gB$が$\emptyset$か$B$であることを指す.
1点集合および$\Omega$を自明なブロックと呼ぶ.
作用が$2$重可移なら, ブロックは自明なものしか存在しない.
$G$が$\Omega$に作用しており, $G\rnormal N$とする. このとき, 任意の$N$の軌道はブロックである.
任意の$x\in \Omega$に対し, 軌道$Nx$がブロックであることを示す. $g\in G$を任意に取る. このとき, $gNx=(gNg^{-1})gx=Ngx$. よって, $gx\in Nx$なら$gNx=Nx$であり, $gx\not \in Nx$なら, $gNx\cap Nx=\emptyset$である.
この章では, $F=\field 2,\field 4$とする.
$x=(x_i)_i \in F^n$に対し, $\wt(x)$を$x_i\neq 0$となる$i$の個数と定める.
$F^n$の部分空間$V$を($q$元)(線形)符号と呼ぶ. この$n$を符号の長さ と呼ぶ.
符号$V$に対し, その最小重さ を$\min_{0\neq v\in V} \wt(v)$と定める.
符号$V$の長さが$n$, 最小重さが$w$, ($F$線形空間としての)次元が$d$のとき, $V$は$[n,d,w]$-符号であるという.
これのどこが符号なんだという人向けに軽く理由を書いときます(執筆者はCSに明るくないので, 話半分くらいで聞いてください):
簡単のため$F=\field 2$とします. $d$-bitの情報$v\in F^d$を通信で送ることを考えます. $v$をそのまま送ると, ノイズ等によって$v$の一部のbitが反転し, データが正しく伝わらない可能性があります.
そこで, $[n,d,w]$符号$V$および全単射$f:F^d\to V$を一つとります. $v$の代わりに$f(v)$を送れば, この$f(v)$には冗長性があるので, bit反転が多少起こってもそれを判定/訂正ができます. 具体的には$w-1$bitまでの反転を判定し, $\frac{w-1}{2}$bitまでの反転を訂正できます. これがなぜ「符号」という名前になっているかの説明です.
後で話すGolay符号は宇宙探査機ボイジャーの通信にも使われたらしいです.
以下, $\bar{\bullet}:F\mapsto F$を, $\bar{x}=x^2$と定める. $F=\field 2$なら, $\bar{x}=x$で, $F=\field 4$なら$\bar{\bullet}$は位数$2$の体自己同型.
$v=(v_i)_i,w=(w_i)_i \in F^n$に対し, 標準エルミート内積$(v,w)$を
$$
(v,w):=\sum_{i=1}^n v_i\overline{w_i}
$$
と定める.
線形空間$V\subset F^n$に対し, $V^{\perp}:=\{w\in F^n|\forall v\in V,(v,w)=0\}$と定める.
$x\neq 0$なら$x\bar{x}=1$に注意すると, $(v,v)=\#\wt(v)$となる.
次の定理は$F=\mathbb{C}$ではよく知られているが, 述べておく:
$V$を$F^n$の部分空間とする. このとき,
$\dim_F V^{\perp}=n- \dim_F V$.
$F_0:=\{x\in F| \overline{x}=x\}$と置く. $F$線形空間$V$に対し, $\dim_F V=[F:F_0]\dim_{F_0} V$である. よって, $(-,-)$が$F_0$双線形写像として非退化であることを示せばよい. 以下これを示す.
$0\neq v=(v_i)_i \in F^n$ を任意にとる. $v_i\neq 0$となる$i$を一つとる. このとき, $(v,e_i)=v_i\neq 0$. $v$の任意性より, $(-,-)$は非退化.
符号$V$が$V=V^{\perp}$を満たすとき, $V$を自己直交符号と呼ぶ.
$M_{24}$を定めるためには, $[24,8,12]$-$2$元符号である(2元)(拡張)Golay符号が大事になってくる. 今回は, $[6,4,3]$-$4$元符号であるHexacodeを経由してGolay符号を定義する.
$\bar{\bullet}:\field 4\to \field 4$を$x\mapsto x^2$と定める. $\omega\in \field 4\setminus \field 2$を一つとり, 固定する.
Hexacode$\mathcal{H}\subset \field 4^6$を, 次の$3$つのベクトルが生成する$\field 4$線形空間として定める.
\begin{gather}
(\omega,\overline{\omega},\overline{\omega},\omega,\overline{\omega},\omega)\\
(\overline{\omega},\omega,\omega,\overline{\omega},\overline{\omega},\omega)\\
(\overline{\omega},\omega,\overline{\omega},\omega,\omega,\overline{\omega})
\end{gather}
$\mathcal{H}$の元は, $(a,b,c,d,e,f)$の代わりに$(a,b|c,d|e,f)$と書かれることが多い. この記事でもこの記法に従う.
この記法に従うと, 上の生成元は$(\omega,\overline{\omega})$のかたまり$1$つと$(\overline{\omega},\omega)$のかたまり$2$つ, というパターンが見やすくなる.
$\mathcal{H}$は$[6,3,4]$自己直交符号.
定義8の生成元を, 上から$a,b,c$と置く.
まず, $\dim \H=3$を示す. $c\not\in \gen{a,b}$を示せばよい. これは, $a,b\in \{(v_1,v_2|v_3,v_4|v_5,v_6)|v_5=v_6\}\not\ni c$より従う.
次に, $\H$が自己直交符号であることを示す.
$((\omega,\overline{\omega}),(\omega,\overline{\omega}))=((\overline{\omega},\omega),(\overline{\omega},\omega))=2$, および$((\omega,\overline{\omega}),(\overline{\omega},\omega))=\omega^2+\overline{\omega}^2=-1$である. これを用いると, $(a,a)=2+2+2=6=0$, $(a,b)=-1-1+2=0$などと計算ができ, $\H\subset \H^{\perp}$がわかる.
これと命題2, および$\dim \H=3$を合わせると, $\H=\H^{\perp}$がわかる.
最後に, $\H$の最小重さが$4$であることを示す. 重さ$4$の元が$\H$に入っていることは下を参照.
$0\neq v \in \H$が$\wt(v)<4$を満たすとして矛盾を導く. $\field 4$において, $0=(v,v)=\wt(v)$. よって, $\wt(v)=2$.
$a,b,c$を縦に並べた$3\times 6$行列を$G$と置く. $\H$が自己直交符号であることから, $Gv=0$が成立する. ゆえに, $G$の$2$列をうまく抜き出すと線形従属になるが, このようなことは起こらないので矛盾.
あとで使うので, $\H$の元をいくつか挙げる.
ここで, $a,b,c$は定義8の生成元.
これから, Golay符号の自己同型として, $M_{24}$を定めるのですが, $M_{24}$を調べるために, $\H$の自己同型も知りたいです. 完全な決定はしないのですが, あとで使う写像をいくつか並べておきます.
次の写像で$\H$は(集合として)不変.
それぞれ, 生成元が$\H$に保たれることをみるとよい.
一つ目に関しては, 塊を$2$個同時にswapすれば, $(\omega,\bar{\omega})$が奇数個で, $(\bar{\omega},\omega)$が偶数個であることはかわらないのでok.
二つ目に関しても, 共役によって, $(\omega,\bar{\omega})$の塊が$2$個, $(\bar{\omega},\omega)$の塊が$1$個となる. 塊を$1$個だけswapすることで, $(\omega,\bar{\omega})$が奇数個, $(\bar{\omega},\omega)$が偶数個となるのでよい.
三つ目に関しては愚直に確かめるしかない.
$[24,8,12]$-$2$元符号であるGolay符号を作る.
また, この章以降では, $(v,w)=\sum_i v_iw_i$である.
以下, $\field 2^{\Omega}$と$P(\Omega)$を断らずにに同一視する.
つまり, $A,B\subset \Omega$に対し, $A+B$で$A$と$B$の対称差を表したり, 逆に$w\in \field 2^\Omega$ に対し, $\#w$で$\wt(w)$を表したりする.
$\Omega:=\{1,\ldots ,6\}\times \field 4 $, $K_i:=\{(i,\alpha)|\alpha \in \field 4\}$, $R_\alpha:=\{(i,\alpha)|i\in \{1,\ldots,6\}\}$
$K_{st}=K_s\cup K_t, K_{s,t,u}=K_{s,t}\cup K_u$などの略記を用いる.
$\Omega$を図示するのに, 次のような$4\times 6$のマス目を用いる.
$K_0$ | $K_1$ | $K_2$ | $K_3$ | $K_4$ | $K_5$ | |
---|---|---|---|---|---|---|
$R_0$ | ||||||
$R_1$ | ||||||
$R_{\omega}$ | $(2,\omega)$ | |||||
$R_{\bar{\omega}}$ |
$\field 2$線形空間$\B \subset \field 2^{\Omega}$を, $\B=\gen{K_{1,j}, K_1-R_0}(j=2,\ldots,6)$と定める.
$\field 2$線形写像$\L:\field 2^\Omega\to \field 4^6$を, $\L(e_{(i,\alpha)})=\alpha e_i$となるように定める.
Golay符号$\G\subset \field 2^\Omega$を, $\G=\B^{\perp} \cap \L^{-1}(\H)$と定める.
$w\in \G$なら, $w\in \B^{\perp}$なので, 次のどちらがが成立する.
前者のとき, $w$はoddであるといい,後者のときは$w$がevenであるとよぶ. これを$w$のparityと呼ぶ.
$(K_i,K_j)=4\delta_{i,j}=0, (K_{1,j},R_0)=1-1=0$より, $\B\subset \B^{\perp}$. また, $\L(K_i)=0+1+\omega+\overline{\omega}=0$, $\L(R_0)=6\times 0=0$. よって, $\B\subset \G$がわかる. とくに, $K_{i,j},\Omega \in \G$.
$(v_i)_i=v\in\H$をひとつとる. $\O_v=K_1+\{(i,v_i)|i=1,\cdots 6\}$と置くとこれは$\G$に属する.実際, $\L(\O_v)=v\in \H$であり, $(\O_v,K_1)=3=1,(\O_v,K_j)=1(j\neq 1)$となる. あとは, $(\O_v,R_0)=1$を言えばいいが, これは$\wt(v)$が偶数であることから従う.
他の例としては, $A=\{3,4,5,6\}\times \{0,1\}\in \field 2^\Omega$と置くと, $A\in \B$が確かめられ, $\L(A)=(0,0|1,1|1,1)\in \H$なので,$A\in \G$となる.
$\G$は$12$次元.
$\dim \B=6$はほとんど明らか. よって, 命題1より, $\dim \B^{\perp}=18$. もし, $\L:\B^{\perp} \to {\field 4}^6$が全射なら, $\dim G=\dim_{\field 2} (\B^{\perp}) - (\dim_{\field 2}(\field 4^6)-\dim_{\field 2} (\H))$ $=18-(12-6)=12$となり, 証明が完了する. 以下この全射性を証明する.
$v=(v_i)_i\in \field 4^6$を任意にとる. $S=\sum_{i=1}^6 e_{(i,v_i)}$ と置くと, $\L(S)=v$であり, $(S,K_i)=1$となる. もし, $(S,R_0)=1$なら$S\in \B^{\perp}$が言え, 証明が完結する. $(S,R_0)=0$なら, $S$の代わりに$S+K_1$を使えばよい.
$\G$は$[24,12,8]$符号.
あと示すべきは, $G$の最小重さが$8$であること. 重さ$8$の元の存在は定義10の後の例3より従う.
以下, $0\neq w\in \G$が$\wt(w)<8$を満たすと仮定し, 矛盾を導く. $w$のパリティで場合分けを行う.
特に, $\#(w\cap K_j)$はすべて奇数. $\wt(w)=\sum_j \#(w\cap K_j)$なので, 結局$\#(w\cap K_j)=1$が成立する.
よって, $\wt(\L(w))=6-\#(w\cap R_0)\equiv 1\pmod{2}$となるが, これは$\H$が自己直交符号符号であることに矛盾する.
特に, $\#(w\cap K_j)$はすべて偶数. よって, $\wt(w)\geq 2\cdot \wt(\L(w))$となり, $3\geq \wt(\L(w))$. $\H$は$[6,3,4]$-符号だったので, $\L(w)=0$が成立する.
任意に$j$をとる. $\#(w\cap K_j)$が偶数であり, $\L(w)=0$が成立することから, $w\cap K_j=\emptyset,\{j\}\times \field 4$のどちらかが成立する.
$j$は任意だったので, $w$は$K_j$のいくつかの和. $\wt(w)<6$より, $w=K_j$とかけるが, これは$(w,R_0)=0$に矛盾.
相異なる$w,w'\in \field 2^\Omega$が$\wt(w),\wt(w')\leq 4$を満たし, かつ$w\in w'+\G$と仮定する. このとき, $\wt(w)=\wt(w')=4$かつ$\#(w\cap w')=0$.
$0\neq u=w+w'\in \G$と置くと, 上の定理より, $8\leq \wt(u)=\wt(w)+\wt(w')-2\wt(w\cap w')\leq 4+4=8$. 等号成立をみて, $\wt(w)=\wt(w')=4$かつ$\#(w\cap w')=0$が従う.
$\Omega$の$4$元集合の$6$つ組$K'=K'_1,K'_2,\ldots K'_6$で, $\Omega=\cup_i K'_i$,および任意の$i,j$に対し$K'_i \cup K'_j \in \G(i,j=1,\ldots 6)$を満たすものをsextetと呼ぶ.
$\field 2^\Omega/\G$の代表元として, 重さが$4$以下の元からなるものが取れる.
また, $4$元集合$K'\subset \Omega$を任意にとると, sextet$K'=K'_1,K'_2,\ldots K'_6$が(順序の入れ替えを除き)一意に存在する. ゆえに, sextetは, 順序の入れ替えを除き$\frac{1}{6}\binom{24}{4}=\frac{23\cdot 22\cdot 21}{6}=23\cdot 11\cdot 7$個存在する.
$C:=\{w\in\field 2^\Omega| \wt(w)\leq 3\}$, $D:=\{w\in \field 2^\Omega|\wt(w)=4\}$と置き, $p_1:C\to \field 2^\Omega/\G, p_2:D\to \field 2^\Omega/\G$を自然な射影とする. 上の補題より, $p_1$は単射. よって, $\#p_1(C)=\#C$.
$w\in D$を任意にとる. $p_2^{-1}({p_2(w)})=\{w_1=w,w_2\cdots w_n\}$と置くと, 上の補題より, 相異なる$i,j$に対し, $w_i\cap w_j=\emptyset$. 特に, $n\leq \frac{24}{4}=6$. よって, $\#p_2(D)\geq\frac{\#D}{6}$.
上の補題より, $p_1(C)\cap p_2(D)=\emptyset$なので, $\#(\field 2^\Omega/\G)\geq \#p_1(C)+\#p_2(D)\geq \#C+\frac{\#D}{6}$.
$\#(\field 2^\Omega/\G)=\frac{2^{24}}{2^{12}}=2^{12}=4096 $であり, $\#C+\frac{\#D}{6}=\binom{24}{0}+\binom{24}{1}+\binom{24}{2}+\binom{24}{3}+\frac{1}{6}\binom{24}{4}$ $=1+24+12\cdot 23+4\cdot 23\cdot 22 +23\cdot 11\cdot 7$ $=25+276+2024+1771=301+3795=4096$. よって, すべての等号が成立し, 特に$\field 2^\Omega/\G=p_1(C)\cup p_2(C)$であり, 任意の$w\in D$に対し, $\#p_2^{-1}({p_2(w)})=6$. これからどちらの主張も従う. ($K$を含むsextetは$p_2^{-1}(p_2(K))$と一意的にかける)
$\#\O=8$を満たす$\O\in \G$をoctedと呼ぶ.
octed全体は$(24,8,5)$シュタイナーシステムをなす. すなわち, 任意の$5$元集合$S$に対し, octed$\O$が一意に存在し, $S\subset \O$.
まず一意性を示す. $S$を$5$元集合, $\O,\O'\in \G$を$S$を含む$8$元集合とする. この時, $\wt(\O+\O')=\wt(\O)+\wt(\O')-2\wt(\O\cap \O')\leq 8+8-2\times 5=6$. $\G$の最小重さは$8$なので, $\O+\O'=0$. よって, $\O=\O'$.
次に存在を示す. $S$を任意の$5$元集合とする. $s\in S$を適当にとり, $K'=S\setminus\{s\}$と置く. すると, 上の命題7を用いて, sextet$K'_1=K',K'_2\ldots K'_6$が取れる. $s\in K'_j$となる$j$をとり, $\O=K'_1+K'_j$と置けば, 定理の条件がすべて満たされる.
一意性から, 次のことが分かる:
相異なるocted$\O,\O'$に対し, $\#(\O\cap \O')\leq 4$.
以下, $\#A$としてありうる自然数を求めていく.
$A\in\G$なら$\#A\neq 10,14$.
$A\in\G $かつ$\#A=10$とし, 矛盾を示す. $4$元集合$K'\subset A$を適当にとる. 命題6より, sextet$K'=K'_1,K'_2,\ldots K'_6$が取れる. $\sum_j \#(A\cap K'_j)=10$より, $\#(A\cap K'_j)\geq 2$となる$j\neq 1$が存在する. この$j$に対し, $B=A+(K'_1+K'_j)$と置くと, $\#B\leq 10+8-2\cdot 6=6$となる. これは$\G$の最小重さが$8$であることに矛盾.
$\#A\neq 14$なら, $\#(A+\Omega)=10$より矛盾.
$A\in \G$はoctedのいくつかの和で書ける.
$A=\emptyset$なら自明. $A\neq \emptyset$とする. このとき, $\#A\leq 8$なので, $5$元集合$F\subset A$が取れる. $F$を含むoctedを$\O$と置く.
すると, $\#(A+\O)\leq \#A-2$となる. よって, 帰納法の仮定より, $A+\O$, 従って, $A$はoctedの和で書ける.
$\G$は自己直交符号.
上の補題, および$\dim \G=12$より, 任意の相異なるocted$\O,\O'$に対し, $\#(\O \cap\O')$が偶数であることを示せばよい. 定理$8$直後の注意より, $\#(\O\cap\O')=1,3 $を否定すればよい. 背理法を用いる. このとき, $\#(\O+\O')=10,14$で上に矛盾.
$A\in\G$なら, $\#A$としてありうる自然数は$0,8,12,16,24$.
$\#A=8,16$となる$A\in\G$はそれぞれ$3\cdot 11\cdot 253=759$個.
$\#A=12$となる$A\in\G$は$2576$個.
まず前半を示す. $\G$が自己直交符号なので, $\#A$は偶数. 上の補題, および$\G$の最小重さが$8$であることから$\#A=18,20,22$を否定すればよい. このとき$\#(A+\Omega)=2,4,6$となるのでやはり矛盾.
$X=\{(F,\O)\mid \#F=5,F\subset \O,\O\text{はocted}\}$と置く. $F$が決まれば,$\O$がuniqueに決まるので, $\#X=\binom{24}{5}$. 一方, $\O$を決めると$F$は$\binom{8}{5}$通りある. よって, octedは$\frac{\binom{24}{5}}{\binom{8}{5}}$個ある.
$$
\frac{\binom{24}{5}}{\binom{8}{5}}=\frac{24\cdot 23\cdot 22\cdot 21\cdot 20}{8\cdot 7\cdot 6\cdot 5\cdot 4}=\frac{24\cdot 23\cdot 22\cdot 21}{8\cdot 7\cdot 6}=23\cdot11\cdot 3=759.
$$
$\#A=16$なら, $\#(A+\Omega)=8$なので, $\#A=16$となる$A\in\G$も$759$個.
$\#A=12$となる$A\in\G$は$2^{12}-2\times(1+759)=4096-1520=2576$個.
$M_{24}$を$\G$の自己同型群として定める. すなわち,
$M_{24}:=\{f\in S_\Omega| \forall A\in \G , f(A)\in \G\}$.
$k=1,2,3$に対し, $M_{24-k}$を$M_{24}$の$k$点の固定化群と定める.
あとで使う$M_{24}$の元を挙げていく.
まず, $v=(v_i)_i\in \H$に対して, 次のように$r_v\in S_\Omega$を定められる:
$r_v(i,\alpha)=(i,\alpha+v_i) $
任意の$A\in \G$に対し, $r_v(A)\in \G$となることを示す. $A$のparityがevenなら$\L(r_v(A))=\L(A)$, oddなら$\L(r_v(A))=\L(A)+v$となるので, どっちにせよ$r_v(A)\in \L^{-1}(\H)$. あとは$r_v(A)\in \B^{\perp}$を言えばよい.
$\G$は自己直交符号なので, $(A,K_{1,j})=0,(A,\O_v)=0$. ここで, $\O_v=K_1+\{(i,v_i)\}\in \G$(例3参照). これを$r_v$で送って, $(r_v(A),K_{1,j})=(r_v(A),K_1+R_0)=0$. よって, $r_v\in M_{24}$がわかる.
また, 例2であげた$\H$の自己同型に対応して, $M_{24}$の元が決まる. 議論はほとんど同じなので, ここでは$\phi: (a,b|c,d|e,f)\mapsto (a,\bar{\omega} f|\omega b,\bar{\omega}c|d,\omega e)$に対して説明する.
$\sigma=(23456)\in S_6$と置く. $f\in S_{\Omega}$を次のように定める:
$(\alpha,i)\in \Omega$を任意にとる. 上の$\alpha$の形から, $\phi(\alpha e_i)=\beta e_j$,ただし$j=\sigma(i)$と一意的に書ける. ここで, $f(\alpha,i)=(\beta,j)$とする.
この$f$が$M_{24}$に属することは, 上とほとんど同様に示せる. ($\L(f(A))=\phi(\L(A))$, $\phi(K_{i,j})=K_{\sigma(i),\sigma(j)}$, $\phi(R_0)=R_0$などを用いる)
$f\in M_{24}$が, $f(K_i)=K_i$であり, $(1,0),(1,1),(2,0),(3,0)$を不変にすると仮定する. このとき, $f=\mathrm{id}$.
$\O_1:=K_1+R_0=\{1\} \times \{1,\omega,\bar{\omega}\}\cup \{2,3,4,5,6\}\times \{0\}\in \G$と置く. $(1,1),(1,\omega),(1,\bar{\omega}),(2,0),(3,0)\in f(\O_1)\in\G$より, $f(\O_1)=\O_1$. これと$f(K_i)=K_i$を合わせ, $f$は$(4,0),(5,0)$を不変にする.
$\O_2:=\{1,2,3,4\}\times \{0,1\}\in\G$と置く. $(1,0),(1,1),(2,0),(2,1),(3,0)\in f(\O_2)\in \G$より, 同様にして, $f$は$(3,1),(4,1)$を不変にする.
$\O_3:=\{1,2,5,6\}\times \{0,1\}\in\G$と置く. 上と同様にして, $f$は$(5,1),(6,1)$を不変にする.
$\O_4:=\{(2,0),(2,1),(4,0),(4,1),(5,0),(5,\omega),(6,0),(6,\bar{\omega})\}$とする. $\L(\O_4)=(0,1|0,1|\omega,\bar{\omega})$などより, $\O_4\in \G$. 上と同様にして, $f$は$(5,\omega),(6,\bar{\omega})$を不変にする.
$\O_5:=\{3,4,5,6\}\times \{0,\omega\}\in\G$に対して同様の議論をし, $f$は$(3,\omega),(4,\omega),(6,\omega)$を不変にする.
$\O_6:=\{1,2,5,6\}\times\{0,\omega\}\in \G$に対して同様の議論をし, $f$は$(1,\omega),(2,\omega)$を不変にする.
よって, $f$は$\{1,2,3,4,5,6\}\times \{0,1,\omega\}$のすべての元を不変にする. これと$f(K_i)=K_i$を合わせて, $f=\mathrm{id}_\Omega$.
次の命題が$M_{24}$の$5$重推移性の証明のkeyです. 気持ちとしては, 列だけそろっていて, 行がばらばらな$4\times 6$の盤面を与えられ, そこから「この$5$元をふくむoctedは?」という質問を繰り返し, 盤面の数字を確定させていく. 競プロをやってた人はintaractive問題だと思えばいいかもしれない. ある意味で上の命題の逆を示している.
sextet$L_1,L_2,\ldots L_6 \subset \Omega$, および$a,d\in L_1(a\neq d),b\in L_2,c\in L_3$が与えられたとする.
このとき, ある$f\in M_{24}$が存在し, $f(L_i)=K_i(i=1,\cdots ,6)$かつ$f(a)=(1,0),f(d)=(1,1),f(b)=(2,1),f(c)=(3,1)$.
(ここが, この記事の山場なので, 頑張ってください)
任意の$i,j$に対し, $L_i+L_j\in \G$. $\G$が自己直交符号なことと合わせ, 任意のocted$\O$に対して$\#(\O \cap (L_i+L_j))$は偶数. よって, $\O\cap L_i$の偶奇は$i$によらない. この事実は以下何度も使うので注意せよ.
以下, $s_{i,\alpha}\in L_i(i=1,\ldots 6)$を徐々に定めていく. 最終的には, $\iota(s_{i,\alpha})=\alpha$と定め, この$\iota$が条件を満たすことを示す.
(この先の議論はお手元に4*6のマス目を書いてやることをおススメします. )
$(L_1\setminus \{a\})\cup \{b\}\cup \{c\}$を含むocted$\O_1$を取る. 定理7の後の注意より, $\#(\O_1\cap (L_1+L_2))\leq 4$.
ゆえに, $\O_1\cap (L_1+L_2)= (L_1\setminus \{a\})\cup \{b\}$.
同様にして, $\O_1\cap (L_1+L_3)= (L_1\setminus \{a\})\cup \{c\}$.
上の注意から, $\O_1\cap L_j(j=4,5,6)$も奇数. $\#\O_1=8$に注すると, $\#(\O_1\cap L_j)=1(j=2,3,4,5,6)$.
$s_{1,0}=a$とし, $s_{j,0}(j=2,3,4,5,6)$を$\O_1\cap L_j=\{s_{j,0}\}$となるように定める.
$s_{1,1}=d$とする. $\O_2$を, $F_2:=\{s_{1,1},s_{1,0},s_{2,0},s_{3,0},s_{4,0}\}$を含むoctedとして定める. 上の議論と同様に$\O_2 \cap \O_1 = \{s_{1,0},s_{2,0},s_{3,0},s_{4,0}\}$. 特に, $\#(\O_2\cap L_1)=2$となるので, $\#(\O_2\cap L_j)$は偶数. $\#\O_2=8$と合わせ, $\#(\O_2\cap L_j)=2(j=1,2,3,4)$とならざるえない.
$s_{j,1}(j=2,3,4)$を, $\O_2\cap L_j=\{s_{j,0},s_{j,1}\}$となるように定める. 定義より, $\O_2=\{s_{1,0},s_{1,1},s_{2,0},s_{2,1},s_{3,0},s_{3,1},s_{4,0},s_{4,1}\}$
$\O_3$を, $F_3:=\{s_{1,0},s_{1,1},s_{2,0},s_{5,0},s_{6,0}\}$を含むoctedとして定める. 上と全く同様にして, $\O_3\cap L_j=2(j=1,2,5,6)$が成立する. $s_{j,1}(j=5,6)$を, $\O_3\cap L_j=\{s_{j,0},s_{j,1}\}$となるように定める. $\#(\O_3\cap \O_2)$は偶数なので, $\O_3\cap L_2=\{s_{2,0},s_{2,1}\}$となる. よって, $\O_3=\{s_{1,0},s_{1,1},s_{2,0},s_{2,1},s_{5,0},s_{5,1},s_{6,0},s_{6,1}\}$.
$\O_4$を, $F_4:=\{s_{2,0},s_{2,1},s_{4,0},s_{5,0},s_{6,0}\}$を含むoctedとして定める. $\G\ni\O_1 + (L_1+L_2)=\{s_{j,0}|j=1,\cdots ,6\}+ L_2$である. これを$\O_1$の代わりに使うことで, 上と同様な議論ができ, $\#(\O_4\cap L_j)=2(j=2,4,5,6)$が成立する. $\O_4\cap \O_2$が偶数であることから, $\O_4\cap L_4=\{s_{4,0},s_{4,1}\} $. $s_{5,\omega}, s_{6,\bar{\omega}}$を, $\O_4\cap L_5=\{s_{5,0},s_{5,\omega}\}$, $\O_4\cap L_6=\{s_{6,0},s_{6,\bar{\omega}} \}$となるようにとる. $\#(\O_4\cap \O_3)\leq 4$より, $\O_4\cap \O_3=\{s_{2,0},s_{2,1},s_{5,0},s_{6,0}\}$なので, $s_{5,\omega}\neq s_{5,1}$, $s_{6,\bar{\omega}}\ne s_{6,1}$となる. 定義より, $\O_4=\{s_{2,0},s_{2,1},s_{4,0},s_{4,1},s_{5,0},s_{5,\omega},s_{6,0},s_{6,\bar{\omega}}\}$.
$\O_5$を, $\{s_{3,0},s_{4,0},s_{5,0},s_{5,\omega},s_{6,0}\}$を含むoctedとして定める. $\G\ni \O_1+(L_1+L_5)=\{s_{j,0}|j=1,\cdots ,6\}+ L_2$である. これを$\O_1$の代わりに使い, 同様にして, $\#(\O_5\cap L_j)=2(j=3,4,5,6)$が成立する. $s_{j,\omega}(j=3,4,6)$を,$\O_5\cap L_j=\{s_{j,0},s_{j,\omega}\}$となるように定める. $\G\ni \O_2+\O_3=\{s_{3,0},s_{3,1},s_{4,0},s_{4,1},s_{5,0},s_{5,1},s_{6,0},s_{6,1}\} $なので, $\#(\O_5\cap (\O_2+\O_3))\leq 4$. よって, $s_{j,\omega}\neq s_{j,1}(j=3,4,6)$が分かる. 同様に, $\#(\O_5\cap \O_4)\leq 4$より, $s_{5,\omega}\neq s_{5,\bar{\omega}}$が従う. 定義より, $\O_5=\{s_{3,0},s_{3,\omega},s_{4,0},s_{4,\omega},s_{5,0},s_{5,\omega},s_{6,0},s_{6,\omega}\}$.
$\O_6$を, $\{s_{1,0},s_{2,0},s_{5,0},s_{5,\omega},s_{6,0}\}$を含むoctadとして定める. 上と全く同様に議論をすることで, $s_{1,\omega}\ni L_1,s_{2,\omega}\ni L_2,s'_{6,\omega}\ni L_3$で, $s_{1,\omega}\neq s_{1,1},s_{2,\omega}\neq s_{2,1}$かつ$\O_6=\{s_{1,0},s_{1,\omega},s_{2,0},s_{2,\omega},s_{5,\omega},s_{6,0},s'_{6,\omega}\}$を満たすものが取れる(ので取る).$\#(\O_5\cap \O_6)$ が偶数であることから, $s_{6,\omega}=s'_{6,\omega}$.
$s_{i,\bar{\omega}}(j=1,2,3,4,6)$を$L_j=\{s_{j,0},s_{j,1},s_{j,\omega},s_{j,\bar{\omega}}\}$となるように定める.
これで$s_{i,\alpha}$はすべて定まったが, 最後にもう一つoctadが必要となる. $\O_7$を$\{s_{2,0},s_{2,\omega},s_{4,0},s_{5,0},s_{6,0}\}$を含むoctadとして定める. 上と同様にして, $\#(\O_7\cap L_j)=2(j=2,4,5,6)$. $\#(\O_7\cap \O_6)$が偶数であることから, $\O_7\cap L_4=\{s_{4,0},s_{4,\omega}\}$. $\#(\O_7\cap \O_4)\leq 4$より, 特に$s_{5,\omega},s_{6,\bar{\omega}}\not\in\O_7$. $\#(\O_7\cap \O_5)\leq 4$より, $s_{6,\omega}\not\in\O_7$. よって, $\O_7\cap L_6=\{s_{6,0},s_{6,1}\}$. よって, $\#(\O_7\cap \O_3)\leq 4$より, $s_{5,1} \not\in \O_7$. よって,$\O_7\cap L_5=\{s_{5,0},s_{5,\bar{\omega}}\}$となり, $\O_7=\{s_{2,0},s_{2,\omega},s_{4,0},s_{4,\omega},s_{5,\bar{\omega}},s_{6,0},s_{6,1}\}$.
(ここまでお疲れ様です)
さて, 前の宣言通り, $\iota(s_{i,\alpha})=\alpha$と定義し, $f\in S_{\Omega}$を$f(s_{\alpha,i})=(\alpha,i)$となるように定める. このとき, 定義より$f(L_i)=K_i$かつ$f(1,0)=a,f(1,1)=d,f(2,0)=b,f(2,1)=c$となる. よって, あとは$f(\G)=\G$を示せばよい.
まず, $f(\G)\supset \B^{\perp}$を示す.
$A\in \G$を任意にとる. $\G$が自己直交符号であることから, $(A,L_i+L_j)=(A,\O_1)=0$. これを$f$で送って, $(f(A),K_i+K_j)=(A,K_i+R_0)=0$. これは$A\in \B^{\perp}$を示す.
次に, $\B \subset f(\G)$を示す. これは, $f(\G)\ni f(\O_1)=R_0+K_1$, および, $f(\G)\ni f(L_i+L_j)=K_i+K_j $より従う.
最後に, $\L(f(\G))\supset \H$を示す. これを示せば, $\L(\B)=0$なので, 次元定理より$\dim_{\field 2} \L(f(\G)) \geq \dim f(\G) - \dim \B =6$. よって, $f(\G) \subset \L^{-1}(\H)$. $f(\G)\subset \B^{\perp}$と合わせて, 証明が完了する.
具体的に$L(f(\O_i))$を見ていく. $i=2$から順に,
となる. 例1より, このベクトルはすべて$\H$に属する. これらが$\H$を$\field 2$ベクトル空間として生成すればよい. $v_5+v_6=(\omega,\omega|\omega,\omega|0,0)=\omega v_3$なので, 結局$v_2,v_3,v_4$が$\field 4$ベクトル空間として$\H$を生成すればよい. これはこの三本のベクトルが線形独立であることから従う.
$\#M_{24}=48\cdot 20 \cdot 21\cdot 22\cdot 23\cdot 24$.
上の2つのpropより, $\#M_{24}$はsextet$L_1\ldots L_6$および$a,d\in L_1,b\in L_2,c\in L_3(a\neq d)$の組の個数と等しい. よって,
$$
\#M_{24}=1771\cdot 6! \cdot 4^3\cdot 3=(7\cdot 11\cdot 23)(2^3\cdot 3\cdot 5)(3\cdot 2^6)=2^{10}3^35^17^1{11}^123^1
$$
$$
48\cdot 20 \cdot 21\cdot 22\cdot 23\cdot 24=(2^4\cdot 3)(2^2 \cdot 5)(3\cdot 7)(2\cdot 11)23(2^3\cdot 3)=2^{4+2+1+3}3^35^17^1{11}^123^1
$$
よりよい.
$M_{24}$の$\Omega$への自然な作用は$5$重可移.
任意の相異なる$v_1,v_2,v_3,v_4,v_5\in \Omega$に対し, ある$g\in M_{24}$が存在し, $gv_1=(1,0),gv_2=(1,1),gv_3=(1,\omega),gv_4=(1,\bar{\omega})$を満たすことを示す.
$L_1=\{v_1,v_2,v_3,v_4\}$と置く. 命題7より, sextet$L_1,\ldots L_6$が取れる. 必要なら入れ替えて$v_5\in L_2$としてよい.
上の命題より, $f\in S_{\Omega}$で, $f(L_i)=K_i,f(v_1)=(1,0),f(v_2)=(1,1)$となるものが取れる. よって, 以下$L_i=K_i$, $v_1=(1,0),v_2=(1,0)$として示す.
$\H$の自己同型$(a,b|c,d|e,f)\mapsto(\overline{a},\overline{b}|\overline{c},\overline{d}|\overline{f},\overline{e}) $に対応した$M_{24}$の元を$g$と置く(例2,4を参照). $g$は$K_i$を(集合として)変えず, さらに$g(1,\omega)=(1,\bar{\omega}),g(1,\bar{\omega})=(1,\omega)$を満たす. ゆえに, 必要なら$g$をかけて$v_3=(1,\omega),v_4=(1,\bar{\omega})$とできる.
$v_5=(2,\alpha)$とする. $v=\alpha(0,1|0,1|\omega,\bar{\omega})\in \H$の加算に対応する$M_{24}$の準同型を$r_v$とする. (例4参照). このとき, $r_v$は$v_1,v_2,v_3,v_4$を変えず, さらに$r_v(v_5)=(2,0)$となる. これが示したいことだった.
$M_{22},M_{23},M_{24}$の単純性を, この記事では下から示していく. そのために必要になるのが表題の同型である.
$F:=\{(1,1),(1,\omega),(1,\bar{\omega})\}\subset \Omega$,$\Omega'=\Omega\setminus F$と置く.
今回は$M_{21}=\{g\in M_{24}|\forall x\in F, gx=x\}$とみなす.
次のように$\Omega'$と$\P^2\field 4$を対応づけさせる.
$K_1$ | $K_2$ | $K_3$ | $K_4$ | $K_5$ | $K_6$ | |
---|---|---|---|---|---|---|
$R_0$ | $[0:0:1]$ | $[0:1:0]$ | $(0,0)$ | $(1,0)$ | $(\omega,0)$ | $(\bar{\omega},0)$ |
$R_1$ | I | $[0:1:1]$ | $(0,1)$ | $(1,1)$ | $(\omega,1)$ | $(\bar{\omega},1)$ |
$R_{\omega}$ | II | $[0:1:\omega]$ | $(0,\omega)$ | $(1,\omega)$ | $(\omega,\omega)$ | $(\bar{\omega},\omega)$ |
$R_{\bar{\omega}}$ | III | $[0:1:\bar{\omega}]$ | $(0,\bar{\omega})$ | $(1,\bar{\omega})$ | $(\omega,\bar{\omega})$ | $(\bar{\omega},\bar{\omega})$ |
ここで, $(a,b)$は非同次座標. すなわち, $(a,b)=[1,a,b]$.
このラベリングの下で, 次のような対応が存在する.
$F$を含む$8$元集合$\O\subset \Omega$に対し, $\O$がoctedであることと, $\O\setminus F$が$\P^2\field 4$で直線となることは同値.
まず, 個数の一致を示す. $\P^2\field 4$の直線は$\frac{1}{3}(4^3-1)=21$個. octedは$759$個あり, そのうち$F$を含むものは$759\times\binom{8}{3}\times\binom{24}{3}^{-1}=(3\cdot 11\cdot 23)\times56\times(4\cdot 22\cdot 23)^{-1}=21$個.
よって, 任意の$\P^2\field 4$の直線$L$に対し, $L\cup F$がoctedであることを示せばよい.
このとき, $L=\{[0:0:1]\}\cup K_j$と書ける. よって, $L\cup F=K_i\cup K_j\in \O$.
このとき, $a,b\in \field 4$を用いて, $L=\{[0:1:a]\}\cup \{(x,ax+b)|x\in\field 4\}$と書ける. $L\cup F\in \O$を順に確かめよう.
まず, $L\cup F \in \B^{\perp}$を示そう. $(L\cup F,K_1)=3=1$, $(L\cup F, K_j)=1(j\neq 1)$より, $(L\cup F,K_{i,j})=0$. また, $a=b=0$のとき, $\#((L\cup F)\cap R_0)=5$, それ以外のとき, $\#((L\cup F)\cap R_0)=1$となる. よって, どちらの場合も$L\cup F \in \B^{\perp}$が示された.
最後に$\L(L\cup F)\in \H$を示す. これは, $\L(L\cup F)=(1+\omega+\bar{\omega},a|b,a+b|\omega a+b,\bar{\omega}a+b)$ $=a(0,1|0,1|\omega,\bar{\omega})+b(0,0|1,1|1,1)$と例1よりわかる.
$\F$を有限体とし, $\P^2\F$上の全単射$f$が直線を保つとする. このとき, $f\in \PGGL(3,\F)$. すなわち, $F$の自己同型$\alpha$と$A\in \PGL(3,\F)$が存在し, $f=\alpha A$.
$f$が条件を満たす全単射とする. このとき,$\PGL(2,\F)$の$2$重可移性より, $f([0:0:1])=A[0:0:1]$および$f([0:1:0])=A[0:1:0]$を満たす$A\in \PGL(3,\F)$がとれる. よって, $f$を$A^{-1}f$でとりかえ, $f([0:0:1])=[0:0:1]$,$f([0:1:0])=[0:1:0]$としてよい.
$[1:0:0]$は$[0:0:1]$と$[0:1:0]$を結ぶ直線上に乗っていないので, $f[1:0:0]$も$f([0:0:1])=[0:0:1]$と$f([0:1:0])=[0:1:0]$を結ぶ直線上に乗っていない. よって, $f([1:0:0])=[1:a:b]$と書ける. $f$を$(1-aE_{2,1}-bE_{3,1})f$でとりかえ, (上の$2$条件を満たしつつ,)$f([1:0:0])=[1:0:0]$としてよい.
$[1:0:1]$は$[0:0:1]$と$[1:0:0]$を結ぶ直線上に乗っているので, 上と同じ理由で, $f([1:0:1])=[1:0:a]$と書ける. よって,$f$を$\diag(1,1,a^{-1})f$で取り替えて, (上の$3$条件を満たしつつ,)$f([1:0:1])=[1:0:1]$とできる.
同様にして, $f([1:1:0])=[1:1:0]$とできる. このとき, $f$が$\F$の自己同型から来ていることを示せばよい. 以下これを示す.
$\F$上の全単射$\phi,\psi$を, $f([1:0:y])=f([1:0:\psi(y)]),f([1:x:0])=[1:\phi(x):0]$となるように定める. 上の取り換えより, $\phi(1)=\psi(1)=1$. このとき, $[1:x:y]$は「$[1:x:0]$と$[0:0:1]$を結ぶ直線」と, 「$[1:0:y]$と$[0:1:0]$を結ぶ直線」の交点なので, $f([1:x:y])$ は「$[1:\phi(x):0]$と$[0:0:1]$を結ぶ直線」と, 「$[1:0:\psi(y)]$と$[0:1:0]$を結ぶ直線」の交点となる. よって, $f([1:x:y])=[1:\phi(x):\psi(y)]$.
任意の$x,y\in \F^{\times}$に対し, $(0,0)$,$(1,y)$,$(x,xy)$が共線なので, $(0,0)$, $(1,\psi(y))$,$(\phi(x),\psi(xy))$も共線. よって, $\psi(y)\phi(x)=\psi(xy)$. 座標を入れ替え, $\phi(x)\psi(y)=\phi(xy)$も成立する. よって, $\phi=\psi$で, $\phi$は$F^{\times}$の群同型. $x^2=1\iff x=\pm 1$なので, $\phi(1)=1$と合わせ, $\phi(-1)=-1$.
任意の$x,y\in \F^{\times} $に対して, $x+y\neq 0$なら, $(x+y,0),(x,y),(0,x+y)$は共線. よって, 上と同様にして, $\phi(x)+\phi(y)=\phi(x+y)$. $x$か$y$のどちらかが$0$のときの成立は$\phi(0)=0$より従う. $x=-y$のときは, $\phi(-x)=\phi(-1)\phi(x)=-\phi(x)$となるので, やはりよい.
よって, $\phi$は体同型となる. $[0:1:a]$は, 無限遠直線と,「$(0,0)$と$(1,a)$を結ぶ直線」の交点なので, $f([0:1:a])=[0:1:\phi(a)]$が成立する. ゆえに, $f([a:b:c])=[\phi(a),\phi(b),\phi(c)]$が成立する. これが示したいことだった.
上の自然なラベリングの下で, $M_{21}\iso \PSL(3,\field 4)$.
$[\PGGL(3,\field 4):\PGL(3,\field 4)]=\#(\mathrm{Gal}(\field 4/\field 2))=2$, $[\PGL(3,\field 4):\PSL(3,\field 4)]=[\field 4^{\times}:(\field 4^{\times})^3]=3$. よって, $[\PGGL(3,\field 4):\PSL(3,\field 4)]=6$.
上の$2$つの命題から, 自然に$M_{21}\subset \PGGL(3,\field 4)$となる.
$\#M_{21}=21\cdot 20\cdot 48$であり, $\#\PSL(3,\field 4)=\frac{1}{3^2}(4^3-1)(4^3-4)(4^3-4^2)=21\cdot 20\cdot 48$と位数の一致が見える. ゆえに, $H:=M_{21}\cap \PSL(3,\field 4)\subsetneq \PSL(3,\field 4)=:G$を仮定して矛盾を導けばよい. このとき, この証明の上の計算から, $H$は$G$の高々位数$6$の部分群. よって, $N = \mathrm{Core}_{G}(H)$と置くと,
この記事
の命題3より, $1<[G:N]<720<\#G$となり,$G$の単純性に矛盾.
ここまでの準備のもと, $M_{22},M_{23},M_{24}$の単純性を示せる. 一般に, 群$G$が$\Omega$に作用しているとき, $G$の$x\in \Omega$での固定化群を$G_x$と書く.
$G$が$\Omega$に$3$重可移かつ忠実に作用しており, $G_x$が単純であると仮定する. このとき, $\#\Omega$が$5$以上であり, かつ$2$冪でなければ, $G$は単純.
$G$が上記の条件を満たすとする. 非自明な正規部分群$N\lnormal G$が存在すると仮定し, 矛盾を導く.
任意に$y\in \Omega$をとる. このとき, $G$の作用の可移性より, ある$g\in G$が存在し, $gx=y$. よって, $G_y=gG_x g^{-1}\subset g^{-1}N g=N$. $y$は任意なので, $G\supset \cup_y G_y$が示せた.
$g\in G$を任意に取り, $gx=z$と置く. $\Omega\setminus \{x,z\}$から適当に元を一つとり, $y$と置く. $G$の二重可移性より, $h\in G_{y}\subset N$で, $hz=x$を満たすものがとれる. $hgx=x$より, $hg\in G_x\subset N$. ゆえに,$g=h^{-1}hg\in N$. $g$は任意なので, $N=G$. これは矛盾.
上と同様に, 任意の$y\in\Omega$に対し, $N\cap G_y=\{1\}$.
$\{1\}\neq N$より, $1\neq n\in N$がとれる(ので取る). $nx=y$と置く. $N\cap G_x=\{1\}$より, $x\neq y$. 命題$1$より, $Nx=\Omega$が分かる.
これと$N_x=\{1\}$より, $\#N=\#\Omega$が成立する. いま$\#\Omega=\#N$が$2$冪でないことから, 位数$3$以上の元$m\in N$が取れる(のでとる). 相異なる$a,b,c\in \Omega$で, $ma=b,mb=c$を満たすものを取る. $\#\Omega\geq 5$を用い, $c'\in \Omega$で, $a,b,c$と異なるものをとる. $G$の三重可移性を使い, $g\in G$で$ga=a,gb=b,gc'=c$を満たすものをとる. この時, $m'=g^{-1}mg$と置くと, $m'a=b,m'b=c'$を満たす. $c\neq c'$より, $m\neq m'$. 一方, $ma=m'a$より, $m'^{-1}m\in G_a=\{1\}$で矛盾.
$\Omega$が$2$冪でないという条件は必要. 実際, $G=AGL(n,\field 2)$と置くと, $G$は$\field 2^n$に3重可移に作用し, さらに$G_0=\GL(n,\field 2)$は単純. しかし, 平行移動がつくる$G$の部分群は正規部分群をなす.
今回は示さなかったが, $\Omega$が$2$冪でも$G$が$4$重可移なら, $G$の単純性が示せる. 詳しくは
参考文献
参照.
次が示したかった定理である.
$M_{22},M_{23},M_{24}$は単純群.
上の補題, および定理18から明らか. $PSL(3,\field 4)$の単純性については 参考文献 を参照.
ここまでで, $M_{22},M_{23},M_{24}$については示したいことは示せた. 以下では$M_{11},M_{12}$について定義/証明をしていく.
$\#\D=12$を満たす$\D\in \G$をdodecadと呼ぶ.
任意のdodecad$\D$はocatad$\O,\O'$を用いて$\D=\O+\O'$と書ける.
$5$元集合$F\subset \D$を適当にとり, $F$を含むoctedを$\O$と置く. 定義より, $\#(\O\cap\D)\geq \#F=5$. $\G$が自己直交符号なことと合わせ, $\#(\O\cap\D)=6,8$. もし, $\#(\O\cap\D)=8$なら, $\O+\D\in \G$が大きさ$4$となり, 矛盾. よって, $\#(\O\cap \D)=6$なので, $\O'=\D+\O$と置けばよい.
$M_{24}$は$Y:=\{(\O,\O')\mid \O,\O'\text{はoctedで},\#(\O\cap \O')=2\}$に推移的に作用する.
特に, $M_{24}$はdodecad全体の集合に推移的に作用する.
上の命題より, 前半から後半は容易に従う. 任意の$(\O,\O')\in Y$に対して, ある$g\in M_{24}$が存在し, $g\O=K_{1,2},g\O'=(K_{3}+R_0)$となることを示せばよい. 以下これを示す.
$\O\cap\O'=\{a,b\}$と置く. 大きさ$4$の集合$L_1 \subset \O$で, $a\in L_1,b\not\in L_1$となるものを適当にとる. 命題7よりsextet$L_1,L_2,\ldots L_6$が取れる. $L_i$を適宜入れ替えて, $\O=L_1+L_2$としてよい(のでそうする). $\G$が自己直交符号なので, 任意の$i$に対し, $\#(\O'\cap (L_1+L_i))$は偶数. よって, 任意の$i$に対し, $\#(\O'\cap L_i)$は奇数となる. 適宜$L_i$を入れ替え, $\#(\O'\cap L_3)=3,\#(\O\cap L_i)=1(i\neq 3) $とする. $L_3\setminus \O'$に属する唯一の元を$c$と置く.
命題13を用い, $f\in M_{24}$で$f(L_i)=K_i$と$f(a)=(1,0),f(b)=(2,0),f(c)=(3,0)$を満たすものを取る. このとき, $f(\O)=K_{1,2}$, $\#(f(\O')\cap K_i)=1(i\neq 3)$, $(1,0),(2,0),(3,1),(3,\omega),(3,\bar{\omega})\in f(\O')$がすべて成り立つ. $f(\O')\cap K_i =\{(i,v_i)\}(i=4,5,6)$と置く. $f(\O')\in \G$より, $(0,0|0,v_4|v_5,v_6)=\L(f(\O'))\in \H$. $\H$の最小重さが$4$なことから, $v_i=0$. ゆえに, $f(\O')=K_3+R_0$となり, $f(\D)=K_{1,2}+(K_{3}+R_1)$. これが示したいことだった.
dodecad$D$を適当にとる. このとき,
$$M_{12}:=\{g\in M_{24}|gD=D\}$$
と定める. $M_{12-k}$を$M_{12}$の$k$点の固定化群として定める.
上の命題より, $M_{12}$は(共役を除いて)$D$の取り方によらない.
また, $\#M_{12}=\frac{\#M_{24}}{2576}=(2^{10}3^35^17^1{11}^1{23}^1)(2^47^1{23}^1)^{-1}=2^63^35^1{11}^1$.
これは$12\cdot 11\cdot 10\cdot 9 \cdot 8$に等しい.
$\sigma,\tau,\epsilon\in S_6$であり, この元の型がそれぞれ$6,5+1,2+1+1+1+1$であるとする. このとき, $\sigma,\tau,\epsilon$は$S_6$を生成する.
$G:=\gen{\sigma,\tau,\epsilon}$とする. $\tau$が固定する元を$a$と置く.
$\sigma\in G$が型$6$であることから$G$は可移. $\tau \in G_a$が型$5+1$なので, $G_a$は可移. よって, $G$の作用は$2$重可移.
ゆえに, $g\epsilon g^{-1}$という形ですべての互換が書ける. 対称群は互換によって生成されるので, $G=S_6$.
ocatad$\O,\O'$が$\#(\O\cap \O')=2$を満たすとする. $H=\{g\in M_{24}\mid g\O=\O,g\O'=\O'\}$と置く.
このとき, $H$の$\O\setminus \O'$への自然な作用を$\alpha:H\to S_6$と置くと, $\alpha(H)=S_6$.
上の補題より, $\alpha(H)$に型が$6^1,5^1 1^1,2^1 1^4$の置換が入っていることを示せばよい.
定理22より, $M_{24}$は命題の条件を満たす$(\O,\O')$全体に推移的に作用する. よって, ある$\O,\O'$に対して$\alpha(H)$に型xxの元が入っていることが示せれば, 任意の$\O,\O'$について同じことが示せる. 以下, それぞれの型に対し, 具体的に$\O,\O'$および$f\in M_{24}$を作っていく.
$\O=K_{1,2},\O'=K_{3}+R_{0}$と置く. 線形写像$(a,b|c,d|e,f)\mapsto \omega(b,a|c,d|f,e)$は$\H$を不変にする. この写像から誘導される$M_{24}$の元を$f$と置く. すなわち, $f(i,\alpha)=((12)(56)i,\omega\alpha)$. すると, $f$は$\O,\O'$を不変にし, $f|_{\O\setminus \O'}$は型$6$.
$K_1$ | $K_2$ | $K_3$ | $K_4$ | $K_5$ | $K_6$ | |
---|---|---|---|---|---|---|
$R_0$ | $a$ | $a'$ | $c$ | $c'$ | $e$ | $g$ |
$R_1$ | $b$ | $b'''$ | $d$ | $d'''$ | $f$ | $h$ |
$R_2$ | $b''''$ | $b'$ | $d''''$ | $d'$ | $f'$ | $h'$ |
$R_3$ | $b''$ | $b'''''$ | $d''$ | $d'''''$ | $f''$ | $h''$ |
$f$の作用での軌道とアルファベットが対応し, $f(x)=x',f(x')=x''\cdots$となるように$'$を振ってる.
$\O$は$a,b$の軌道に, $\O'$は$a,c,e,h$の軌道である.
$v=(\bar{\omega},\omega|\bar{\omega},\omega|\omega,\bar{\omega})\in \H$とし, $\O=K_1+R_0\in \G,\O'=K_1+\{(i,\alpha)|v_i=\alpha\}$と置く. $\L(\O')=v\in \H$となるので, $\O'\in \G$が確かめられる. 線形写像$(a,b|c,d|e,f)\mapsto(a,\bar{\omega} f|\omega b,\bar{\omega}c|d,\omega e)$は$\H$を不変にする. この写像から誘導される$M_{24}$の元を$f$と置く. すると, $f$は$\O,\O'$を不変にし, $f|_{\O\setminus \O'}$は型$5+1$. (下図も参照. $\O\setminus \O'=\{1\}\times \{1,\omega\}\cup \{2,3,4,5,6\}\times \{0\}$である. )
$K_1$ | $K_2$ | $K_3$ | $K_4$ | $K_5$ | $K_6$ | |
---|---|---|---|---|---|---|
$R_0$ | $a$ | $e$ | $e'$ | $e''$ | $e'''$ | $e''''$ |
$R_1$ | $b$ | $f$ | $h'$ | $f''$ | $f'''$ | $h''''$ |
$R_{\omega}$ | $c$ | $g$ | $f'$ | $g''$ | $g'''$ | $f''''$ |
$R_{\bar{\omega}}$ | $d$ | $h$ | $g'$ | $h''$ | $h'''$ | $g''''$ |
$\O$は$b,c,d,e$の軌道, $\O'$は$a,b,c,g$の軌道.
$v=(0,1|0,1|\omega,\bar{\omega})\in \H,A=\{2,4,5,6\}$と置く. ($v$の$0$でない座標が$A$. )$\O=K_{1,2},\O'=\{(i,\alpha)|\alpha=0\text{か}\alpha=v_i \}$と置く. $\L(\O')=v\in\H$などより, $\O'\in \H$が確かめられる. $v$の加算が誘導する$M_{24}$の元を$f$と置く. すると, $f$は$\O,\O'$を不変にし, $f|_{\O\setminus \O'}$は型$2+1+1+1+1$.
$K_1$ | $K_2$ | $K_3$ | $K_4$ | $K_5$ | $K_6$ | |
---|---|---|---|---|---|---|
$R_0$ | $a$ | $e$ | $g$ | $k$ | $m$ | $o$ |
$R_1$ | $b$ | $e'$ | $h$ | $k'$ | $n$ | $p$ |
$R_{\omega}$ | $c$ | $f$ | $i$ | $l$ | $m'$ | $p'$ |
$R_{\bar{\omega}}$ | $d$ | $f'$ | $j$ | $l'$ | $n'$ | $o'$ |
$\O$は$a,b,c,d,e,f$の軌道, $\O'$は$e,k,m,o$の軌道.
dodecad $\D$をひとつとる. このとき,$M_{12}$の$\D$への自然な作用は鋭$5$重可移.
$\#M_{12}=12\cdot 11\cdot 10\cdot 9\cdot 8$より, $5$重可移性のみを示せばよい.
$\O=K_{1,2},\O'=K_3+R_0$とする. dodecadに対する推移性より, $\D=K_{1,2}+(K_3+R_0)$として示せばよい. 任意に相異なる$a,b,c,d,e \in \D$をとる. このとき, ある$f\in M_{24}$が存在し, $f(\D)=\D$かつ$f(a)=(1,1),f(b)=(1,\omega),f(c)=(1,\bar{\omega}),f(d)=(2,1),f(e)=(2,\omega)$となることを示す.
$F:=\{a,b,c,d,e\}$とし, $F$を含むoctedを$\O''$とする. 命題21でした議論のように, $\D=\O''+\O'''$と$\O'''\in \G$を用いて書ける. 定理22より, $f\in M_{12}$が存在して$f(\O'')=\O, f(\O''')=\O'$. よって, 以下$\O''=\O,\O'''=\O' $として示す.
このとき, $F\subset \D\cap \O=\O\setminus \O' $. ゆえに, 命題24より, $f(a)=(1,1),f(b)=(1,\omega),f(c)=(1,\bar{\omega}),f(d)=(2,1),f(e)=(2,\omega)$を満たす$f\in H\subset M_{12}$が取れる. ($H$は上の命題で定義した群.) これが示すべきことだった.
上から特に, $M_{12}$の$\D$への作用が忠実であることがわかる.
$M_{10}$は単純群ではないので, 前の方法では単純性を示せない. ここでは, すこしtrikcyな方法で単純性を示す. 実は, $\#M_{11}=11\cdot 10\cdot 9\cdot 8$, および$M_{11}$が$11$元集合に忠実かつ$2$重可移に作用することのみから単純性が従う.
以下$p=11$と置き, $M_{11}\subset S_{11}$とみなす.
群$G$のシロー$p$群(のうち一つ)を$P$とする. このとき,
$n_G:=[G:N_G(P)], r_G=[N_G(P):C_G(P)],c_G=[C_G(P):P]$
と定義する.
シローの定理より,$n_G$はシロー$p$群の個数と等しい. よって, $n_G\equiv 1$.
また, 定義より明らかに$\#G=n_Gr_Gc_G\#P$.
$G\subset S_p$が可移なら, $c_G=1,r_G\mid p-1$.
$H\subset G$で, $H$と$G$のシロー$p$群がともに$P$なら, $c_H\mid c_G,c_Hr_H\mid c_Gr_G$. よって, $G=S_p$のとき示せばよい.
$\sigma=(123\cdots p)\in S_p$,$P=\gen{\sigma}$とし, 以下$N_G(P)$を決定していく.
$f\in G$が$f\sigma f^{-1}=\sigma f^a$を満たすとする. これは$f(x+1)\equiv f(x)+a\pmod p$と同値. 帰納的に, $f(x)\equiv ax+b$がわかる. 逆にこのような$f$は$N_G(P)$に属する. ゆえに, $\#N_G(P)=p^2-p$, $\#C_G(P)=p$がわかる.
$G=M_{11}$と置く. このとき, $r_G=5,n_G=144$.
$G$は可移なので, $c_G=1$. $n_G\equiv 1\pmod{p}$と合わせて, $r_G\equiv \frac{\#G}{p}=720\equiv 5\pmod{p}$.
また, $r_G\mid \#\Aut(P)=10$. よって, $r_G=5$で, $n_G=\frac{\#G}{r_Gp}=144$.
$M_{11},M_{12}$は単純.
命題19より, $M_{11}$の単純性から$M_{12}$の単純性は従う.
以下, $G:=M_{11}$が非自明な正規部分群$N$を持つと仮定し, 矛盾を示す.
$M_{11}$の作用は可移なので, 命題1より$N$も可移に作用する. よって, $\#N=pn_Nr_N$となる.
また, $G\rnormal N$とシローの定理より, $G$のシロー$p$群はすべて$N$に含まれる. ゆえに, $n_G=n_N$で$\#N=pn_Gr_N$. $r_N\mid r_G=5$より, $r_N=1,5$. $r_N=5$なら$\#N=\#G$で矛盾. よって,$r_N=1$.
$N$の位数$p$の元は, $(p-1)n_G$個存在する. $\#N=pn_G$より, 位数$p$でない元は$n_G$個. 一方で, $N$の作用は可移なので, $\#N_x=n_G(x=1,2,\cdots)$. $N_x$は位数$p$の元を含まないので, 結局$N_1=N_2=\cdots=N_{p}$となる. これは, $N_x=\{1\}$のときしかありえず, $n_G=1$となるので矛盾.