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大学数学基礎解説
文献あり

位数100までの群の分類(の準備)

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初めに

位数100までの群を, 同型を除き全て求めます. 分割して投稿予定です. この記事では分類の中で使う定理や諸注意をまとめています.

リンク集(記事追加に合わせこちらにも追加します)
- 位数1,p,p2,pqの群
- 位数pqrの群
- 位数p2qの群
- 位数60,90,84の群
- 位数36,100の群
- 位数p3の群
- 位数24,40,56,88,54の群
- 位数72の群
- 位数p4の群
- 位数48,80の群
- 位数32の群
- 位数96の群
- 位数64の群

諸注意

  • (特に上にある記事は, 参考にしたものがないので)誤りや冗長な議論が含まれている可能性が高いです. 誤りや議論の簡略化を見つけたらコメント欄で指摘してもらえると幸いです.
  • 2020/12/24に定理6の大幅な追記, 命題10の追加を行いました.
  • 2021/2/23に命題13を追加しました.

用いる定理/定義

以下, xg=g1xgと定義する. 群Gに対し、Hが部分群であることをGHで表し,特にGHのときはG>Hで表す.また, 特に注意がなければGは有限群, GH,GKとする.

正規/特性部分群

正規部分群で割ることにより小さな群に帰着できる. この節ではどのような操作によって正規部分群や特性部分群が保たれるか調べる.

群の積

HK={hk|hH,kK}とする.
HKの少なくとも一方が正規ならGHK, 両方正規ならGHKとなる.

HKの片方が正規なら, HKHK=HHKK=HK,(HK)1=KH=HKとなり, 両方正規なら任意のgGHKg=HgKgとなるので従う.

特性部分群

HcharGϕAut(G),ϕ(H)=Hと定義する.
この時, HGの特性部分群であるという.

特性部分群は, 特に任意の元の共役で閉じているので, 正規部分群でもある.

特性部分群と正規部分群の性質

KcharHcharGKcharG
KcharHGKG
KcharG,H/KcharG/KHcharG
KG,H/KG/KHG
ただし下2つはHKを仮定する.

KcharHcharGとし, ϕAut(G)を任意にとる. このとき, ϕ(H)=Hとなり, ϕ|HAut(H)の元となる. よってϕ(K)=KとなりKcharG.
2番目もほぼ同様.
KcharG,H/KcharG/Kとし, ϕAut(G)を任意に取る. このとき, ϕ(K)=Kより, ϕ¯:G/KG/Kが誘導される. このϕ¯に対し, ϕ¯(H/K)=H/Kが成り立つので, ϕ(H)=H.
4番目もほぼ同様.

一般に, 特性部分群から「自然に」群を作る操作をすると, それも特性部分群になります. 例えば, HcharGのとき, Z(H)[H,H]なども特性部分群になります.

核を取ることで(正規とは限らない)部分群から正規部分群を作れる. この節では核の位数を評価する.

coreG(H)gHgと定義する.

定義よりGcoreG(H)となる.

|G/H|=mとする. このとき, 準同型f:GSmが存在し, その核はcoreG(H)となる. 特に, |G/coreG(H)|mの倍数かつm!の約数となる.

G/HGg1(˙g2H):=g1g2Hと作用させる. この作用から自然に準同型f:GSG/Hが誘導される. この準同型のkernelをNとすると, N=gH{k|kgH=gH}=g{k|g1kgH}=ggHg1=coreG(H). ゆえに, |G/coreG(H)|=|G/N|=|Im(f)|=m!/|coker(f)|となる.

上の作用は可移なので, f(G)Smの可移な部分群となる.
また, 上の作用でhHに対し, hH=Hが成立するので, f(H)Sm1である.

シローp

シローp群の存在は有限群の分類に役立つ. この節では, シローp群とそれに関連した命題を示す.

シローp

位数pab(bp)の群Gの位数paの部分群Hをシローp群と定義する. シローp群の個数をnp(G)とする. (この記法はあまり一般的ではないので注意)

シローの定理

np(G)1(modp)であり, シローp群は全て共役. 特にGの位数をnとすると, np(G)|n. さらに, 任意のGの部分pHに対し, あるシローpKが存在し, HKを満たす.

証明は基本的な群論の本に載っているので省略する.

Op(G)

全てのシローp群の共通部分をOp(G)と置く.

Op(G)charGである. 特に, np(G)=1なら, Gのシローp群は特性部分群となる.

シローp群の同型での像は再びシローp群となることから明らか.

|G|=nと置く. この時, 以下の不等式が成り立つ.
n>p:ordp(n)=1np(G)(p1)+p:ordp(n)>1(pordp(n)1)+p:ordp(n)>1,np(G)>1(11p)pordp(n)
ただし、(p:Q(p)f(p))はQ(p)を満たすすべての素数pに対してのf(p)の和を表す.

pを素数,q=pordp(n)とする.以下,p冪という言葉はpn(n正の整数)と表せる整数を指す.
Gの位数がp冪である元全体の集合をGpと置く.任意のシローpPに対して,GpP{1}である. また, |P{1}|=q1に留意せよ.
ordp(n)=1の時, シローp群の共通部分は自明なので, |Gp|np(G)(p1).
ordp(n)>1なら,上の議論より|Gp|q1.
ordp(n)>1,np(G)>1なら相異なるシローp群,P1,P2をとると,|Gp||(P1P2){1}|=|P1|+|P2||P1P2|1(q1)+(qqp).
これと,GGpを合わせれば上の不等式が従う.

|Gp|np(G)(qqp)は一般には成り立たない. G=S3×S3,p=2が反例である.

半直積

正規部分群に対して, その補部分群があれば, 元の群はその2つの群の半直積でかける. この節では半直積の基本的な性質, 及びいつ同型になるか求める.

外部半直積

K,Nを任意の群とする.ϕ:KAut(N)が準同型であるとする. ここで, G=K×Nに, 次のように二項演算をいれる:(k1,n1)(k2,n2)=(k1k2,ϕ(k2)(n1)n2). このとき, (G,)は群となり, これをKϕNと書く.

群になること

((k1,n1)(k2,n2))(k3,n3)=(k1k2,ϕ(k2)(n1)n2)(k3,n3)=(k1k2k3,ϕ(k3)(ϕ(k2)n1)n3)=(k1k2k3,ϕ(k2k3)(n1)ϕ(k3)(n2)n3).
(k1,n1)((k2,n2)(k3,n3))=(k1,n1)(k2k3,ϕ(k3)(n2)(n3))=(k1k2k3,ϕ(k2k3)(n1)ϕ(k3)(n2)n3).
より, 結合法則が確認できる.
(1K,1N)が単位元になることは容易に確認できる.
(k,n)(k1,ϕ(k1)(n1)=(1K,ϕ(k1)(n)ϕ(k1)(n1))=(1K,1G)
(k1,ϕ(k1)(n1))(k,n)=(1K,ϕ(k)(ϕ(k1)(n))n1)=(1K,1G)
より, (k,n)の逆元も存在する.

内部半直積は外部半直積

GN,KGの部分群,NK=1,G=KNとする. kK,nNに対し, (ϕ(k))(n)=nkϕ:KAut(N),GKϕN.

(k,n)KϕNに対しknGを対応させると, これが同型写像になる.

内部半直積と外部半直積の一致

K,Nを任意の群とする. G=KϕN,N={(1,n)|nN},K={(k,1)|kK}と置くと, GN,NK=1,G=KN.
逆にGN,NK=1,G=KN.kK,nN,
(ϕ(k))(n)=nkϕ:KAut(N)を定義すると, GKϕN.

前半は自明. 後半は(k,n)KϕNに対しknGを対応させると, これが同型写像になる.

今後, G=KϕNのとき, 上の定理のKKと, NNと同一視する. よって(k,n)knと書く.

半直積が同型になる条件

fi1(K)ϕj1(N)からi2(K)ψj2(N)への同型であり, さらに次の条件を満たすとする.

  • f(i1(N))=i2(N)
  • j2(m),f(i1(K))j2(m)=i2(K)

このとき, μAut(N)νAut(K)が存在し, (νψ)μ=ϕとなる.
逆に(νψ)μ=ϕなら, i1(K)ϕj1(N)i2(K)ψj2(N)となる.

f,mが上の条件を満たすとする. ϕ(i1(k))(j1(n))=i1(ϕ(k)(n)),ψ(i2(k))(j2(n))=i2(ψ(k)(n))となる, KからAut(N)への準同型ϕ,ψ, 及びi2(μ(n)),f(j1(k))=j2(ν(k))i2(m),μAut(N),νAut(K)が取れる. すると, i2(μ(ϕ(k)(n)))=f(i1(ϕ(k)(n))=f(i1(n)j1(k))=i2(μ(n))j2(ν(k))i2(m)=i2(ψ(ν(k))(μ(n)m1)m)となる. よってμ(n)=μ(n)m1と置くと, ψ(ν(k))μ=ϕ(k)となる.
逆にψ,ϕ,μ,νが条件を満たすとする. f(i1(n))=i2(μ(n)),f(j1(k))=j2(ν(k))i2(m)fを定義すれば同型となる.

p-群

p-群は個数が多く, さらにシローの定理が役立たないため, 別途に手段を考える必要がある.

G/Z(G)=x¯が巡回群なら,G=Z(G).

G/Z(G)=x¯となるようにxGをとる. yGを任意にとると, y=xazの形に自然数azZ(G)を用いて書ける. よって,xy=xa+1z=xazx=yxとなり, xZ(G).

Gを位数がpnである群とする. このとき, G=GnGn1Gn2...G0=1|Gi|=piとなる, Gの正規部分群Gi(i=0,...,n)が存在する.

Giを帰納的に定義する. i<nならG/Giは非自明なp-群である. よって, その中心は非自明であり, Z(G/Gi)Gi+1/Giとなるように位数pi+1の群, Gi+1を取れる. Z(G/Gi)Gi+1/Giより特にG/GiGi+1/Giとなり, 命題1よりGGi+1.

GN,G/N=x¯=Cmとする. Nxへの共役をϕと書く. y=xmとすると, ϕxは以下の二つを満たす.

  • ϕ(y)=y
  • ϕm(n)=ny

逆に, 群NϕAut(N),yNが上の条件を満たすとする. この時, 群Gxが存在し, GN,G/N=x¯=Cmとなり, Nxへの共役をϕとなる. (この群Gに適切な名前があれば教えてほしいです. . . )

前半の主張は自明. 後半の主張を示す. X={(i,n)|iZ,nN}と置き, (i+m,n)(i,yn)となるような最小の同値関係をとする. G=X/とし, (i,n1)(j,n2)=(i+j,ϕj(n1)(n2))とすると, これはwell-definedであり, (G,)は群となる. そしてx=(0,1N)とすれば残りの条件も満たす.(詳細は計算すればわかり, また半直積と似た感じなので省略)

群の表示

群の準同型をもとめるさい、群の表示が役に立つ.

I,Jを添え字集合とし, G=xi|rj,yiH(iI,jJ)とする. このとき,任意のiに対しϕ(xi)=yiを満たすGからHへの準同型が存在することと, 任意のjに対し, rj((yi)I)=1となることは同値である. さらにこの時, GからHへの準同型は一意に定まる.

一意性は(xi)IGの生成元であることから従う. 任意のjに対し, rj((yi)I)=1と仮定する. ψ(xi)=yiを満たすxiからHへの射が自由群の普遍性から存在し, 仮定よりrj((xi)I)ker(ψ)となるので, ここから条件を満たすGからHへの射ϕが誘導できる.
逆にϕ(xi)=yiを満たすGからHへの射ϕがあれば, 1=ϕ(1)=ϕ(rj((xi)I))=rj((ϕ(xi))I)=rj((yi)I)となる.

参考文献

[1]
finite group theory, I.Martin Isaacs
投稿日:20201217
更新日:2024111
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  1. 初めに
  2. 諸注意
  3. 用いる定理/定義
  4. 正規/特性部分群
  5. シローp
  6. 半直積
  7. p-群
  8. 群の表示
  9. 参考文献