位数100までの群を, 同型を除き全て求めます. この記事では位数$pqr$の群を求めます. 使う定理は
準備記事
に乗ってるので、分からない場所があれば参照してください.
$G$を位数$pqr$の群とする.
$G$には位数$qr$の部分群$N$がただ一つ存在する. とくに$N\char G$.
まず,$n_q(G)=1$か$n_r(G)=1$のどちらかは成り立つことを示す. どちらも成り立たないとすると,$n_q(G)\geq r$かつ$n_r(G)=pq$.よって,
準備記事定理6
より$pqr\geq 1+1(p-1)+r(q-1)+pq(r-1)\geq pqr+(r-p)(q-1)$となり矛盾.
対称性より$n_r(G)=1$のときに示せばよい[1]. $G$のシロー$r$部分群を$R$と置くと、$G/R$は位数$pq$の群. よって,
位数$pq$の群の分類
より, $G/R \rnormal N/R$となる$N\subset G,|N|=qr$がある.
準備記事命題2
より$G\rnormal N$.もし$N\neq M\subset G$が$|M|=qr$を満たせば,$x\in M-N$をとると,($\overline{1}\neq \overline{x}\in M/N$より)$x$の位数が$p$の倍数となり矛盾.
$P$を$G$のシロー$p$部分群(の一つ)とする.$G=NP,G\rnormal N,N\cap P=1$より,適当な$\phi$を用いて$G=\semiprod{P}{\phi}{N}$と書ける.
よって,位数$qr$の分類より, $G\iso\semiprod{C_p}{\phi}{C_{qr}}$,もしくは$G\iso\semiprod{C_p}{\phi}{(\semiprod{C_q}{\psi}{C_r})}$となる. (ここで$\psi=(x\mapsto sx)$で, $s$は$\mod q$で位数$r$となる整数.) $G\char N$より, 上と下は同型にならない.
ゆえに,
準備記事定理9
より, $M=C_q\times C_r ,\semiprod{C_q}{\psi}{C_r}$としたとき, $\Aut(M)$の位数$1,p$の部分群を($\Aut(M)$の)共役を除いて求めればよい.
位数$1$の部分群は一つ.
$\mathrm{Aut}(M)=C_{q-1}\times C_{r-1}$より,
が位数$p$の部分群であり, これらはもれなくダブりない.
位数$1$の部分群は一つ.
$\Aut(M)=\semiprod{C_{r-1}}{\gamma}{C_r}=\gen{\sigma,\tau|\sigma^r=1,\tau^{r-1}=1,\tau^{-1}\sigma\tau=\sigma^t}$である. (ここで, $t\in \Z$は$\mod r$での原始根. )
$\Aut(M)$の位数$p$の元を求める. $a,b$を, $0\leq a< r,0\leq b< r-1$を満たす整数とする. このとき, $(\sigma^a\tau^b)^q=\sigma^c\tau^{bq}$, $c\in \Z$と書ける.
よって, $\sigma^a\tau^b\in \Aut(M)$が位数$p$なら, $b=\frac{(r-1)i}{p}(0< i< p)$と書ける[2]. 適当に$\sigma$の何乗かで共役をとり, $\sigma^a\tau^b\sim\tau^b$. これは明らかに位数$p$. よって,
が位数$p$の部分群であり,これで(共役を除いて)すべてが尽くされている.
今までの結果を用い, $pqr\leq 100$のときに, 位数$pqr$の群としてありうるものを列挙する. $3\times 5\times 7=105>100$より, $p=2$.
位数$pqr$の群は $C_2\times C_q\times C_r$, $D_q\times C_r$, $C_q\times D_r$, $D_{qr}$の$4$つがある.
上の$4$つに加え, $C_2\times (\semiprod{C_q}{\psi}{C_r})$, $\semiprod{C_{2q}}{\gamma}{C_r}$の$2$つが加わり, 合計$6$個.
ここで$\psi ,\gamma$は次のように定義される: $s,t\in \Z$を$\mod r$での位数がそれぞれ$q,2q$となるようにとり, $\psi(\overline{1})=(x\mapsto sx),\gamma(\overline{1})=(x\mapsto tx)$.
$r=7$のときは, 最後の群は$\mathrm{Aff}(\mathbb{F}_7)$とも書ける.