位数100までの群を, 同型を除き全て求めます. この記事では位数$p^3$の群(およびその自己同型群の位数)を求めます. 使う定理は
準備記事
に乗ってるので、分からない場所があれば参照してください.
以下$p$は素数とする.
$G$を有限$p$群, $G\supsetneq H$を$G$の部分群とする. このとき, $N_G(H)\supsetneq H$.
$H$に含まれるなかで最大の$G$の正規部分群$N$をとる.
このとき, 特に$H/N \cap Z(G/N) =N/N$. これと, $\#Z(G/N)>1$を合わせて, $N_G(H)/N\supset N_G(H/N)\supset Z(G/N)\not\subset H/N$となる.
とくに$N_G(H)\not\subset H$.
$G$を位数$p^3$の群とする. $G$の最大位数の元の大きさで場合分けを行う.
$G\iso C_{p^3}$.
$\gen{x}=H$と置く. 上の定理より, $G\rnormal H$. $y\in G\setminus H$を一つとる.
有限Abel群の基本定理より, $G\iso C_{p^2}\times C_p$.
このとき, $y^{-1}xy=x^a(1< c< p^2)$と置くと, $y^p\in H$より, $y^{-p}xy^p=x^{a^p}$. ゆえに, $a^p\equiv 1\pmod{p^2}$. よって, $a\equiv 1\pmod{p}$. $y$をその何乗かで置き換えて, $a=1+p$としてよい. ($a=1$なら, $y\in Z(G)$となる)
$y^p\in H$なので, $y^p=x^b(0 \leq b< p^2)$と書ける. $p\not\mid b$なら$y$が位数$p^3$となり矛盾. よって, $b=pc$と書ける.
$p\neq 2$のとき
このとき$c=0$とできる. 実際, $(x^{-c}y)^p=1$, $(x^{-c}y)^{-1}x(x^{-c}y)=x^{1+p}$となるので, $y$を$x^{-c}y$に置き換えればよい. よって, $p\neq 2$なら, $G=\semiprod{\gen{y}}{\phi}{H}\iso \semiprod{C_p}{\phi}{C_{p^2}}$. ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto (1+p)x)$.
$p=2$のとき
$c=0$なら, 上と同様に, $G\iso \semiprod{C_p}{\phi}{C_{p^2}}$, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto -x)$. このとき, $G\iso D_4. $
$c=1$なら, $G$は
準備記事定理12
において, $N=C_4, \Aut(N)\ni \phi=(x\mapsto -x),m=2,y=\overline{2}$とした群と同型である. これは$Q_8$という名前がついている.
最後に, $D_4$と$Q_8$が非同型なことを示しておく必要がある. これは, $D_4$には位数$2$の元が$5$個あるが, $Q_8$には$1$個しかないことから明らか.
準備記事定理11
より, $G\rnormal H, \#H=p^2$となる$H$がとれる(のでとる). $x\in G\setminus H$を一つとり, $K=\gen{x}$と置く. 仮定より, $\#K=p$となるので, $K\cap H=\{1\}, G=KH$が成立する.
よって, $G=\semiprod{K}{\phi}{H}\iso \semiprod{C_p}{\phi}{(C_p\times C_p)}$となる. ($\phi$は$C_p$から$\Aut(C_p\times C_p)=\GL_2(\field p)$への準同型.)
よって,
準備記事定理9
より, $\GL_2(\field p)$の大きさ$1,p$の部分群を(共役を除いて)求めればよい. それは以下の通り.
前者は$C_p\times C_p\times C_p$に, 後者は$U_3(\field p)$($3\times 3$の冪単上三角行列全体)に対応する[1].
最後に, これらの群が位数$1,p$の元しかもたないことを確かめる必要がある. 前者の群は自明. $(1+aE_{1,2}+bE_{2,3}+cE_{1,3})^p=1+apE_{1,2}+bpE_{2,3}+(cp+ab\binom{p}{2})E_{1,3}$より, 後者は$p\neq 2$なら条件を満たす.
$p$によらず,
$p=2$のときは追加で
$p\neq 2$のときは追加で
があり, 合計$5$個.
以下, $G$は位数$p^3$の群とする.
$\Aut(G)=C_{p^3-p^2}$.
$C_{p^2}$側の生成元を$s$,$C_p$側の生成元を$t$と置く.
$\Aut(G)$は$G$に忠実に作用するが, この作用での$s$の軌道を$S$と置く. すると, $S$は 位数$p^2$の元全体, すなわち$s^it^j$($i$と$p$は互いに素)と書けるもの全体となる. これは$(p-1)p^2$個.
そして, $\Aut(G)$の$s$の固定群を$B$とする. $B$の$G$への自然な作用による, $t$の軌道を$T$と置く. $T$は位数$p$の元で$s^i$の形で書けないもの全体となる. これは$(p-1)p$個.
群の準同型は生成元の行先で決まるので, $B$の$s$の固定群は自明群. ゆえに, $\#B=(p-1)p$で, $\#\Aut(G)=(p-1)p(p-1)p^2=(p-1)^2p^3.$
$\Aut(G)=\GL_3(\field p)$であり, 位数は$(p^3-1)(p^3-p)(p^3-p^2)$.
ここで, $\phi(\bar{1})=(x\mapsto (1+p)x)$.
$\Aut(G)$の作用による$\sigma$の軌道を$S$と置く. このとき, $S=G\setminus\gen{\sigma^p,\tau}$が分かる. とくに$\#S=(p-1)p^2$
そして, $\Aut(G)$の$\sigma$の固定群を$B$とする. $B$の$G$への自然な作用による, $\tau$の軌道を$T$と置く. $T$は$\tau\sigma^i$と書ける元全体となる. ($\tau^{-1}\sigma\tau=\sigma^{1+p}$を保つためには, $\tau$が一回だけの必要がある)
よって, $C_{p^2}\times C_p$と同様の議論により, $\#\Aut(G)=(p-1)p^3$となる.[2]
$x$の行先が$G\setminus\{1,x^2\}$. $x$を固定したときの$y$の行先が$G\setminus\gen{x}$.
よって, $\#\Aut(G)=6\times 4=24$.
$x$の行先が$G\setminus\gen{z}$. $x$を固定したときの$y$の行先が$G\setminus\gen{x,z}$. よって, $\#\Aut(G)=(p^3-p)(p^3-p^2)$.
とくに, 自然な射$\Aut(G)\to \Aut(G/Z(G))$が全射であることに注意せよ.