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位数p^2qの群の分類

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初めに

位数100までの群を, 同型を除き全て求めます. この記事では位数p2qの群を求めます.使う定理は 準備記事 に乗ってるので、分からない場所があれば参照してください.

リンク集(記事追加に合わせこちらにも追加します)
- 位数1,p,p2,pqの群
- 位数pqrの群
- 位数p2qの群
- 位数60,90,84の群
- 位数36,100の群
- 位数p3の群
- 位数24,40,56,88,54の群
- 位数72の群
- 位数p4の群
- 位数48,80の群
- 位数32の群
- 位数96の群
- 位数64の群

素数pと群Gに対して, np(G)Gのシローp群の個数を表す.

分類

以下p,qpqを満たす素数とする.
以下, Gは位数p2qの群とし, Gのシローp群(のうち一つ)をP,シローq群(のうち一つ)をQと置き, 固定する.

np(G)=1もしくはnq(G)=1が成立する.

背理法を用いる. すなわち, np(G)1nq(G)と仮定する. このとき, シローの定理よりnp(G)=q,nq(G)pが成立する. nq(G)=pだと,q|p1かつp|q1で矛盾. よって,nq(G)=p2となる.
すると, 準備記事定理6 より, p2q>p2(q1)+(p21)+(p2p)=p2q+(p2p+1)となり矛盾.

以下, np(G)に応じて場合分けを行う.

nq(G)=1のとき

このとき, G=PQ,PQ={1},GPなので, G=QϕPとなる. (ϕQからAut(P)への群準同型.)
あきらかにQCq. よって, 準備記事命題9 より, 位数p2である群P, およびAut(P)の大きさ1 or qの部分群を, 共役を除いて求めればよい.

P=Cp2のとき

Aut(P)=Cp2pなので, 大きさ1orqの部分群として,

  • 位数1の部分群{id}
  • q|p1のとき, 位数qの部分群(xsx)
    ただし, ss1,sq1(modp2)を満たす整数.

をもつ.

P=Cp×Cpのとき

Aut(P)=GL(Fp)となる. {id}が大きさ1の部分群.
大きさqの部分群をもつためには, #GL(Fp)=(p1)2p(p+1)qの倍数である必要がある.
以下ζqFp1の原始q乗根のうち一つとし, 固定する.

  • q|p1のとき
    AGL(Fp)が位数qなら対角化可能となる. よって, 位数qの共役類の代表元として,diag(ζqi,ζqj)(0ij<q,j0)がとれる. ここから生成される群を考えると, 共役を除いて, diag(ζq,ζqi)の形でq+32個ある[1].
  • 2q|p+1のとき
    AGL(Fp)が位数qなら,detA=1となる. このとき, GL(Fp2)Adiag(ζqi,ζqi)となるiがとれるので,Aの元でdiag(ζq,ζq1)と共役なものが取れる. GL(Fp2)での共役性からGL(Fp)での共役性がわかるので, 位数qの部分群は共役を除いてただ一つ.

nq(G)1のとき

このとき, 命題1よりnp(G)=1. よって, G=PϕQとなる. (ϕPからAut(Q)への群準同型.) PGの正規部分群でないためには, ker(ϕ)Qが必要十分. いま, QCqより, Aut(Q)Cq1.
Pは可換なので, 準備記事命題9 より, 群準同型ϕ:PCq10射と等しくないものを(共役を除いて)列挙すればよい.

P=Cp2のとき

  • p|q1のとき, aq1pa
  • p2|q1のとき, aq1p2a

P=Cp×Cpのとき

  • p|q1のとき, 適当にCp×Cpの基底をとりかえて, ϕ:(a,b)q1paとなる.

まとめ

上を用いてn=p2qと置いて, n100のとき, 位数nの群としてどのようなものがあるかを列挙する.
Abel群として, Cp×Cp×Cq,Cp2×Cq2個がある. 非Abel群を見る.

p=2

q=3

  • C3ϕ(C2×C2)
    ただしϕ(1)=(1110)Aut(C2×C2)GL2(F2)とする.
    これはA4と同型.
  • C4ϕC3
    ただしϕ(1)=(xx)Aut(C3).
  • (C2×C2)ϕC3
    ただしϕ(a,b)=(x(1)ax)Aut(C3).
    これはD3×C2D6と同型.

以上5

q=5

  • C4ϕC5
    ただしϕ(1)=(xx)Aut(C5).
  • C4ϕC5
    ただしϕ(1)=(x2x)Aut(C5).
    これはフロベニウス群F5とも呼ばれる(F5のAffine変換全体.)
  • (C2×C2)ϕC5
    ただしϕ(a,b)=(x(1)ax)Aut(C5).
    これはD5×C2D10と同型.

以上5個.
一般にq1(mod4)の時も同様に5個.
(x2x2a21(modq)を満たす整数aに置き換える. )

q=7

  • C4ϕC7
    ただしϕ(1)=(xx)Aut(C7).
  • (C2×C2)ϕC7
    ただしϕ(a,b)=(x(1)ax)Aut(C7).
    これはD7×C2D14と同型.

一般にq3(mod4)の時も同様に4個.

p=3

q=2

  • C2ϕ(C3×C3)
    ただしϕ(1)=(1001)Aut(C3×C3)GL2(F3)とする.
    これはD3×C3と同型.
  • C2ϕ(C3×C3)
    ただしϕ(1)=(1001)Aut(C3×C3)GL2(F3)とする.
  • C2ϕC9
    ただしϕ(1)=(xx)Aut(C9).
    これはD9と同型.

以上5個. p=5,7も同じ.

q=5,11

非可換なものはない. (上の証明をみると, 非可換な群があるためには, p|q1q|p21が必要.)
2個.

q=7

  • (C3×C3)ϕC7
    ただしϕ(a,b)=(x2ax)Aut(C7).
    C3×(C3ψC7)のように書くことも可能.
  • C9ϕC7
    ただしϕ(1)=(x2x)Aut(C7).

以上4

p=5

q=2

(p,q)=(3,2)の場合と同じ. C5×D5,C2ϕ(C5×C5),D25の形で5個.

q=3

  • C3ϕ(C5×C5)
    ただしϕ(1)=(0111)Aut(C5×C5)GL2(F5)とする.

p=7

q=2

(p,q)=(3,2)の場合と同じ. C7×D7,C2ϕ(C7×C7),D49の形で5個.




[1]:
diag(ζq,ζqi)diag(ζqi,ζq)に注意すると, diag(ζq,ζqi)=diag(ζq,ζqi1). これ以外に非自明な=はない. よって, q2なら3+q32=q+32個ある. (i=±1,0の例外処理に留意せよ. )


投稿日:202414
更新日:2024111
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  1. 初めに
  2. 分類
  3. $n_q(G)=1$のとき
  4. $n_q(G)\neq 1$のとき
  5. まとめ
  6. $p=2$
  7. $p=3$
  8. $p=5$
  9. $p=7$