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位数24,40,56,88,54の群の分類

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$$\newcommand{Aut}[0]{\mathrm{Aut}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{char}[0]{{\bf char}} \newcommand{comp}[0]{\circ} \newcommand{core}[0]{\rm{core}} \newcommand{diag}[0]{\mathrm{diag}} \newcommand{field}[1]{\mathbb{F}_{#1}} \newcommand{gen}[1]{\langle #1 \rangle} \newcommand{GL}[0]{\mathrm{GL}} \newcommand{imply}[0]{\Rightarrow} \newcommand{inpr}[2]{\langle {#1},{#2} \rangle} \newcommand{iso}[0]{\simeq} \newcommand{lnormal}[0]{\triangleleft } \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{rnormal}[0]{\triangleright} \newcommand{semiprod}[3]{{#1}\ltimes_{#2}#3} \newcommand{SL}[0]{\mathrm{SL}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

初めに

位数100までの群を, 同型を除き全て求めます. この記事では位数$24,40,56,88,54$の群を求めます.($p^3q$型) 使う定理は 準備記事 に乗ってるので、分からない場所があれば参照してください.

リンク集(記事追加に合わせこちらにも追加します)
- 位数$1, p, p^2, pq$の群
- 位数$pqr$の群
- 位数$p^2q$の群
- 位数$60, 90, 84$の群
- 位数$36,100$の群
- 位数$p^3$の群
- 位数$24,40,56,88,54$の群
- 位数$72$の群
- 位数$p^4$の群
- 位数$48, 80$の群
- 位数$32$の群
- 位数$96$の群
- 位数$64$の群


有限群$G$に対し, そのシロー$p$群の個数を$n_p(G)$で表す.

位数$p^3q$

個別議論に入る前に, 位数$p^3q$でできる議論をしておく.
以下, $p,q$を相異なる素数とし, $G$を位数$p^3q$の群とする. また, $P$を, $G$のシロー$p$群(のうち一つ)とし, $Q$をシロー$q$群(のうち一つ)とし, 以下固定する.

$n_p(G)\neq 1$かつ$n_q(G)\neq 1$ なら, $(p,q)=(2,3)$で, $G\iso S_4$.

$G$を上の条件を満たす群とする. まず, 整数論的議論により, $(p,q)=(2,3)$を示す.
シローの定理より, $n_p(G)=q$となり, $p|q-1$. とくに, $p< q$. よって, シローの定理より, $n_q(G)=p^2,p^3$.
もし, $n_q(G)=p^3$なら, 準備記事定理6 より, $p^3q>p^3(q-1)+(p^3-1)+(1-\frac{1}{p})p^3=p^3q+(p^3-p^2-1)$で矛盾. よって, $n_q(G)=p^2$.
よって, $q|(p^2-1)=(p-1)(p+1)$. $p< q$と合わせ, $q=p+1$の必要があるが, これは$(p,q)=(2,3)$のときのみ可能.
ここまでをまとめ, $(p,q)=(2,3)$および$n_3(G)=4,n_2(G)=3$を得た. ここで, $H=N_G(Q)$と置くと, $G\geq H$の指数は$n_3(G)=4$. よって, 準備記事命題3 より, $f:G\to S_4$で, $N:=\ker(f)=\mathrm{Core}_G(H)$を満たすものが取れる. 以下,$\#N$で場合分けを行う.

$\#N=6$のとき

位数$6$の群の分類 より, $N\char K$となる位数$3$の部分群$K$が存在する. このとき, $G\rnormal N\char K$なので, 準備記事命題2 より$G\rnormal K$で, $n_3(G)=1$に矛盾.

$\#N=3$のとき

$n_3(G)=1$に矛盾.

$\#N=2$のとき

$\#\mathrm{Im}(f)=12$より, $\mathrm{Im}(f)=A_4$. $A_4\rnormal V_4$より, $G\rnormal f^{-1}(V_4)$となるが, 大きさ$8$の正規部分群が存在することになり, $n_2(G)=1$に矛盾.

$\#N=1$のとき

このとき, $f$により,$G\iso S_4$.

のこりの$P,Q$の半直積で書けるパターンを頑張ればよい.

位数$8q$の群

この節では, $p=2$とし, $G$$S_4$と同型でないとする.

$n_2(G)=1,n_q(G)=1$のとき

このとき, $G=P\times Q$と書ける. 位数8の群の分類 を参考にして,
$C_2\times C_2\times C_2\times C_q, C_4\times C_2\times C_q,C_8\times C_q, D_4\times C_q, Q_8\times C_q$$5$個ある.

$n_2(G)=1,n_q(G)\neq 1$のとき

このとき, $G\iso\semiprod{C_q}{\phi}{P}$と書ける. (ここで, $1\neq \phi:C_q\to \Aut(P)$.) 準備記事命題9 より, 位数$8$の群$P$, および準同型$1\neq \phi:C_q\to \Aut(P)$を共役を除いて求めればよい.

$P=C_2\times C_2\times C_2$のとき

$\Aut(P)=\GL_3(\field 2)$であり, 位数は$(2^3-2^0)(2^3-2^1)(2^3-2^2)=168$. よって, $q=3,7$しかありえない.
$\phi(\overline{1})$としてありうるのは, 共役を除いて
$q=3$のとき,

  • \begin{pmatrix} \overline{1} & \overline{0} & \overline{0}\\ \overline{0} & \overline{1} & \overline{1}\\ \overline{0} & \overline{1} & \overline{0} \end{pmatrix}

$q=7$のとき,

  • \begin{pmatrix} \overline{1} & \overline{1} & \overline{0}\\ \overline{0} & \overline{0} & \overline{1}\\ \overline{1} & \overline{0} & \overline{0} \end{pmatrix}

となる. 前者は$C_2\times A_4$, 後者は$\mathrm{Aff}(\field 8) $に対応する.

$P=C_2\times C_4$のとき

位数8の群の自己同型の大きさ で見たように, $\#\Aut(P)=(p-1)^2p^3=8$. よって, この場合に対応するものはない.

$P=C_8$

$\Aut(P)=C_4$より, この場合に対応するものはない.

$P=D_4$

位数8の群の自己同型の大きさ で見たように, $\#\Aut(P)=(p-1)p^3=8$. よって, この場合に対応するものはない.

$P=Q_8$

位数8の群の自己同型の大きさ で見たように, $\#\Aut(P)=(p-1)p^3=48$. よって, $q=3$のみがありうる. シローの定理より, すべての位数$3$の部分群は共役なので, 考えないといけないのは$\phi(\overline{1})$が次で定義されるとき:
$\phi(\overline{1})(i)=j, \phi(\overline{1})(j)=k$
この群は$\SL_2(\field 3)$と同型.

$n_2(G)=1,n_q(G)\neq 1$のとき

このとき, $G\iso\semiprod{P}{\phi}{C_q}$と書ける. (ここで, $1\neq \phi:P\to \Aut(C_q)$.) 準備記事命題9 より, 位数$8$の群$P$, および準同型$1\neq \phi:P\to \Aut(C_q)\iso C_{q-1}$を共役を除いて求めればよい.

$P=C_2\times C_2\times C_2$のとき

  • $\phi(\overline{a},\overline{b},\overline{c})=\overline{\frac{q-1}{2}a}$

の一つのみ. これは$D_q\times C_2\times C_2$に対応する.

$P=C_2\times C_4$のとき

$C_2$側の生成元を$s$,$C_4$側の生成元を$t$と置く.
$\ker(\phi)=\gen{s}$となるのは,

  • $\phi(\overline{a},\overline{b})=\overline{\frac{q-1}{4}b}$

のみ. このとき$q\equiv 1\pmod{4}$も必要.
$\ker(\phi)=\gen{st^2}$の時は$\Aut(P)$でひねって上と同じになる.
$\ker(\phi)= \gen{t}$となるのは

  • $\phi(\overline{a},\overline{b})=\overline{\frac{q-1}{2}a}$
    これは$C_4\times D_q$に対応する

のみ. $\ker(\phi)=\gen{st}$$\Aut(P)$でひねって上と同じ.

$\ker(\phi)= \gen{s,t^2}$となるのは

  • $\phi(\overline{a},\overline{b})=\overline{\frac{q-1}{2}b}$

のみ. $\ker(\phi)=\gen{st,t^2}$$\Aut(P)$でひねって上と同じ.

$P=C_8$のとき.

$\phi(\overline{1})$としてありうるのは, 共役をのぞいて
$\overline{\frac{q-1}{8}},\overline{\frac{q-1}{4}},\overline{\frac{q-1}{2}}$$3$つ.
1つめは$q\equiv 1\pmod{8}$, 2つめは$q\equiv 1\pmod{4}$の必要がある.

$P=D_4=\semiprod{C_2}{\phi}{C_4}$

$C_4$側の生成元を$\sigma$, $C_2$側の生成元を$\tau$と置く. $[P,P]=\gen{\sigma^2}$より, $\sigma^2\in\ker(\phi)$に注意せよ.
$\ker(\phi)=\gen{\sigma^2,\tau}$となるのが

  • $\phi(\sigma)=\overline{\frac{p-1}{2}},\phi(\tau)=\overline{0}$

のときのみ. $\ker(\phi)=\gen{\sigma^2,\sigma\tau}$$\Aut(P)$でひねって上と同じ.

$\ker(\phi)=\gen{\sigma}$となるのが

  • $\phi(\sigma)=\overline{0},\phi(\tau)=\overline{\frac{p-1}{2}}$

のときのみ. これは$D_{4q}$に対応する.

$P=Q_8$

$P$の元を$i,j,k$で表す. 上と同様に, $-1\in \ker(\phi)$に注意せよ.
適当にひねって, $\ker(\phi)=\gen{i}$とできる. このとき,

  • $\phi(\overline{i})=\overline{0},\phi(\overline{j})=\overline{\frac{p-1}{2}}$
    となる.

まとめ

まず, 任意の$q$に対してある群を列挙する.
$n_2(G)=n_3(G)=1$となるのが
$C_2\times C_2\times C_2\times C_q, C_4\times C_2\times C_q,C_8\times C_q, D_4\times C_q, Q_8\times C_q$
$5$個.
$n_2(G)=1,n_q(G)\neq 1$となるのが

  • $D_q\times C_2\times C_2$
  • $D_q\times C_4$
  • $(\semiprod{C_4}{\phi}{C_q})\times C_2$
    ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto -x)$.
  • $\semiprod{C_8}{\phi}{C_q}$
    ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto -x)$.
  • $D_{4q}$
  • $\semiprod{D_4}{\phi}{C_q}$
    ここで, $\phi(\tau)=\mathrm{id},\phi(\sigma)=(x\mapsto -x)$.
  • $\semiprod{Q_8}{\phi}{C_q}$
    ここで, $\phi(i)=\mathrm{id},\phi(j)=(x\mapsto -x)$.
    $7$個. 合わせて$5+7=12$個が一般の$p$に対してある.
    ここからはさらに群がある条件を列挙する.

$p=3$のとき

追加で$S_4, C_2\times A_4, \SL_2(\field 3)$.

$p=7$のとき

追加で$\mathrm{Aff}(\field 8)$.

$p\equiv 1\pmod{4}$のとき

$s^2\equiv -1 \pmod{p}$となる整数$s$をとる. 追加で

  • $(\semiprod{C_4}{\phi}{C_q})\times C_2$
    ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto sx)$.
  • $\semiprod{C_8}{\phi}{C_q}$
    ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto sx)$.

$p\equiv 1\pmod{8}$のとき

$t^4\equiv -1 \pmod{p}$となる整数$t$をとる. 追加で

  • $\semiprod{C_8}{\phi}{C_q}$
    ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto tx)$.

とくに, $q=3$のときは$12+3=15$個, $q=5$のときは$12+2=14$個, $q=7$のときは$12+1=13$個, $q=11$のときは$12$個の群が存在する.

位数$54$の群

以下では,$p=2,q=3$とする.
シローの定理より, $n_3(G)=1$が成立する. よって, $G=\semiprod{C_2}{\phi}{Q}$が成立する. ($\phi:C_2\to \Aut(Q)$) $\phi=1$のときは直積になる( 位数$27$の群の分類 より$5$個ある)ので, 以下は$\phi\neq 1$のときを扱う.

$P=C_3\times C_3\times C_3$のとき

$\Aut(P)=\GL_2(\field 3)$となるので, 位数$2$の元としてありうるのは,共役を除いて, 次の$3$つ.

  • $\diag(1,1,-1)$
    これは$D_3\times C_3\times C_3$に対応.
  • $\diag(1,-1,-1)$
  • $\diag(-1,-1,-1)$

$P=C_3\times C_9$のとき

$\#\Aut(P)=(p-1)^2p^3$である. $\Aut(P)$のシロー$2$群として, つぎの$4$つの写像からなる群があげられる.
$\phi(\overline{a},\overline{b})=(\overline{\pm a},\overline{\pm b})$
ここで, 複合は任意. よって, シローの定理より, $\Aut(P)$の位数$2$の元は上の$3$つのどれかに共役.
これらの$3$つの位数$2$の元は, $C_1\times C_3=3P$[1]への作用, および$C_3\times C_3=\{x\in P|3x=0\}$への作用で区別可能. よって, この$3$つの元は非共役. ゆえに求める群はこの$3$つ.
$(-1,1)$$D_3\times C_9$, $(1,-1)$$C_3\times D_9$に対応する.

$P=C_{27}$のとき.

$\Aut(P)\iso C_{18}$. よって, $\phi(\overline{1})$としてありうるのは$\overline{9}$のみ. これは$D_{27}$に対応.

$P=\semiprod{C_3}{\phi}{C_9}$のとき

ここで, $\phi(\overline{1})=(x\mapsto 4x)$. $C_3$側の生成元を$\tau$, $C_9$側の生成元を$\sigma$と置く.
$\#\Aut(P)=(p-1)p^3$より, $\Aut(P)$の位数$2$の元はすべて共役.ゆえに求める群は$1$つ.
$\Aut(P)$の位数$2$の元として, 次がある:
$\sigma\mapsto \sigma^{-1}, \tau\mapsto \tau$
この群は$\semiprod{C_6}{\phi}{C_9}\iso \mathrm{Aff}({\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}})$と同型.

$P=\semiprod{C_3}{\phi}{(C_3\times C_3)}\iso \gen{x,y,z|x^p=y^p=z^p=1,z=[x,y]\in Z(P)}$のとき

ここで$\phi(\overline{1})(\overline{a},\overline{b})=(\overline{a},\overline{a+b})$.
位数p^3の群の自己同型 から,
$\#\Aut(P)=(p^3-p)(p^3-p^2)=432$であり, $\Aut(P)$から$\Aut(P/Z(P))\iso \GL_2(\field 3)$への自然な全射がある. この全射の核の位数は$432/48=9$で,奇数である. よって, $\Aut(P)$の位数$2$の元は, $\GL_2(\field 3)$へ送った先でも位数$2$の必要がある.
また, 上の全射の核の位数が$9$であることから, $\Aut(P)$のシロー$2$群と, $\Aut(P/Z(P))$のシロー$2$群は同型. よって, $\GL_2(\field 3)$の位数$2$の元を共役を除いて列挙し, それを$\Aut(P)$に持ち上げればよい.
$\GL_2(\field 3)$の位数$2$の元は, 共役を除いて$\diag(1,-1)$および$\diag(-1,-1)$$2$つ.
これを持ち上げると,

  • $x\mapsto x^{-1}, y\mapsto y, z\mapsto z^{-1}$
  • $x\mapsto x^{-1},y\mapsto y^{-1},z\mapsto z$

$2$つとなる. これは$P$の中心への作用が異なるので, 非共役.

まとめ

以上より, $5+(3+3+1+1+2)=15$個ある.




[1]:
この表示より$P\char C_1\times C_3$がわかる. 下も同様.

[2]:
一般に, 有限群$G$があり, $G\rnormal N$で, $\#N=a$であり, $g,g'$の位数がともに$p$で, $(p,a)=1$とする. このとき, $\overline{g}\sim\overline{g'}$なら,$g\sim g'$が成立する. これを示す. $g$を含む$G$のシロー$p$群を$P$, $g'$を含むシロー$p$群を$P'$とする. 共役をかまして, $P=P'$としてよい. このとき, $\overline{g}\sim\overline{g'}$


投稿日:18
更新日:111
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