位数100までの群を, 同型を除き全て求めます. この記事では位数$1,p,p^2,pq$の群,及び後のため自己同型群を求めます.使う定理は
準備記事
に乗ってるので、分からない場所があれば参照してください.
以下$p,qはp< q$を満たす素数とする. $C_n$で位数$n$の巡回群を表す. 素数$r$に対し, $n_r(G)$は$G$のシローr群の個数を表す.
自明に$C_1$のみ.
$C_p$のみ.
自己同型群を求める. $\Aut(C_p)=\{(g\mapsto ag)|a\in \Z, a\neq 0\pmod{p} \}\iso {(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})}^{\times}\iso C_{p-1}$.
最初の$=$は生成元で準同型が決まることから,最後の$\iso$は原子根の存在より従う.
$G$を位数$p^2$の群とする. このとき, $Z(G)>1$である. よって,$G/Z(G)$は巡回群となり, 準備記事定理10 より$G$はAbel群. ゆえに有限Abel群の基本定理より位数$p^2$の群はちょうど2つある.
上と同様に$\Aut(C_{p^2})=\{(\mul x)|x\in {C_{p^2}}^{\times}\}\iso {C_{p^2}}^{\times}\iso C_{p^2-p}$.
また,$\Aut(C_p\times C_p)={\rm GL}_2({\mathbb{F}_p})$である.
$G$を位数$pq$の群とする. この時$n_q(G)=1$であり,$G$のシロー$q$群は特性部分群となる.
シローの定理より,$n_q(G)\equiv 1\pmod{p}$かつ$n_q(G)|n$. よって,$n_q(G)=1$.
$G$を位数$pq$の群とする. $G$のシロー$p$群(の1つ)を$P$, シロー$q$群を$Q$と置く. このとき, $PQ=G, P\cap Q=1$となる. よって$P(\simeq C_p)$から$\Aut(Q)(\simeq C_{q-1})$への準同型$f$を(
準備記事定理9
の意味で)同型を除き求めればよい.
$\mathrm{Im}(f)=\{\mathrm{id}\}$なら$f$は$0$射.
$\mathrm{Im}(f)\neq \{\mathrm{id}\}$なら,$q\equiv 1\pmod{p}$となる.このとき,$C_p$の同型でひねり,$f(\bar{1})=(x\mapsto ax)\in \Aut(C_p)$とできる. (ただし, $s$は$s\not\equiv 1,s^p\equiv 1 \pmod{q}$を満たす整数. )
ゆえに,位数$pq$の群は$C_p\times C_q$,および$\semiprod {C_p}{\phi}{C_q}$($q\equiv 1\pmod{p}$のとき)に限られる. これらは非同型.
$G$の自己同型群を求める.
$G=G_1\times G_2,G\char G_i(i=1,2)$なら,$\Aut(G)$と$\Aut(G_1)\times \Aut(G_2)$の間に$\alpha\mapsto (\alpha|_{G_1},\alpha|_{G_2})$という同型写像が存在する.
$(\beta,\gamma)\mapsto ((g_1,g_2)\mapsto(\beta(g_1),\gamma(g_2)))$が上の写像の逆写像になる. この2つの写像が準同型であることは明らか.
上の定理より,$\Aut(C_p\times C_q)\iso C_{p-1}\times C_{q-1}$.
$G=\semiprod {C_p}{\phi}{C_q}$($\phi =(x\mapsto sx)$)とする. このとき,$G\iso\gen{b,a|b^p=1,a^q=1,b^{-1}ab=a^s}$と書ける. ($s$の条件は先に上げた通り. )この表示を用いて$\Aut(G)$を求める.
$f\in \Aut(G)$なら, $f(Q)=Q$である. (命題1より, $G\char Q$であるため. )
よって, $f(a)=a^i,f(b)=b^ka^j(0< i< q, 0\leq j< q, 0< k< p)$と書ける. (この条件を☆とする. )
準備記事命題13
より, ☆を満たす準同型$f$があることと,$1=f(a)^q=f(b)^p,f(b)^{-1}f(a)f(b)=f(a)^s$は同値である.
$f(a)^q=a^{iq}=1$, $f(b)^p={(b^ka^j)}^p=b^{pk}a^u=1$, (ただし,$u=\sum_{t=0}^{p-1}(j\cdot s^{tk})$. このとき, $u=j\cdot\frac{s^{kp}-1}{s-1}\equiv 0\pmod{q}$となる. 最後の等式はここから従う. ) $f(b)^{-1}f(a)f(b)=b^{-k}a^ib^k=a^{s^ki}$,$f(a)^s=a^si$である.
よって, ☆を満たす$f$の存在と, $k=1$は同値. $k=1$のとき, ☆を満たす準同型$f$をとると, $\mathrm{Im}(f)=\gen{a^i,ba^j}=G$. よって, $f\in \Aut(G)$となる.
ゆえに, $\Aut(G)$は$\phi(a)=a^i, \phi(b)=a^jb (0< i< q,0\leq j< q)$で定まる準同型$\phi$全体の集合と一致する.
$\sigma\in\Aut(G)$を$\sigma(a)=a^{v},\sigma(b)=b$で定め,$\tau\in\Aut(G)$を$\tau(a)=a,\tau(b)=ba$で定める.
ただし, $v$は$v\not\equiv 1,v^{q-1}\equiv 1 \pmod{q}$を満たす整数とする.
すると,$\Aut(G)=\gen{\sigma,\tau|\sigma^{q-1}=1,\tau^q=1,\sigma^{-1}\tau\sigma =\tau^v} \iso \semiprod {C_{q-1}}{\psi}{C_q} $となる. ($\psi=(x\mapsto vx)$).
($\mathbb{F}_p$のAffine変換全体の群といってもよい. $\phi \in \Aut(G)$が$\phi(a)=a^i, \phi(b)=a^jb$を満たすとき, $\phi$をAffine変換$x\mapsto ix+j$に対応させると同型が得られる. )