グラスマン多様体は教養の線形代数(「教養」というのは、これくらいは知ってろという意味ではなく、教養課程で習う程度のという意味です)程度で色々な計算ができ、代数幾何やトポロジーの諸概念を理解する例として大変便利だと後輩に話したところ、どうもグラスマン多様体に触れられる易しい教科書がないようだと後輩が嘆いていたので、私が書きます。というのがおおよそ本稿の執筆の動機です。
数学というものの性質上、衒学趣味の小難しい書き方になってしまいますが、ぜひ手元に紙とペンを用意し、行列をたくさん書いてグラスマン多様体に親しんでください。
可換体
本稿では
さて、“多様体”と名が付くからにはmanifoldなりvarietyなりの構造が入ってほしいので、入れましょう(実はどちらの構造も入ります)。まず、定義より次の全射があります:
要するに、部分空間に対してその基底を何でもいいから取りなさいということになります。まず、この全射による商位相を
さて、まず
ただし、
上の構成をそのまま
さて、無事にmanifoldの構造が入ったのでvarietyの構造も入れてしまいましょう:
写像
さて、このプリュッカー埋め込みが実際に埋め込みになっていることは後日気が向けば別の記事で説明することにしましょう。周の定理と呼ばれる強い定理を用いればプリュッカー埋め込みによってグラスマン多様体が代数多様体になることは分かりますが、代数的な関係式を直接見つけてくることもできます。
プリュッカー埋め込みによるグラスマン多様体の像の満たす代数関係式を求めよ。
ヒント:具体的な成分表示を使って行列の計算に帰着せよ。
いろいろ計算しながら読まれてきた方はそろそろ疲れてきたでしょうし、私も疲れてきたので今回はこの辺りにして、次回からグラスマン多様体の幾何的な諸性質を見ていきましょう。誤植や数学的な誤り、こんなん教養の線形代数でわかるわけないやろ等のご意見は随時お待ちしております。