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東大数理院試過去問解答例(2014B01)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2014B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2014B01

$K=\mathbb{F}_3(T)$とし、$K$上の多項式$f=X^3-X$と定める。更に$L$$f\circ f-T$の最小分解体とする。また$M$$f-T$の最小分解体を$M$とする。$M$$L$の部分体である。
(1) $[M:K]$を求めなさい。
(2) $[L:K]$を求め、$\mathrm{Gal}(L/K)$の群構造を求めなさい。
(3) $L$に含まれる$K$$9$次拡大の個数を求めなさい。
(4) $L/K$のGaloisでない$9$次部分拡大$M'/K$で、$M'$$K$に含まれない$1$の巾根を$1$つ以上含んでいるようなものの例を挙げなさい。

  1. $f-T$$K$に根を持たない。ここで根の一つを$\alpha$とおくと、$\alpha+1,\alpha+2$であるから、$M=K(\alpha)$である。よって$[M:K]={\color{red}3}$
  2. 初めに$\omega$$X^3-X=1$の解とし、$\beta$$X^3-X=\alpha$の解とする。このとき$\mathbb{F}_3(\beta)$$X^3-X-1$は既約であるから
    $$ [L:K]=[L:\mathbb{F}_3(\beta)][\mathbb{F}_3(\beta):\mathbb{F}_3(\alpha)][\mathbb{F}_3(\alpha):\mathbb{F}_3(T)]={\color{red}27} $$
    である。次に前半の議論及び$L$の定義から$L/K$$27$次ガロア拡大であり、そのガロア群$G=\mathrm{Gal}(L/K)$の元は
    $$ \sigma_{i,j,k}(\omega)=\omega+i $$
    $$ \sigma_{i,j,k}(\beta)=\beta+j+k\omega $$
    で定義される$\sigma_{ijk}$全体の集合として表される。$G$の部分群$H$及び$N$
    $$ H:=\{\sigma_{0,0,1},\sigma_{0,0,2},\mathrm{id}_L\} $$
    $$ N:=\{\sigma_{i,j,0}|i,j\in\mathbb{F}_3\} $$
    とおく。このとき
    $$ \sigma_{i,j,k}^{-1}\sigma_{s,t,0}\sigma_{i,j,k}=\sigma_{s,ks+t,0} $$
    であるから$N\triangleleft G$であり、更に$G=NH$かつ$N\cap H=\{\mathrm{id}_L\}$であるから、$G=N\rtimes H$である。特に
    $$ \sigma_{0,0,1}\sigma_{1,0,0}\sigma_{0,0,1}^{-1}=\sigma_{1,1,0} $$
    $$ \sigma_{0,0,1}\sigma_{0,1,0}\sigma_{0,0,1}^{-1}=\sigma_{0,1,0} $$
    であることから、$G$は群準同型
    $$ \begin{split} \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}&\to \mathrm{GL}_2(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})\\ i&\mapsto\begin{pmatrix} 1&i\\ 0&1 \end{pmatrix} \end{split} $$
    の誘導する半直積
    $$ {\color{red}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^2\rtimes\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}} $$
    に同型である。
  3. $9$次拡大の個数を求めるには$G$の位数$3$の部分群を数えれば良い。しかし$G$の任意の元の位数は$3$であるから、位数$3$の部分群の個数は
    $$ \frac{27-1}{2}={\color{red}13} $$
    である。
  4. 初めに
    $$ \sigma_{1,0,0}\sigma_{0,0,1}\sigma_{1,0,0}^{-1}=\sigma_{0,2,1} $$
    であるから$H$$G$の非正規部分群であり、$H$の元は全て$\omega$を固定する。以上から$H$に対応する体が所望の体である。これに対応する体は
    $$ M'={\color{red}\mathbb{F}_{27}(\beta^3+2\omega^2\beta)} $$
    である。
投稿日:202486
更新日:202487
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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