0

東大数理院試過去問解答例(2014B01)

261
0

ここでは東大数理の修士課程の院試の2014B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2014B01

K=F3(T)とし、K上の多項式f=X3Xと定める。更にLffTの最小分解体とする。またMfTの最小分解体をMとする。MLの部分体である。
(1) [M:K]を求めなさい。
(2) [L:K]を求め、Gal(L/K)の群構造を求めなさい。
(3) Lに含まれるK9次拡大の個数を求めなさい。
(4) L/KのGaloisでない9次部分拡大M/Kで、MKに含まれない1の巾根を1つ以上含んでいるようなものの例を挙げなさい。

  1. fTKに根を持たない。ここで根の一つをαとおくと、α+1,α+2であるから、M=K(α)である。よって[M:K]=3
  2. 初めにωX3X=1の解とし、βX3X=αの解とする。このときF3(β)X3X1は既約であるから
    [L:K]=[L:F3(β)][F3(β):F3(α)][F3(α):F3(T)]=27
    である。次に前半の議論及びLの定義からL/K27次ガロア拡大であり、そのガロア群G=Gal(L/K)の元は
    σi,j,k(ω)=ω+i
    σi,j,k(β)=β+j+kω
    で定義されるσijk全体の集合として表される。Gの部分群H及びN
    H:={σ0,0,1,σ0,0,2,idL}
    N:={σi,j,0|i,jF3}
    とおく。このとき
    σi,j,k1σs,t,0σi,j,k=σs,ks+t,0
    であるからNGであり、更にG=NHかつNH={idL}であるから、G=NHである。特に
    σ0,0,1σ1,0,0σ0,0,11=σ1,1,0
    σ0,0,1σ0,1,0σ0,0,11=σ0,1,0
    であることから、Gは群準同型
    Z/3ZGL2(Z/3Z)i(1i01)
    の誘導する半直積
    (Z/3Z)2Z/3Z
    に同型である。
  3. 9次拡大の個数を求めるにはGの位数3の部分群を数えれば良い。しかしGの任意の元の位数は3であるから、位数3の部分群の個数は
    2712=13
    である。
  4. 初めに
    σ1,0,0σ0,0,1σ1,0,01=σ0,2,1
    であるからHGの非正規部分群であり、Hの元は全てωを固定する。以上からHに対応する体が所望の体である。これに対応する体は
    M=F27(β3+2ω2β)
    である。
投稿日:202486
更新日:202487
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中