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東大数理院試過去問解答例(2026B03)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2026B03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。  

2026B03

$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p)$の上三角行列全体の為す部分群
$$ B=\left\{ \begin{pmatrix} a&c\\ 0&d \end{pmatrix} \right\} $$
をとる。

  1. $B$に於ける共役類の個数を求めなさい。
  2. 群準同型
    $$ \begin{array}{cccc} \psi:&\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p[X]/(X^2))&\to&\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p)\\ &aX+b&\mapsto &b \end{array} $$
    に関して、$G=\psi^{-1}(B)$の部分アーベル群の位数としてあり得る最大値を計算しなさい。
  1. まず$B$の元は
    $$ \begin{split} \begin{pmatrix} a&b\\ 0&d \end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix} x&y\\ 0&w \end{pmatrix}\begin{pmatrix} a&b\\ 0&d \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \frac{1}{a}&-\frac{b}{ad}\\ 0&\frac{1}{d} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} ax&bx+dy\\ 0&dw \end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix} x&\frac{bx+dy-bw}{a}\\ 0&w \end{pmatrix} \end{split} $$
    を満たしている。これを踏まえると全ての共役類について$x,w$の値は共通していて、共役類は相異なる$x,z$に対して
    $$ C_{x,w}=\left\{\begin{pmatrix} x&\ast\\ 0&w \end{pmatrix}\right\} $$
    で定義されるものと
    $$ C_{x}=\left\{\begin{pmatrix} x&0\\ 0&x \end{pmatrix}\right\} $$
    $$ C_{x}=\left\{\begin{pmatrix} x&y\\ 0&x \end{pmatrix}\middle|y\in\mathbb{F}_p^\times\right\} $$
    で定義されるもので尽くされる。よって共役類の個数は$(p-1)(p-2)+2(p-1)={\color{red}p(p-1)}$個である。
  2. 初めに$\varphi(H)$が対角化不可能な元を持つとする。このときこの元の適切な共役をとり、適切な回数掛けたものと取り替えることで
    $$ I:=\begin{pmatrix} 1&1\\ 0&1 \end{pmatrix}\in\varphi(H) $$
    であるとして良い。ここで$\varphi(H)$は対角成分が全て等しい行列の為す群の部分群であり、従って$H$の元は全て
    $$ B=\begin{pmatrix} \ell+ax&m+bx\\ cx&\ell+dx \end{pmatrix} $$
    の形をした元である。ここで$\varphi(A)=I$であるような$H$の元
    $$ A=\begin{pmatrix} 1+px&1+qx\\ rx&1+sx \end{pmatrix} $$
    を取ったとき、
    $$ AB=\begin{pmatrix} \ell+(p\ell+a+c)x&(m+\ell)+(pm+b+d+q\ell)\\ (r\ell+c)x&\ell+(rm+s\ell+d)x \end{pmatrix} $$
    $$ BA=\begin{pmatrix} \ell+(a+p\ell+rm)x&(m+t\ell)+(a+q\ell+ms+b)x\\ (r\ell+c)x&\ell+(c+s\ell+d) \end{pmatrix} $$
    であり、よって$A$と可換であるような行列は$m,\ell,a,b$が定まれば一意に定まる。$a,b,m,\ell$の取り方は$p^3(p-1)$であるから、このとき$|H|\leq p^3(p-1)$である。
     次に$\varphi(H)$が相異なる固有値を持つ元を含むとする。このとき共役を取り数回掛けることで、ある$t\neq0,1$に対して
    $$ I_t:=\begin{pmatrix} 1&0\\ 0&t \end{pmatrix}\in\varphi(H) $$
    であるとして良い。ここで$\varphi(H)$は対角行列の為す群の部分群であり、従って$H$の元は全て
    $$ B'=\begin{pmatrix} a+Ax&Bx\\ Cx&d+Dx \end{pmatrix} $$
    の形をした元である。ここで$\varphi(A')=I_t$であるような$H$の元
    $$ A'=\begin{pmatrix} 1+px&qx\\ rx&t+sx \end{pmatrix} $$
    を取ったとき、
    $$ A'B'=\begin{pmatrix} a+(A+pa)x&(B+qd)x\\ (ar+Ct)x&td+(ds+Dt)x \end{pmatrix} $$
    $$ B'A'=\begin{pmatrix} a+(A+pa)&(qa+Bt)x\\ (C+dr)x&dt+(tD+ds)x \end{pmatrix} $$
    であり、よって$A'$と可換であるような行列は$a,d,A,D$が定まれば一意に定まる。$a,d,A,D$の取り方は$p^2(p-1)^2$であるから、このとき$|H|\leq p^2(p-1)^2$である。
     次に$\varphi$がスカラー行列の為す群に含まれているとする。このとき
    $$ |H|=|H\cap \mathrm{Ker}(\varphi)||\mathrm{Im}(\varphi)|\leq p^4(p-1) $$
    である。
     以上の議論をまとめることで$|H|\leq p^4(p-1)$が分かる。そして実際
    $$ H:=\left\{\begin{pmatrix} s+ax&bx\\ cx&s+dx \end{pmatrix}\middle| s\in\mathbb{F}_p^\times\right\} $$
    のとき$|H|={\color{red}p^4(p-1)}$が満たされている。
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更新日:98
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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