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準同形定理は自明?

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代数学において準同形定理は呼吸するように用いられる基本的な命題ですが、線形代数または群論の授業で初めて「商」の考え方に触れたばかりの方にとっては、とっつきにくいかもしれません。しかし、「商」の考え方がよく分かることと、準同形定理を自明と思えることは、ほぼ同値と言えるほど、準同形定理は商の考えを理解するのにうってつけの教材でもあります。この記事では、準同形定理の意味から始めて代数系の商の考え方を自然に導入し、それを感覚的にすっきり理解することを目指します。

準同形定理のこころ

準同形定理を一言で言えば、準同形は(自然に)同型に作り替えることができるというものです。代数ではこのことを、同型を「引き起こす」などともいいます。
以下簡単のため線形代数を例に話をしますが、同じことは環上の加群や群、環、または単に集合などでも同様にできます。
$f:V\to W$を線形写像(線形空間の準同形)とします。これは一般には全射でも単射でもありません。以下、これを同型に作り替えます。
準同形!FORMULA[1][1602727092][0] 準同形$f:V\to W$

全射にしよう

$f:V\to W$を全射にするのは簡単です。写像の行き先を$\Im f$に変えて$f:V\to \Im f$とすれば良いからです。
全射になった 全射になった

単射にしよう

「単射でない原因」は、$W$のある点が、$V$の複数の点の像になっていることです。そこで、「$f$$W$の同じ点に移るような$V$の点たちをひとまとめにして一つと思い、そのひとかたまりから一本の矢印がでている」と思えば、単射にできるでしょう。
同型(全単射)になった 同型(全単射)になった

商の考え方

上記の、「$f$$W$の同じ点に移るような$V$の点たちをひとまとめにして一つと思う」という部分を、数学的にはっきり構成するには同値関係の言葉を用います。すなわち、$V$に同値関係を
$x\sim y \Leftrightarrow f(x)=f(y) (\Leftrightarrow x-y\in \ker f)$
で定義し、商集合$V/{\sim}$$V/{\ker f}$と書いて、$\ker f$による$V$の商空間といいます。上の図3で作った単射をきちんと書くと、
$\bar{f} :V/{\ker f} \to \Im f \;;\bar{x}\mapsto f(x)$
となります。これで準同形定理が(直感的に)できました。

準同形定理

準同形$f:V\to W$は、同型$\bar{f} :V/{\ker f} \to \Im f $を引き起こす。

一応、教科書的な確認を取ります。
$\bar{f}$のwell-definedness: $\bar{x}=\bar{y} \Rightarrow x-y\in \ker f \Rightarrow f(x)-f(y)=f(x-y)=0 \Rightarrow \bar{f}(\bar{x})=\bar{f}(\bar{y}).$
$\bar{f}$の準同形性:明らか。
$\bar{f}$の全射性:明らか。
$\bar{f}$の単射性:$\ker {\bar{f}}=\overline{\ker f}=0\subset V/{\ker f}.$

上で商の使い方の典型例である準同形定理を見ました。そこで商を使っている「感覚」というのは、同一視したいものをひとまとめにして(本当に)同一視する、ということです。核について述べるなら、核$\ker f$とは$f$の単射からの離れ具合ということになりますが、その単射からの離れ具合を一点$0$と同一視した(一点$0$へ「潰した」)$V/{\ker f}$を考えることで、本当に単射になっているということです。この感覚がつかめれば自由に商を使っていろんなものを工作することができるようになります。

終わりに

また機会があれば、代数において商を使う感覚を味わえるような例を追記しようと思います。例えばすでに多くの方が書かれているテンソル積の構成は、商を使う少しアドバンスドな練習です。はじめはとっつきにくくても実はとても自然なことをしている、そのことが伝われば幸いです。

投稿日:8日前
更新日:5日前
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投稿者

Ichi
Ichi
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代数的構造に興味があります。教育的な問題意識も持って、記事を書いています。

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