この記事ではオイラーの級数変換公式というものとそれによるゼータ関数の解析接続について解説していきます。
オイラーの級数変換とは以下のような変換公式のことを言います。
数列
とおくと
が成り立つ(収束性については後述)。
数列
によって定めます。つまり
が成り立つことに注意しましょう。
左辺が収束するとき
が成り立つ。
が成り立つので
にも同様の変形をしていくことでわかる。
あとは"適当な条件下"で
となることが示せるので主張が得られます。
上の方法では
を示すのに少し面倒な手順が必要ですが、二重級数に対するフビニの定理を使えばかなり近道ができます。
二重数列
が成り立ち、またこれが有限値を取る(つまり
も成り立つ。
ここでこれは二重級数の順序交換といったワードとしてよく聞くトピックではありますが、無限和はルベーグ積分とみなせることから個人的な好みとしてこれをフビニの定理と言うことにしています。二重級数の順序交換やルベーグ積分のフビニの定理の証明については随所にあると思うのでここでは特に解説しません。
いまフビニの定理を用いるとオイラーの変換公式は簡単に示せます。
左辺が絶対収束するとき
が成り立ち、この右辺も絶対収束する。
を
となるので
が成り立つことに注意する。
いま仮定より
と諸々の収束性がわかるのでフビニの定理より
を得る。
オイラーの変換公式はしばしば級数の収束を加速させるのに便利な公式の一つとなっています。
例えば
のように評価できるので
の左辺の収束速度は
また例えば
のように変形することで
と表せるのでこれを上手いこと評価できれば何かハッピーな感じがしませんか?
実際ゼータ関数のオイラー変換を考えることによって級数の収束範囲を広げることができ、それは
が成り立つ。
ちなみにこの右辺の収束範囲からこれは
とわかる。
これをオイラー変換することで以下が得られます(この右辺の絶対収束範囲は
が成り立つ。ただし
とした。
後はこの右辺の級数が
ところでオイラー変換を途中でやめると補題2のように以下が成り立つのでした。
が成り立つ。
実はこの右辺の級数は
はオイラー変換となっているのでこの右辺も
上での議論から
と表せたので
が成り立つ。ただし
とした。
そしてこれは
と評価できるので、
と(広義)一様収束することがわかる。
以上により以下の公式が得られます。
が成り立つ。
上の公式はゼータ関数の解析的な性質、例えば関数等式を導出するなどには向いていませんが、特定の点における値を求めるには何かと役に立ちます。
例えば今回参考にした
INTEGERSの記事
ではWorpitzkyの公式
から負の整数点における特殊値
を導出していたり、
tsujimotterさんの記事
ではゼータ関数を数値計算し、そのグラフを描くのに利用しています。
ここではそういった例の一つとして
を利用します。この右辺は
の右辺は
と変形すると、この右辺は
と評価できるので
が成り立つ。
が成り立つので、これを微分すると
つまり
と表せる。
ここでウォリスの公式
に注意すると
を得る。
が成り立つ。
において
また
に注意すると
を得る。