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トリボナッチ数の一般項の四捨五入による表現の導出

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はじめに

前回 フィボナッチ数の一般項の四捨五入による表現の導出 の記事でやったことをトリボナッチ数でもやってみようと思います。
途中まではほとんど同じですが、最後の評価の部分は結構大変です。その部分に苦労したので途中すっ飛ばして最後だけでも見ていただければ幸いです。

トリボナッチ数の一般項の四捨五入による表現

この記事ではトリボナッチ数をTnで表します。
まず、過去記事で紹介した四捨五入による表現を紹介します。
なお、この記事では四捨五入する関数として x という記法を使います。すなわち
    x=x+12
ということです。

トリボナッチ数の一般項の四捨五入を使った表現

    Tn=TnU
ただし、T,Uは次の定数です。

    T=13(1+193333+19+3333)=1.839286755214161

    U=3T22T1=5.4703537932903902

以下の導出過程はこの記事↓
テトラナッチ数列の一般項を求める
と同じですので、詳細はそちらを参照してください。

以下では概略のみ記載します。

母関数を閉じた式にする

T(x)=T0x0+T1x1+T2x2+T3x3+T4x4+T5x5+T6x6+T7x7+T8x8+=0+0x+1x2+1x3+2x4+4x5+7x6+13x7+24x8+=x2+x3+2x4+4x5+7x6+13x7+24x8+

    T(x)=x2+x3+2x4+4x5+7x6+13x7+xT(x)=x3+x4+2x5+4x6+7x7+x2T(x)=x4+x5+2x6+4x7+x3T(x)=x45+x6+2x7+

    (1xx2x3)T(x)=x2

    T(x)=x21xx2x3

部分分数分解して無限級数化する

  xの方程式 1xx2x3=0の3つの解を α,β,γ として、
    T(x)=x21xx2x3=x2(xα)(xβ)(xγ)=x2xα1(αβ)(αγ)+x2xβ1(βα)(βγ)+x2xγ1(γα)(γβ)=x21xα1α(αβ)(αγ)+x21xβ1β(βα)(βγ)+x21xγ1γ(γα)(γβ)=n=0xn+2(1αn+1(αβ)(αγ)+1βn+1(βα)(βγ)+1γn+1(γα)(γβ))

ここで T(x)=n=0Tnxn だったことを思い出して上記の式と係数比較すると、

    Tn=1αn1(αβ)(αγ)+1βn1(βα)(βγ)+1γn1(γα)(γβ)

ここまでxの方程式 1xx2x3=0の3つの解を α,β,γ として計算してきましたが、x=1tと置換した tの方程式 t3t2t1=0の解を t=T,P,P¯ とすると、α=1T,β=1P,γ=1P¯ と書き換えることができます(Tを唯一の実数解とします)。
具体的には
    T=13(1+193333+19+3333)P=13(1+ω193333+ω219+3333)P¯=13(1+ω2193333+ω19+3333)

ここで、ωは1の原始3乗根
    ω=1+3i2
です。
すると、
    Tn=Tn1(1T1P)(1T1P¯)+Pn1(1P1T)(1P1P¯)+P¯n1(1P¯1T)(1P¯1P)=Tn(TP)(TP¯)+Pn(PT)(PP¯)+P¯n(P¯T)(P¯P)TPP¯=1

誤差項を評価する

得られた式を観察すると、第1項~第3項はそれぞれ公比 T,P,P¯ の等比数列となっていることがわかります。

    Tn=Tn(TP)(TP¯)第1項+Pn(PT)(PP¯)第2項+P¯n(P¯T)(P¯P)第3項

T,P,P¯を数値計算すると

    T1.8393P0.41964+0.60629iP¯0.419640.60629i

となり、|P|=|P¯|<1 ですから、nが大きいときは第2項と第3項はほとんど計算結果に影響しないことがわかります。
もう少し詳しく見てみましょう。第1項について、

    第1項=Tn(TP)(TP¯)=TnT2(P+P¯)T+PP¯=Tn2T2T+1TP+P¯+T=1,PP¯T=1=Tn3T22T1T2T1T1=0

と、 T だけで表現することができます。次に第2項と第3項の和の絶対値が 12 未満であることを示します。準備として PP¯ を計算します。

        (PP¯)2=(P+P¯)24PP¯=(1T)24TP+P¯+T=1,PP¯T=1=T22T+14(T2T1)T2T1T1=0=3T2+2T+5

であるから、符号と偏角に注意して

    (PP¯)=i3T22T5

となります。次に |P|,|P¯| を計算します。
    |P|=|P¯|=PP¯=1T

これらを使って第2項+第3項を変形します。

    第2項+第3項=Pn(PT)(PP¯)+P¯n(P¯T)(P¯P)=Pn(TP¯)+P¯n(TP)(TP)(TP¯)(PP¯)=Pn1P¯n1TT(PnP¯n)(3T22T1)i3T22T5=(T2T1)(Pn1P¯n1)T(PnP¯n)(3T22T1)i3T22T5
複素数の絶対値で評価すると
    |第2項+第3項|=|(T2T1)(Pn1P¯n1)T(PnP¯n)(3T22T1)i3T22T5|

n=0, n=1, n2 に場合分けして評価します。
(i) n=0 のとき
    |第2項+第3項|=|T(T2T1)(PP¯)T(11)(3T22T1)i3T22T5|=T3T2T3T22T1=13T22T1T3=T2+T+10.1828<12

(i) n=1 のとき
    |第2項+第3項|=|(T2T1)(11)T(PP¯)(3T22T1)i3T22T5|=T3T22T10.3362<12

(iii) n2 のとき

    |第2項+第3項|=|(T2T1)(Pn1P¯n1)T(PnP¯n)(3T22T1)i3T22T5|<|(T2T1)(|Pn1|+|P¯n1|)+T(|Pn|+|P¯n|)(3T22T1)i3T22T5|<|(T2T1)(|P|+|P¯|)+T(|P|2+|P¯|2)(3T22T1)3T22T5|=(T2T1)2T+2(3T22T1)3T22T50.4223<12

(i)~(iii)より n0 について

    |第2項+第3項|<12

となります。ここで
    Tn3T22T1=Tn(第2項+第3項)

なのでこの式の両辺を四捨五入すると
    Tn3T22T1=Tn(第2項+第3項)=Tn|第2項+第3項|<12

    Tn=Tn3T22T1
導出できました!

トリボナッチ数の一般項の四捨五入による表現

    Tn=Tn3T22T1

「予想」との関係

この式は
フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想
の、k=3 の場合の式と一致しています!

補足

    Tn=Tn(TP)(TP¯)第1項+Pn(PT)(PP¯)第2項+P¯n(P¯T)(P¯P)第3項
この式をよく見ると、nが大きいときは第2項と第3項の和がほとんどゼロになることから、第1項がほとんど整数になることがわかります。フィボナッチ数でも同じ現象が起きました。私の予想は k4 のK-ナッチ数列のときも同じ現象がおきるのではないかということでもあります。今回使った方法は k4のときに適用するにはちょっと大変すぎる気がします。
k4 のときに誤差項をうまく評価する方法があればよいのですが……
 何かご意見、情報等ありましたらコメント等で教えてください!

投稿日:20201114
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  1. はじめに
  2. トリボナッチ数の一般項の四捨五入による表現
  3. 母関数を閉じた式にする
  4. 部分分数分解して無限級数化する
  5. 誤差項を評価する
  6. 「予想」との関係
  7. 補足