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テトラナッチ数列の一般項を求める

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テトラナッチ数列とは

テトラナッチ数列の一般項を求めてみましょう。
テトラナッチ数列とは、フィボナッチ数列に類似した数列で、フィボナッチ数列の漸化式が先行2項の和であるのに対し、先行4項の和で定義されるものです。この記事では以下のとおり定義します。

テトラナッチ数列{Tn}の漸化式

{T0=T1=T2=0,T3=1,Tn+4=Tn+Tn+1+Tn+2+Tn+3(n0).

初項をT0として初めの方を書き下すとこんなかんじになります。

テトラナッチ数列

{Tn}={0,0,0,1,1,2,4,8,15,29,56,108,208,401,773,1490,2872,}(n0)

母関数を閉じた式で表す

テトラナッチ数列の一般項を求めるために、まずその母関数を考えます。
母関数とは、数列に対応づけられた関数で、次のようなものです。

テトラナッチ数列の母関数

T(x)=T0x0+T1x1+T2x2+T3x3+T4x4+T5x5+T6x6+T7x7+T8x8+=0+0x+0x2+1x3+1x4+2x5+4x6+8x7+15x8+=x3+x4+2x5+4x6+8x7+15x8+

この式を次のように操作すると閉じた式が得られます。
    T(x)=x3+x4+2x5+4x6+8x7+15x8+xT(x)=x4+x5+2x6+4x7+8x8+x2T(x)=x5+x6+2x7+4x8+x3T(x)=x6+x7+2x8x4T(x)=x7+x8

    (1xx2x3x4)T(x)=x3
    T(x)=x31xx2x3x4

母関数の式を部分分数分解する

母関数の式は次のように部分分数分解できます。
参考:「 1/((x-a)(x-b)(x-c)(x-d))を部分分数分解する

  xの方程式 1xx2x3x4=0の4つの解を α,β,γ,δ として、
    T(x)=x31xx2x3x4=x3(xα)(xβ)(xγ)(xδ)=x3xα1(αβ)(αγ)(αδ)+x3xβ1(βα)(βγ)(βδ)+x3xγ1(γα)(γβ)(γδ)+x3xδ1(δα)(δβ)(δγ)=x31xα1α(αβ)(αγ)(αδ)+x31xβ1β(βα)(βγ)(βδ)+x31xγ1γ(γα)(γβ)(γδ)+x31xδ1δ(δα)(δβ)(δγ)

さらに、11x=1+x+x2+x3+ と無限級数化する方法を使えば

    T(x)=n=0xn+3(1αn+1(αβ)(αγ)(αδ)+1βn+1(βα)(βγ)(βδ)+1γn+1(γα)(γβ)(γδ)+1δn+1(δα)(δβ)(δγ))

テトラナッチ数列の一般項を求める

ここで T(x)=n=0Tnxn だったことを思い出して上記の式と係数比較すると、テトラナッチ数列の一般項を表す式が得られます。

テトラナッチ数列の一般項

xの方程式 1xx2x3x4=0の4つの解を α,β,γ,δ として、
Tn=(1αn2(αβ)(αγ)(αδ)+1βn2(βα)(βγ)(βδ)+1γn2(γα)(γβ)(γδ)+1δn2(δα)(δβ)(δγ))(n3)

ところで、ここまでxの方程式 1xx2x3x4=0の4つの解を α,β,γ,δ として計算してきましたが、x=1tと置換すると

    11t1t21t31t4=0

両辺に t4 をかけると

    t4t3t2t1=0

となることから、tの方程式 t4t3t2t1=0の解は 1α,1β,1γ,1δ と、逆数になります。
これを使って先ほどの式を書き換えると

テトラナッチ数列の一般項の書き換え

xの方程式 x4x3x2x1=0の4つの解を α,β,γ,δ として、
Tn=(αn2(1α1β)(1α1γ)(1α1δ)+βn2(1β1α)(1β1γ)(1β1δ)+γn2(1γ1α)(1γ1β)(1γ1δ)+δn2(1δ1α)(1δ1β)(1δ1γ))(n3)

テトラナッチ数列の一般項ができました!
同じ方法で、任意のk-ナッチ数列の一般項を求めることができるはずです。

(2020/11/12 追記)
もう少しシンプルにできることに気がついたので追記します。

解と係数の関係よりαβγδ=1 となりますから、先程の式の分母について、例えば第1項の分母は

(1α1β)(1α1γ)(1α1δ)=(βα)(γα)(δα)α3βγδ=(αβ)(αγ)(αδ)α2

と変形できますので、先程の式をさらに書き換えると

テトラナッチ数列の一般項の書き換え(その2)

xの方程式 x4x3x2x1=0の4つの解を α,β,γ,δ として、
Tn=(αn(αβ)(αγ)(αδ)+βn(βα)(βγ)(βδ)+γn(γα)(γβ)(γδ)+δn(δα)(δβ)(δγ))(n3)

いい感じになりました。

kナッチ数列の一般項についての予想との関係

最後の式を観察すると、
フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想

が、テトラナッチ数列(4-ナッチ数列)の場合、少なくともnが大きいときは成り立っていることがわかりました。
xの方程式 x4x3x2x1=0の4つの解(近似解)は次のようになります。
  α1.92756
  β0.77480
  γ0.07637+0.81470i
  δ0.076370.81470i

|β|<1,|γ|<1,|δ|<1 ですから、nが大きいときは |βn|,|γn|,|δn|は非常に小さくなり計算結果にほとんど影響しません。

結局
    Tnαn(αβ)(αγ)(αδ)

となりますが、この式は
フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想
で四捨五入する式と同じになっています!

この記事は私が自力で導出したものなので誤りを含んでいる可能性があります。おかしなところがあれば教えてください

投稿日:20201111
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