はじめに
本稿は位数の群を力技で求めることが目的である。の定理などを用いたら簡単に回答することができるが今回は使わないことにする。また部分群の知識もないものとする。
分類
以降、を位数の群としてをその単位元とする。
に関しては以下の通りを考えることができる。
①ある元が存在しての任意の元がの形で書くことができる場合
(A)であることを示す。
もし、であったとするととなりの形で書ける元は高々個になってしまう。これは①の仮定に矛盾である。よってはいずれも異なる。これはであることを意味する。群の演算について考える。のみを考えたら良い。上の主張よりあるとなるが存在してとなる。となる。(A)よりであることがわかる。よってなる任意のについて という演算が入ることがわかる。これが群の条件を満足することは頑張って求めることもできるが省略する。
② ①ではないとき
を単位元でないの元とする。仮定より の形で表されないようなの元が存在する。このような元を一つ取りとする。あるが存在してとなることを示す。もし任意のについてであると仮定するととなる。というのもでであるとするととなりすなわちを得るからである。また任意の元についてであることはが演算について閉じていることから従う。すると、(B)となる。より左辺は無限集合となるが右辺は有限集合なので矛盾である。(の位数は6であった!)
よってあるが存在してとなる。そのような最小のが何か求める。が演算について閉じていることから(B)式が成立する。(B)の式において左辺の元の個数はである。よってであることがわかる。は単位元ではないのでである。
また②の仮定よりである。よってのいずれかである。
(イ)のとき
となる。(左辺の元はすべて異なる。)であるがであることはが群であることから直ぐに従う。よって、となる。となるがはのいずれにもなり得ない。よって矛盾。
(ロ)のとき
の決め方からとなる。であるがこれは矛盾。
よってのいずれかである。ここで上と同様の議論により単位元でないようなの任意の元についてとなるようなが存在する。は以下の3通りに場合分けをすることができる。
(ハ)任意の元についてであるとき
となる。(左辺の元はすべて異なる。)ここで仮定よりすなわちとなる。左からを、右からをかけてとなる。元を取る。となる。(左辺の元はすべて異なる。)の位数を考えると、となるがはのいずれとも異なる。(詳細は省略するがここでおよび同様に示されるの可換性などを用いる。)よって矛盾。
(ニ)任意の元についてであるとき
となる。(左辺の元はすべて異なる。)もし、だとすると、左側から右側からを掛けてを得るので矛盾。よってとなる。(左辺の元はすべて異なる。)元を取る。仮定よりはのいずれにもなり得ない。これは矛盾。
(ハ)ある元が存在してとなるとき
となる。(左辺の元はすべて異なる。)の位数を考えてとなる。演算が群構造を持つことを確認する。の値が何になることを調べる。(後の議論は結合律を満たすかの確認なので省略する。)の値はのどちらかである。(これは逆元を持つことから従う。)であると仮定する。可換性から、を得るがこれは(二)の仮定に矛盾。よって、であることがわかる。これは群構造を持つ。
以上で位数の群の分類が完成した。結果をまとめておく。
位数6の群の分類
を位数6の群とする。このとき、次の①,②のうち一方のみが成立する。
①ある元が存在して、である。演算としてはである。
②ある元が存在してである。ただし、は単位元でが成立する。
①のような群はと同型である。つまり、整数問題でいうところのを考えている状況である。
②のような群はと同型である。つまり、組み合わせ問題でいうところの3つの異なる球を入れ替える操作を考えている状況である。
最後に
群の問題を初等的に解決しようとすると上記のように非常に労力がかかってしまう。(もしかしたらもう少し初等的な解法で楽なものがあるかもしれない。)の定理とか使えたらもう少し楽になるかもしれない。天変地異でも起こって高校数学に群論がでてきたら東大入試で位数8の群を分類せよ、みたいな問題が出てたらいいなあ(の定理はコラム的な位置付けで載っていないとキツそうだけど)