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位数6の群を力技で求める。

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はじめに

本稿は位数6の群を力技で求めることが目的である。Sylowの定理などを用いたら簡単に回答することができるが今回は使わないことにする。また部分群の知識もないものとする。

分類

以降、Gを位数6の群としてeをその単位元とする。
Gに関しては以下の2通りを考えることができる。

①ある元aGが存在してGの任意の元がaiの形で書くことができる場合

0i<j<6aiaj(A)であることを示す。
もし、ai=ajであったとするとaji=eとなりaiの形で書ける元は高々ji<6個になってしまう。これは①の仮定に矛盾である。よってa0=e,a1,a2,a3,a4,a5はいずれも異なる。これはG={a0,a1,a2,a3,a4,a5}であることを意味する。群の演算について考える。a6のみを考えたら良い。上の主張よりある0i<6となるiが存在してa6=aiとなる。a6i=a0となる。(A)よりi=0であることがわかる。よって0i<6なる任意のi,jについてaiaj=ai+j6 という演算が入ることがわかる。これが群の条件を満足することは頑張って求めることもできるが省略する。

② ①ではないとき

aを単位元でないGの元とする。仮定よりai の形で表されないようなGの元が存在する。このような元を一つ取りbとする。あるiZ+が存在してai=eとなることを示す。もし任意のiN={0,1,,}についてaieであると仮定するとijaiajとなる。というのもijai=ajであるとするとa|ij|=eとなり|ij|=0すなわちi=jを得るからである。また任意の元nNについてanGであることはGが演算について閉じていることから従う。すると、{a0,a1,an,}G(B)となる。ijaiajより左辺は無限集合となるが右辺は有限集合なので矛盾である。(Gの位数は6であった!)
よってあるiZ+が存在してai=eとなる。そのような最小のiが何か求める。Gが演算について閉じていることから(B)式が成立する。(B)の式において左辺の元の個数はiである。よって1i6であることがわかる。aは単位元ではないのでi1である。
また②の仮定よりi6である。よってi=2,3,4,5のいずれかである。
(イ)i=4のとき
{e,a,a2,a3,b}Gとなる。(左辺の元はすべて異なる。)abGであるがab{e,a,a2,a3,b}であることはGが群であることから直ぐに従う。よって、G={e,a,a2,a3,b,ab}となる。a2bG={e,a,a2,a3,b,ab}となるがa2be,a,a2,a3,b,abのいずれにもなり得ない。よって矛盾。
(ロ)i=5のとき
bの決め方からG={e,a,a2,a3,a4,b}となる。ab{e,a,a2,a3,a4,b}であるがこれは矛盾。
よってi=2,3のいずれかである。ここで上と同様の議論により単位元でないようなGの任意の元xG{e}についてxjx=eとなるようなjx{2,3}が存在する。Gは以下の3通りに場合分けをすることができる。
(ハ)任意の元xG{e}についてjx=2であるとき
{e,a,b,ab}Gとなる。(左辺の元はすべて異なる。)ここで仮定より(ab)2=eすなわちabab=eとなる。左からaを、右からbをかけてab=baとなる。元cG{e,a,b,ab}を取る。{e,a,b,ab,c,ac}Gとなる。(左辺の元はすべて異なる。)Gの位数を考えると、{e,a,b,ab,c,ac}=GとなるがbcGe,a,b,ab,c,acのいずれとも異なる。(詳細は省略するがここでab=baおよび同様に示されるGの可換性などを用いる。)よって矛盾。
(ニ)任意の元xG{e}についてjx=3であるとき
{e,a,a2,b}Gとなる。(左辺の元はすべて異なる。)もし、a2=b2だとすると、左側からa,右側からbを掛けてa=bを得るので矛盾。よって{e,a,a2,b,b2}Gとなる。(左辺の元はすべて異なる。)元cG{e,a,a2,b,b2}を取る。仮定よりc2Ge,a,a2,b,b2,cのいずれにもなり得ない。これは矛盾。
(ハ)ある元a,bGが存在してja=2,jb=3となるとき
{e,a,b,b2,ab,ab2}Gとなる。(左辺の元はすべて異なる。)Gの位数を考えて{e,a,b,b2,ab,ab2}=Gとなる。演算が群構造を持つことを確認する。baGの値が何になることを調べる。(後の議論は結合律を満たすかの確認なので省略する。)baGの値はab,a2bのどちらかである。(これは逆元を持つことから従う。)ba=abであると仮定する。可換性から、(ab)2=a2b2e,(ab)3=a3b3=aeを得るがこれは(二)の仮定に矛盾。よって、ba=a2bであることがわかる。これは群構造を持つ。

以上で位数6の群の分類が完成した。結果をまとめておく。

位数6の群の分類

Gを位数6の群とする。このとき、次の①,②のうち一方のみが成立する。
①ある元aGが存在して、G={a0,a1,a2,a3,a4,a5}である。演算としてはaiaj=ai+j6である。
②ある元a,bGが存在してG={e,a,b,b2,ab,ab2}である。ただし、eは単位元でa2=e=b3b,ba=ab2が成立する。

①のような群はZ/6Zと同型である。つまり、整数問題でいうところのmod6を考えている状況である。

②のような群はS3と同型である。つまり、組み合わせ問題でいうところの3つの異なる球を入れ替える操作を考えている状況である。

最後に

群の問題を初等的に解決しようとすると上記のように非常に労力がかかってしまう。(もしかしたらもう少し初等的な解法で楽なものがあるかもしれない。)Lagrangeの定理とか使えたらもう少し楽になるかもしれない。天変地異でも起こって高校数学に群論がでてきたら東大入試で位数8の群を分類せよ、みたいな問題が出てたらいいなあ(Sylowの定理はコラム的な位置付けで載っていないとキツそうだけど)

投稿日:20201114
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投稿者

B2 現在代数学(特に環論)を勉強中。 将来は群論やりたいとか思ってます。 気が向いた時に更新していく感じでいきます。

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