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恒差数列

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$$\newcommand{combi}[2]{{}_{#1}C_{#2}} \newcommand{pasfibo}[0]{![算術三角形とフィボナッチ数列](/uploads/image/20201113231516.jpg =360)} \newcommand{sanzyutusankakukei}[0]{![算術三角形](/uploads/image/20201113231328.jpg =400)} $$

算術三角形と2の冪数列

算術三角形の各段の和をとると2の冪が並びます。

$ \begin{array}{ccccccccccccccccc} &&&&&&&1&&&&&&&&=&1\\ &&&&&&1&+&1&&&&&&&=&2\\ &&&&&1&+&2&+&1&&&&&&=&4\\ &&&&1&+&3&+&3&+&1&&&&&=&8\\ &&&1&+&4&+&6&+&4&+&1&&&&=&16\\ &&1&+&5&+&10&+&10&+&5&+&1&&&=&32\\ &1&+&6&+&15&+&20&+&15&+&6&+&1&&=&64\\ 1&+&7&+&21&+&35&+&35&+&21&+&7&+&1&=&128 \end{array} $

これは、算術三角形のつくり方から、下の段は上の段の数をそれぞれ2回ずつ使っていることから説明できます。また、下のようにまとめますと、二項定理の特別な場合であることがわかるでしょう。

任意の$n$で以下が成立する。$$ \sum_{r=1}^{n}{}_nC_r=2^n(=(1+1)^n) $$

初項1、公比2の等比数列を表す適当な語句が見つからなかったので、「2の冪数列」とでも呼ぶことにします。

フィボナッチ数列と2の冪数列

算術三角形からフィボナッチ数列を作る で解説したように、下図のようにすれば算術三角形からフィボナッチ数列を作ることができます。

$\begin{array}{cccccccc} 1&&&&&&&\\ &1&1&&&&&\\ &&1&2&1&&&\\ &&&1&3&3&1&\\ &&&&1&4&6&4\\ &&&&&1&5&10\\ &&&&&&1&6\\ &&&&&&&1\\ \hline 1&1&2&3&5&8&13&21 \end{array}$

同じく算術三角形から作り出せるフィボナッチ数列と2の冪数列はどのような共通点があるのでしょうか。ここで、階差数列に注目しますと、二つの数列の似た部分が見えてきます。

$\begin{align*} F_{n+1}-F_{n}&=F_{n-1}\\ 2^{n+1}-2^{n}&=2^{n} \end{align*}$

そう、どちらの階差数列も自身になるのです。このような数列を「恒に差になる数列」ということで「恒差数列」と呼ぼうと思います。

恒差数列

非負整数$k$が存在し、任意の$n$に対し以下が成立する数列$(a_n)$を恒差数列と呼ぶ。
$$ a_{n+1}-a_n=a_{n-k} $$

特に$k$を明示したいときは$(a_{n,k})$などと書くことにします。

算術三角形から恒差数列を作る

しかし、フィボナッチ数列と2の冪数列のつくり方はまるで違うように思えます。このふたつの例からそれ以降を類推するのは難しいでしょう。

そこで、算術三角形の並べ方をかえ、類推しやすいようにすることを考えます。

まず算術三角形を下図のごとく並べ替えます。
$\begin{array}{cccccc} 1&1&1&1&1&1\\ 1&2&3&4&5&6\\ 1&3&6&10&15&21\\ 1&4&10&20&35&56\\ 1&5&15&35&70&126\\ 1&6&21&56&126&252\\ \end{array}$

そして、一段ごとにずらしていき、縦の列で足すと、2の冪数列が現れます。
$\begin{array}{cccccc} 1&1&1&1&1&1\\ &1&2&3&4&5\\ &&1&3&6&10\\ &&&1&4&10\\ &&&&1&5\\ &&&&&1\\ \hline 1&2&4&8&16&32 \end{array}$
さらに一段ごとにずらせば、フィボナッチ数列が得られます。
$\begin{array}{cccccccc} 1&1&1&1&1&1&1&1\\ &&1&2&3&4&5&6\\ &&&&1&3&6&10\\ &&&&&&1&4\\ \hline 1&1&2&3&5&8&13&21 \end{array}$
以下同様にして恒差数列が得られます。
$\begin{array}{cccccccc} 1&1&1&1&1&1&1&1\\ &&&1&2&3&4&5\\ &&&&&&1&3\\ \hline 1&1&1&2&3&4&6&9 \end{array}$
${}$
$\begin{array}{ccccccccc} 1&1&1&1&1&1&1&1&1\\ &&&&1&2&3&4&5\\ &&&&&&&&1\\ \hline 1&1&1&1&2&3&4&5&7 \end{array}$

最後に、恒差数列を組合せの数で表します。

恒差数列と組合せの数

$a_1=\dots=a_{k+1}=1$なる恒差数列$(a_{n,k})$は二項係数を用いて以下のようにあらわせる。
$$ a_{n,k}=\sum_{i=0}^{\lfloor \frac{n-1}{k+1}\rfloor}{_{n-ki-1}C_{n-(k+1)i-1}}=\sum_{i=0}^{\lfloor \frac{n-1}{k+1}\rfloor}{_{n-ki-1}C_{i}} $$

そのほかの恒差数列

恒差数列は階差数列の性質から定義されました。これは初期条件のない微分方程式のようなものなので、ある$k$にたいして$(a_{n,k})$となるような数列は無数にあります。トリボナッチ数列やテトラナッチ数列も複数種類ありますね。

つまり、上で扱った恒差数列はあくまでも特殊な場合で、ほかにも恒差数列は存在します。

例えばリュカ数列$(L_n)$や黄金数の冪数列$(\phi^n)$$k=1$の恒差数列です。ほかにも探してみれば有名な数列で恒差数列となっているものがあるかもしれません。もし見つけたら教えてくださると幸いです。

また、数列における「階差数列をとる」操作は関数での「微分する」操作にあたります。そう考えると、「階差数列が自身になる」数列は「微分すると自身になる」関数に相当すると言えましょう。すなわち、数列の世界における恒差数列に相当する関数は自然対数の底の指数関数$e^x$になります。

投稿日:20201114

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三星聯
三星聯
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主にフィボナッチ数列とパスカルの三角形の関係について書いていくと思います。

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