4

高校数学の問題-その1

78
0
$$$$

初めに

この記事では私が高校時代に作問した高校数学の問題の中から個人的にそれなりに良い出来だと思ったものを一つ紹介します。(この文章はこの後紹介する問題が良問であることを一切保証しません。)
問題のすぐ後に解答を書くので解きたい人は注意してください。

問題

(1)任意の自然数$n\geq 1$に対し、実数$\theta$についての方程式
$$\sin^n \theta + \cos^n \theta = \tan^n \theta$$
$0<\theta<\frac{\pi}{2}$の範囲でただ一つの解をもつことを示せ。

(2)各自然数$n\geq 1$に対し、(1)の唯一解を$\theta_n$と置く。極限
$$\lim_{n\to \infty}\sin \theta_n,\,\,\lim_{n\to \infty}\cos \theta_n,\,\,\lim_{n\to \infty}\tan \theta_n,\,\,$$
をそれぞれ求めよ。

解答

(1)
$f_n(\theta)= \tan^n \theta-(\sin^n \theta + \cos^n \theta )$と置く。$0<\theta<\frac{\pi}{2}$より、$0<\sin\theta,\cos\theta<1$であるから、
$$f^{\prime}_n(\theta)=n\tan^{n-1}\theta \cdot \frac{1}{\cos^2 \theta} - n\sin^{n-1}\theta \cdot \cos\theta - n\cos^{n-1}\theta\cdot(-\sin\theta) =\frac{n\sin\theta}{\cos^{n+1}\theta}(\sin^{n-2}\theta-\sin^{n-2}\theta \cos^{n+2}\theta + \cos^{2n}\theta)=\frac{n\sin\theta}{\cos^{n+1}\theta}(\sin^{n-2}\theta(1-\cos^{n+2}\theta) + \cos^{2n}\theta)>0$$
したがって、$f_n(\theta)$は単調増加である。次に、二項定理より、
$$\left(\frac{\sqrt{3}+1}{2}\right)^n=\sum_{k=0}^{n} {}_nC_k\left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^k\left(\frac{1}{2}\right)^{n-k}\geq\left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^n+\left(\frac{1}{2}\right)^{n}$$
であり、この不等式より
$$f_n\left(\frac{\pi}{6}\right)=\left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^n-\left(\left(\frac{1}{2}\right)^n+\left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^n\right)<\left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^n\left(1-\left(\frac{3}{2}\right)^n\right)<0$$
$$f_n\left(\frac{\pi}{3}\right)=\left(\sqrt{3}\right)^n-\left(\left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^n+\left(\frac{1}{2}\right)^n\right)>\left(\frac{\sqrt{3}+1}{2}\right)^n-\left(\left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^n+\left(\frac{1}{2}\right)^n\right)\geq 0$$
であるから、$f_n(\theta)$は閉区間$[\frac{\pi}{6},\frac{\pi}{3}]$で連続なので、中間値の定理より、$f(\theta)=0$となる$\theta$$\frac{\pi}{6}<\theta<\frac{\pi}{3}$の範囲に少なくとも一つ存在する。$f_n(\theta)$$(0,\frac{\pi}{2})$で単調増加なので、この開区間内で$f_n(\theta)=0$の解はただ一つであことがわかる。$f_n(\theta)=0$$\sin^n \theta + \cos^n \theta = \tan^n \theta$は同値であるから(1)の方程式は$0<\theta<\frac{\pi}{2}$の範囲にただ一つの解をもつ。

(2)
$n\to\infty$のときについて考えているので、$n>2$のときを考えれば十分であるから、以降$n>2$のときを考える。
(1)より$\frac{\pi}{6}<\theta_n<\frac{\pi}{3}$であるが、
$$f_n\left(\frac{\pi}{4}\right)=\left(1\right)^n-\left(\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^n+\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^n\right)>1-\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\right)\geq 0$$となるから、$\frac{\pi}{6}<\theta_n<\frac{\pi}{4}$である。したがって、
$0<\sin \theta_n <\cos\theta_n$が成立する。したがって、
$$\cos^n\theta_n<\sin^n\theta_n+\cos^n\theta_n<2\cos^n\theta_n$$
であるから、
$$\cos^n\theta_n<\tan^n\theta_n<2\cos^n\theta_n$$
を得る。これより$\cos\theta_n,\tan\theta_n>0$であるから、
$$\cos\theta_n<\tan\theta_n<2^{\frac{1}{n}}\cos\theta_n$$
が成立する。$\cos\theta_n<\tan\theta_n$より、
$\sin\theta_n>\cos^2\theta_n=1-\sin^2\theta_n$
であるから、不等式
$$\sin^2\theta_n+\sin\theta_n-1=\left(\sin\theta_n+\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)\left(\sin\theta_n+\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)>0$$
を得る。$\sin\theta_n+\frac{1+\sqrt{5}}{2}>0$であるから、上の不等式より
$$\left(\sin\theta_n+\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)>0\,\,\,\,\cdots(a)$$
を得る。同様に、$2^{\frac{1}{n}}\cos\theta_n>\tan\theta_n$より、
$\sin\theta_n<2^{\frac{1}{n}}\cos^2\theta_n=2^{\frac{1}{n}}(1-\sin^2\theta_n)$
であるから、不等式
$$\sin^2\theta_n+2^{-\frac{1}{n}}\sin\theta_n-1=\left(\sin\theta_n+\frac{2^{-\frac{1}{n}}+\sqrt{2^{-\frac{2}{n}}+4}}{2}\right)\left(\sin\theta_n+\frac{2^{-\frac{1}{n}}-\sqrt{2^{-\frac{2}{n}}+4}}{2}\right)<0$$
を得る。$\left(\sin\theta_n+\frac{2^{-\frac{1}{n}}+\sqrt{2^{-\frac{2}{n}}+4}}{2}\right)>0$であるから、上の不等式より
$$\left(\sin\theta_n+\frac{2^{-\frac{1}{n}}-\sqrt{2^{-\frac{2}{n}}+4}}{2}\right)<0\,\,\,\,\cdots(b)$$
を得る。$(a),(b)$より、
$$\frac{\sqrt{5}-1}{2}<\sin\theta_n<\frac{\sqrt{2^{-\frac{2}{n}}+4}-2^{-\frac{1}{n}}}{2}$$
が成立し、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{\sqrt{2^{-\frac{2}{n}}+4}-2^{-\frac{1}{n}}}{2}=\frac{\sqrt{2^{-0}+4}-2^{-0}}{2}=\frac{\sqrt{5}-1}{2}$$
となるから、はさみうちの原理より、
$$\lim_{n\to\infty}\sin \theta_n=\frac{\sqrt{5}-1}{2}$$
を得る。$$0<\theta_n<\frac{\pi}{2}$$より、
$$\lim_{n\to\infty}\cos \theta_n=\lim_{n\to\infty}\sqrt{1-\sin^2 \theta_n}=\sqrt{1-\left(\frac{\sqrt{5}-1}{2}\right)^2}=\sqrt{\frac{\sqrt{5}-1}{2}}$$
$$\lim_{n\to\infty}\tan \theta_n =\lim_{n\to\infty}\frac{\sin \theta_n}{\cos \theta_n}=\frac{\frac{\sqrt{5}-1}{2}}{\sqrt{\frac{\sqrt{5}-1}{2}}}=\sqrt{\frac{\sqrt{5}-1}{2}}$$
となる。以上をまとめると、
$$\lim_{n\to\infty}\sin \theta_n=\frac{\sqrt{5}-1}{2},\,\,\,\lim_{n\to\infty}\cos \theta_n =\lim_{n\to\infty}\tan \theta_n =\sqrt{\frac{\sqrt{5}-1}{2}}$$
となる。

投稿日:20201114

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

-
-
7
816

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中