$a^{2}+b^{2}=c^{2}$を満たす自然数の組$(a,b,c)$をピタゴラス数という。
この記事では、中学生の頃に学習した三平方の定理(ピタゴラスの定理)を満たす自然数の組について記述する。
その主張の正しさを確認するために、例を見てみよう。
$3^{2}+4^{2}=5^{2}$より、$(3,4,5)$はピタゴラス数である。
このとき$3\times4\times5=60$となり、$60$の倍数である。
$5^{2}+12^{2}=13^{2}$より、$(5,12,13)$はピタゴラス数である。
このとき$5\times12\times13=60\times13$となり、$60$の倍数である。
$60=3\times4\times5$であることから、以下のステップで$abc$が$60$倍数であることを示す。
$a,b,c$のいずれかは$3$の倍数である。
$a,b,c$のいずれかは$5$の倍数である。
$a,b,c$のいずれかは$4$の倍数である。
整数$x$において、$x^{2}$を$3$で割った余りは$0$または$1$である。
以上より、$x^{2}$を$3$で割った余りは$0$または$1$であることが分かる。
自然数$a,b,c$が$a^{2}+b^{2}=c^{2}$を満たすとき、$a,b,c$のいずれかは$3$の倍数である。
$a,b,c$いずれも$3$の倍数ではないと仮定する。
上の補題の証明から、$a^{2}\equiv1\pmod{3}$かつ$b^{2}\equiv1\pmod{3}$を満たす。
したがって、$a^{2}+b^{2}\equiv2\pmod{3}$となる。
$a^{2}+b^{2}=c^{2}$より、$c^{2}\equiv2\pmod{3}$となる。
上の補題よりこのような自然数$c$は存在しないため、矛盾。
したがって、$a,b,c$いずれかは$3$の倍数であることが分かる。
整数$x$において、$x^{2}$を$5$で割った余りは$0,1,4$のいずれかである。
以上より、$x^{2}$を$5$で割った余りは$0,1,4$のいずれかであることが分かる。
自然数$a,b,c$が$a^{2}+b^{2}=c^{2}$を満たすとき、$a,b,c$のいずれかは$5$の倍数である。
$a,b,c$いずれも$5$の倍数ではないと仮定する。
上の補題の証明から、$a^{2}\equiv1または4\pmod{5}$かつ$b^{2}\equiv1または4\pmod{5}$を満たす。
したがって、$a^{2}+b^{2}\equiv0,2,3\pmod{5}$のいずれかとなる。
$a^{2}+b^{2}=c^{2}$より、$c^{2}\equiv0,2,3\pmod{5}$のいずれかとなる。
ここで、仮定より$c$は$5$の倍数ではないので$c^{2}\equiv2,3\pmod{5}$のいずれかとなるが、
上の補題よりこのような自然数$c$は存在しないため、矛盾。
したがって、$a,b,c$いずれかは$5$の倍数であることが分かる。
整数$x$において、$x^{2}$を$8$で割った余りは$0,1,4$のいずれかである。
以上より、$x^{2}$を$8$で割った余りは$0,1,4$のいずれかであることが分かる。
自然数$a,b,c$が$a^{2}+b^{2}=c^{2}$を満たすとき、$a,b,c$のいずれかは$4$の倍数である。
$a,b,c$いずれも$4$の倍数ではないと仮定する。
上の補題より$a^{2}\equiv0,1,4\pmod8$のいずれかとなるが、
いま$a$は$4$の倍数ではないと仮定しているため、$a^{2}\not\equiv0\pmod8$である。
従って、$a^{2}\equiv1,4\pmod8$のいずれかである。
同様に、$b^{2}\equiv1,4\pmod8$のいずれかであることも分かる。
このとき、$a^{2}+b^{2}\equiv0,2,5\pmod{8}$のいずれかとなる。
$a^{2}+b^{2}=c^{2}$かつ$c$は$4$の倍数ではないことから
$c^{2}\equiv2,5\pmod{8}$のいずれかであることが分かる。
上の補題からこのような自然数$c$は存在しないため、矛盾。
したがって、$a,b,c$いずれかは$4$の倍数であることが分かる。
ピタゴラス数$(a,b,c)$の積$abc$は$60$の倍数となる。
以上の3つの命題より、積$abc$は$3$の倍数かつ$4$の倍数かつ$5$の倍数となることが分かる。
従って、積$abc$は$60$の倍数となる。
この記事を最後まで読んでくれた方に心から感謝を。