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確率の簡単な問題およびその解説

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本記事では、以下の問題の解説を行う。あとがきを含めても短めの記事なので、気軽に読んでいただきたい。

問題

 不正確な体重計を用いて、Aさんの体重を3回測った。1回目の測定値を $a$ kg、2回目の測定値を $b$ kgとしたとき、3回目の測定値が $a$ kg~ $b$ kgの区間に収まる確率を求めよ。ただし、体重計の誤差の分布は正規分布に従うものとする。
【正規分布について】
 正規分布は、ネイピア数(自然対数の底)
$$\begin{eqnarray} e= \lim_{n \to \infty} (1+n)^{\frac{1}{n}}= \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!}=2.71828182845904523536 \dots \end{eqnarray}$$および平均値 $\mu$ 、分散 $\sigma^2$ (平均値と分散の定義は省略する)を用いて定義される関数
$$\begin{eqnarray} f(x)=\frac{e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\end{eqnarray}$$に対し、値が $x$ をとる確率が $f(x)$ であるような確率分布を指す。なお、 $f(x)$ は確率分布を定義する関数(確率密度関数)なので、
$$\begin{eqnarray} \int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=1\end{eqnarray}$$が成り立っている。

 以下の解説を読む前に、まずは自身で考えてみてほしい。


解説

$m,n>0$ とすると、「 $m$ 回目の測定値が $n$ kgとなる確率」は $n$ のみに依存し、 $m$ によらない。
 したがって、3回目の測定値を $c$ kgとし、 $k$ 回目の測定値 $(k=1,2,3)$$v_k$ kgであることをを $(v_1,v_2,v_3)$ のように表記すると、以下の6パターン
$$ (a,b,c),(a,c,b),(b,a,c),(b,c,a),(c,a,b),(c,b,a)$$が起こる確率はすべて等しい。即ち $x\geq y\geq z>0$ として、求める確率は $a,b,c$$x,y,z$ を重複なく当てはめたときに $c=y$ となる確率であり、これは明らかに $\displaystyle{\frac{1}{3}}$ である。

あとがき

長々と正規分布に関する説明を行ったが用いたのは解説1行目の性質のみ、という点で、多くの方が拍子抜けしたのではなかろうか。もしかしたら $f(x)$$x=a$$x=b$ を代入して積分に持ち込んだ猛者もいるかもしれない。しかしながら、原理さえ分かれば本問は中学数学で解けてしまうのだ。
 ところで、解説では省略したが、例えば $x=y$ のときは $c=x$ でも条件を満たす。とはいえ、 $x,y,z$ が任意の正の値をとるとき $x=y$ となる確率は $0$ であるから、このケースを考慮する必要はない。

投稿日:20201116

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匿(Tock)
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主に初等幾何・レムニスケート。時々偏差値・多重根号。 「たとえ作曲家が忘れ去られた日であっても、彼の旋律が街並みを縫って美しく流れていますように。」

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